75歳の親に「食料・日用品」を届けています。友人に「扶養すれば税金が安くなる」と聞いたのですが、控除はどのくらい受けられますか?「年収600万円」のケースで試算

配信日: 2025.11.23
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75歳の親に「食料・日用品」を届けています。友人に「扶養すれば税金が安くなる」と聞いたのですが、控除はどのくらい受けられますか?「年収600万円」のケースで試算
「扶養」というと、配偶者や子どもなど、生活をともにする家族を思い浮かべる人が多いかもしれません。
 
しかし、75歳の親と別居していても、生活費や日用品の援助をしていれば「生計を一にしている」と認められ、税法上の扶養控除を受けられる場合があります。
 
本記事では、75歳以上の親を税法上の扶養にするための条件や、年収600万円の場合にどの程度節税できるのかについて解説します。
村吉美佳

FP2級、日商簿記2級、宅建士、賃貸不動産経営管理士

75歳以上の親を税法上の扶養にする条件とは

扶養には、「税法上の扶養」と「社会保険の扶養」があります。75歳以上の親を扶養できるのは、税法上の扶養のみです。75歳以上の親は後期高齢者医療制度に加入しているため、子の扶養には入れません。税法上の扶養にするための主な条件は次の3つです。
 

生計を一にしていること

生活を共にしているか、別居でも生活費や日用品の援助があれば認められます。療養などで別居していても、定期的な送金や支援があれば条件を満たします。
 

親の年間所得が48万円以下であること

年間所得は、収入から必要経費や控除を差し引いた金額です。給与所得のみであれば収入103万円以下(給与所得控除55万円)、年金のみであれば75歳以上は158万円以下(公的年金控除110万円)が目安です。
 

青色・白色申告者の事業専従者でないこと

個人事業主の事業に専ら従事して給与を受け取る場合は、事業専従者となり扶養控除の対象外です。
 

年収600万円ならどのくらい節税できる? 扶養控除の目安

75歳以上の親を扶養に入れると、所得税と住民税の控除を受けられます。控除額は、親が「老人扶養親族」に該当する場合、所得税で48万円、住民税で38万円が目安です。年収600万円の給与所得者の場合、


・所得税:48万円控除→年間約9万6000円の軽減
・住民税:38万円控除→年間約3万8000円の軽減
・合計:約13万円の節税効果

月に換算すると、1万円ほど手元に残るイメージです。
 

どんな金額でも「生計を一にしている」とみなされるの?

日用品の援助や仕送りをしている場合、「月3000円程度でもよいのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。
 
明確な金額基準はありませんが、「安定的に親の生活を支えている」といえる実態があるかどうかが重要です。例えば、次のような援助があれば「生計を一にしている」と認められやすくなります。


・食料品や日用品を定期的に送付している
・毎月、数万円単位の金額を継続的に仕送りしている
・医療費や光熱費などを子が一部負担している

一方、援助がごく少額で一時的な場合は、生活費を支えている実態があるとは判断されにくい傾向があります。税法上の「生計を一にしている」とは、単なる援助ではなく、生活費の一部を継続的に負担しているかどうかがポイントです。
 
また、税務署や自治体に証明書を提出する必要は通常ありませんが、確認を求められた際に備えて次のような記録を残しておくと安心です。


・銀行振込の明細(仕送りの記録)
・日用品や食料品の購入レシート
・医療費や公共料金などの立替え支払い記録

 

医療費が高い場合は要注意

75歳以上の親を扶養に入れると、年間で約13万円の節税効果が期待できます。ただし、扶養に入れることで医療・介護費の自己負担が増える可能性もあります。「高額介護サービス費制度」では、世帯の所得が高いほど負担上限額が上がる仕組みです。
 
親が子の扶養に入り、課税所得が高い世帯として扱われると、月額の上限が4万4400円から、14万100円に引き上がるケースもあります。つまり、税負担の軽減効果よりも医療・介護費の増加が大きくなることもあるため、扶養に入れる前にトータルの支出を比較して判断することが大切です。
 

出典

国税庁 No.1182 高齢者を扶養している人が受けられる配偶者控除や扶養控除
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.2260 所得税の税率
厚生労働省 令和3年8月利用分から高額介護サービス費の負担限度額が見直されます
 
執筆者 : 村吉美佳
FP2級、日商簿記2級、宅建士、賃貸不動産経営管理士

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