空き家放置は“資産”を食いつぶす! 税金6倍時代に損しないための選択肢とは?
いま、こうした相談が全国で急増しています。自分はまだ先の話だと思っていても、これは相続に直面するすべての人にとって避けられない「時限爆弾」です。2023年に改正された「空き家対策特別措置法」により、この問題は「放置する」という選択肢が実質的になくなりました。本記事で詳しく見てみましょう。
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士
目次
「税金6倍」のからくり
なぜ、いきなり税金が6倍になるのでしょうか?
それは、住宅が建つ土地に適用されてきた「住宅用地の特例」という強力な“割引”が外されるからです。
これまでは、よほど危険な「特定空き家」でなければ特例(土地の固定資産税が最大6分の1)が維持されていました。しかし法改正で、その一歩手前の「管理不全空き家」という区分が新設されました。窓が割れている、雑草が生い茂っているなど、管理が不十分だと自治体から「勧告」を受け、特例が解除されます。
割引が外れる=税金が6倍になる仕組みです。
「7軒に1軒が空き家」という現実
「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、全国の空き家は900万戸を超え、空き家率は13.8%です。つまり、日本の住宅の7軒に1軒が空き家という時代です。
さらに2024年4月からは「相続登記の義務化」もスタートしました。「相続したら登記は義務。しかし管理を怠れば税金6倍」…… 国は、空き家放置に明確な「NO」を突きつけ始めています。
問題の本質は「暮らしが止まった」こと
税金の話は、あくまで結果です。家が空き家になるのは、建物が古くなったからではなく、人の暮らしが止まったからです。
多くの空き家は、相続後ではなく「暮らしが止まった瞬間」に始まります。夫婦どちらかが亡くなり、一人では住みにくい家になってしまいます。急な階段、雪かき、買い物の不便さ…… 「もう少し頑張れる」と先送りした結果、管理できないまま“負動産化”してしまうかもしれません。
損をしないための3つの行動
放置が最悪のリスクである以上、対策は「家を動かす」意識を持つことです。
(1)親が元気なうちに暮らしを整える
最大の対策は、「空き家にしない努力」です。お父さん・お母さんが快適に過ごせる家は、結果的に「売れる家」「貸せる家」になります。
・暮らしやすくリフォームし、貸しやすい状態を保つ
・判断能力が衰えても維持・売却できるよう家族信託などで備える
・遺言書で「誰が管理・処分を担当するか」を明確にしておく
(2)「売却」という積極的な選択
相続後は、一定の要件を満たせば3000万円特別控除の特例(国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」参照)もあります。税制優遇を生かして、負債になる前に資産化する判断も重要です。
(3)「使いながら守る」活用の発想
手放すか放置するかだけでなく、二拠点生活や地域移住、外国人の長期滞在など“生かす”選択肢も広がっています。
最初の一歩は「現状を知る」ことから
空き家問題は、税金・登記・不動産・建築が複雑に絡み合うため、一人で抱えるのは困難です。まずは、「実家の現状を客観的に把握する」ことから始めましょう。
・家の名義、築年数、ローンの有無
・親の暮らしや希望
・自分が相続後どうしたいか
これを書き出すだけで、次の一手が見えてきます。そして、「祖父母名義のままになっている土地」などが、そのまま放置されているケースも少なくありません。気づかないうちに相続が何世代にもまたがり、問題が複雑化していることもあります。
おわりに:空き家対策とは「人生を整える」こと
空き家問題は、家の問題ではなく“暮らしの継続性”の問題です。相続が起きてから慌てるのではなく、親が元気なうちに「この家をどう使い、誰にどう託すか」を話し合うようにしましょう。それは「家をどうするか」だけでなく、「家族がどう生きるか」を再設計する時間でもあります。
空き家対策とは、家を片づけることではなく、人生を整えることです。元気なうちに「想い」を共有し、暮らしを整えることこそが、税金リスクと家族のトラブルを防ぐ最良の一歩です。こうした“想い”の共有や“どう生きるか”の話し合いができるのは、ご家族が元気なうちだけです。
出典
国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査
執筆者 : 稲場晃美
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士
