夫婦でレーシック手術を受けました。費用は妻の分も含め「医療費控除」を利用できますか?

配信日: 2025.11.28
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夫婦でレーシック手術を受けました。費用は妻の分も含め「医療費控除」を利用できますか?
レーシック手術は公的医療保険(健康保険など)の適用外であり、自由診療として取り扱われます。そのため、レーシック手術の費用はクリニックによって大きく異なり、両目で50万円程度かかる場合もあります。
 
このように医療費がかさんだというとき、税金を軽減するのに活用したいのが医療費控除(所得控除)です。本記事では、医療費控除のしくみ、対象となる医療費など基本的な知識を解説します。
新美昌也

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

医療費控除

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合、超えた分を所得から控除できるしくみです。医療費は、自分の分だけではなく、家族の分や仕送りをしている親など「生計を一にする」家族の分も合算できます。
 
高額療養費の場合の世帯合算は、加入している公的医療保険の種類が異なると合算できませんが、医療費控除の場合には合算できます。したがって、家族のなかで最も所得税率の高いほうが医療費控除を受けるのが得策です。
 
医療費控除は会社員の方でも、年末調整できず、「医療費控除の明細書」を添付して自ら確定申告を行う必要があります。手続きの詳細は、国税庁のウエブサイト「確定申告特集」でご確認ください。
 

医療費控除額の計算

医療費控除の金額の計算式は、以下のとおりです。
 
医療費控除の金額 = (実際に支払った医療費の総額-保険金などで補てんされる金額)-10万円(所得が200万円未満の方は所得の5%)
 
なお、未払いの医療費については、実際に支払いを行った年に医療費控除の対象となりますので留意しましょう。
 
生命保険契約などから支払われる入院給付金、健康保険などから支給される高額療養費、出産一時金など「保険金などで補てんされる金額」は「実際に支払った医療費の総額」から、差し引いて計算されるので注意してください。
 
また、「保険金などで補てんされる金額」が、医療費を支払った年分の確定申告書を提出するときまでに確定していない場合には、見込み額に基づいて計算しますので注意しましょう。
 
一方で、傷病手当金、出産手当金、育児休業給付金、埋葬費、葬祭費、がん保険の診断給付金などは、医療費の補てんではないので差し引く必要はありません。
 

医療費控除の対象となる医療費

医療費控除の対象となる医療費は幅広く、病気やけがの治療目的であれば、保険のきかない自由診療や先進医療の技術料、通院のための交通費、市販の薬、介護費用の一部なども対象です。
 
例えば、同じ歯列矯正でも、発育段階にある子どもの成長を阻害しないようにするために行う不正咬合(ふせいこうごう)の歯列矯正の費用は医療費控除の対象になりますが、美容目的の歯列矯正の費用は医療費控除の対象になりません。
 
レーシック手術は、目の機能それ自体を医学的な方法で正常な状態に回復させるものなので、この費用は医療費控除の対象です。一方、メガネやコンタクトレンズの購入費用は、視力そのものを回復させる治療の対価には該当しないため、医療費控除の対象とはなりません。
 
通院の交通費につては、電車、バス等の公共交通手段を利用した場合の費用は医療費控除の対象ですが、タクシー代やマイカーで通院する場合のガソリン代や駐車料金は医療費控除の対象外です。
 
ただし、病状からみて急を要する場合や、公共交通手段の利用ができない場合に使うタクシーの費用は医療費控除の対象となります。医療費控除の対象となる医療費として認められる費用は、国税庁のホームページに例示されていますので、参考にしてください。
 

セルフメディケーション税制

医療費の支出額が少ない人は、医療費控除に代えて「セルフメディケーション税制」を活用しましょう。
 
これは、「健康の保持増進および疾病の予防として一定の取り組み」を行っている方が1万2000円を超える対象医薬品(スイッチOTC医薬品など)を購入した場合、超えた分について所得控除を受けることができる制度です。
 
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品を購入すると、発行される領収書(レシート)にはその医薬品が控除の対象である旨が明記されていますので確認してください。ただし、この控除を受ける場合には、通常の医療費控除を受けることができませんので注意してください。
 

まとめ

医療費控除の活用による税金の軽減効果は、10万円を超えた医療費に税率を掛けた金額なので、税額控除に比べ節税額が意外と少ないと感じる人もいるかもしれません。
 
しかし、課税所得(収入-必要経費-所得控除)の減少は、高額療養費、高額介護サービス費、国民健康保険料、介護保険料、教育費の負担軽減などに影響しますので、面倒くさがらずに確定申告をしましょう。
 

出典

国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.1122 医療費控除の対象となる医療費
国税庁 No.1128 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例
 
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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