年金が少なく、生活が苦しいという遠方の親。親を扶養に入れるとメリットが多い気がするのですが、デメリットは何ですか?

配信日: 2025.11.18
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年金が少なく、生活が苦しいという遠方の親。親を扶養に入れるとメリットが多い気がするのですが、デメリットは何ですか?
生活が苦しいという高齢の親を見ると、扶養に入れようかなと考える人はいるでしょう。また、税制面でのメリットがあるので「親を扶養に入れるといいことばかり」と思うかもしれません。では、デメリットはいったい何なのか、本記事で一緒に見ていきましょう。
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

税法上のメリット:扶養控除が受けられる

税法上の扶養とは、所得税や住民税の計算において「扶養親族」として認定されることで、扶養控除を受けられる制度です。
 
親を税法上の扶養に入れるには、以下の条件を満たす必要があります。
 

1. 親の年間所得が58万円以下(別居の場合は48万円以下)
2. 親と「生計を一にしている」こと(同居していなくても仕送りなどで認定される場合があります)

 
この条件を満たせば、納税者(子)は最大58万円の扶養控除を受けられ、所得税や住民税の負担が軽減されます。
 

社会保険上のメリット:保険料がゼロになるが制限も

会社員や公務員が加入する健康保険では、親を「社会保険上の扶養」に入れることで、親自身が国民健康保険料を支払う必要がなくなります。これは非常に大きなメリットで、特に親の年金収入が少なく、年間数十万円の保険料負担がゼロになる場合、負担減は大きいといえます。
 
社会保険上の扶養には、以下の条件があります。
 

1. 親の年収が180万円未満(60歳未満の場合は130万円未満)
2. 親の年収が扶養者(子)の年収の半分未満
3. 親が75歳未満(75歳以上は後期高齢者医療制度が適用されます)

 
また、親と別居している場合は、定期的な仕送りの証明が必要になることもあります。
 

デメリット(1):介護保険料が増える可能性あり

親を扶養に入れて同一世帯にすると、住民税非課税世帯から外れる可能性があります。これにより、親の介護保険料が増加する可能性があります。
 
例えば、親が65歳以上で年金収入が少ない場合、住民税非課税世帯であれば介護保険料は月額約3150円ですが、扶養に入れて同一世帯になると親は非課税世帯から外れるため月額約6300円に倍増する可能性があります。年間にすると約3万7800円から7万6000円への増加となり、家計に影響を与える可能性があります。
 
介護保険料はお住まいの市区町村が定める「基準額」をもとに、所得や世帯の住民税課税状況に応じて、複数の所得段階(通常9段階程度)に区分して保険料額が決定されます。具体的な金額や区分は自治体によって異なるため、自治体の公式サイトで確認することが必要です 。
 

デメリット(2):医療費・介護サービスの自己負担が増える可能性あり

親が住民税非課税世帯である場合、高額療養費制度や介護サービスの自己負担限度額が低く設定されています。しかし、親を扶養に入れて同一世帯になることで、これらの限度額が引き上げられ、医療費や介護費用の負担が増えることがあります。
 
例えば、介護サービスの月額負担上限が2万4600円から4万4400円に増えるケースもあり、親が頻繁に介護サービスを利用している場合は注意が必要です。
 

デメリット(3):高額療養費の上限が上がる可能性あり

例えば、親が70歳未満で住民税非課税世帯であるとき、高額療養費の上限が3万5400円と設定されていますが、親と同居して住民税非課税世帯から外れると上限が5万7600円以上になります。
 

デメリット(4):老人ホームに入居したときの費用が上がる可能性

養護老人ホームなどの福祉施設に入居したときには、食費や居住費負担が重くなる可能性があります。
 
例えば、負担限度額が第2段階にあてはまる親がユニット型準個室に入居した場合には食費が日額390円、居住費が日額550円ですが、親を扶養にした場合には食費が1445円、居住費が1728円とそれぞれ負担額が上がる可能性があります。
 

まとめ

親を扶養に入れることで得られる税制上の控除や社会保険料の軽減は魅力的ですが、介護保険料や医療費の負担増といったデメリットもあります。特に親が高齢で介護サービスを利用している場合は、慎重な判断が必要です。制度の仕組みを理解したうえで、家計全体にとって最適な選択をすることが重要です。
 

出典

国税庁 扶養控除
日本年金機構 健康保険・厚生年金保険事務手続きガイド 家族を被扶養者にするとき
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 サービスにかかる利用料
厚生労働省 高額療養費制度を利用される皆さまへ
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

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