大学に合格した息子が「週4」でバイトすると言っています。扶養から外れないためには週に何日まで働けますか?

配信日: 2025.11.29
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大学に合格した息子が「週4」でバイトすると言っています。扶養から外れないためには週に何日まで働けますか?
年収額が一定額(壁)を超えると、税金と社会保険料の負担が増える、いわゆる「年収の壁」のうち2025年1月より「税金の壁」が改正され、大学生のアルバイトがしやすくなりました。
 
一方、働き過ぎると親の扶養から外れるので注意が必要です。本記事では、学生がアルバイトをするうえで留意すべき点を解説します。
新美昌也

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

収入と所得の関係

税金関係の「年収の壁」の理解には、所得税の計算方法を把握する必要があります。所得税を算出するには、「収入」から必要経費を差し引き「所得」を求めます。
 
この「所得」から「所得控除額」を差し引いたものが「課税所得」であり、これに所得税率を掛けた金額が所得税額です。会社員やアルバイトの場合は、次の計算式になります。


(1)給与収入-給与所得控除額-所得控除額=課税所得
(2)課税所得×所得税率=所得税額

所得控除には、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、特定親族特別控除、勤労学生控除など15種類あります。
 
なお、住民税(所得割)の課税のしくみも住民税と同じです。ただし、所得控除の金額が異なります。また、調整控除など所得税と異なる税額控除もあります。所得税はその年の所得に対して課税されるのに対し、住民税は前年の所得金額をもとに算出され、毎年6月から納付が開始されるという違いもあります。
 

所得税の壁が103万円から160万円へ

改正前、給与所得控除は55万円、基礎控除は48万円だったので給与収入103万円までは所得税は課せられませんでした。
 
2025年以降は、給与所得控除は65万円(給与収入190万円以下一律)、基礎控除は95万円(給与収入200万3999円以下)に引き上げられましたので、給与収入160万円までは所得税が課されません。
 
なお、住民税については100万円の壁から110万円の壁に見直されました。2026年分から対象になります。
 

勤労学生控除のメリットがなくなる

納税者自身が大学等に通う勤労学生であるときは、27万円の所得控除を受けることができます。これを勤労学生控除といいます。
 
2025年から勤労学生の所得要件が、75万円から85万円へ引き上げられました。その結果、勤労学生控除を受けられる給与収入の上限が130万円から150万円に引き上げられました。
 
しかし、すでに説明したように2025年から給与収入が160万円を超えないと所得税が課されなくなりましたので、勤労学生控除を使う機会はほとんどないといえます(学生が個人事業主の場合を除く)。
 

税制上、大学生が親の扶養に入る条件

親に扶養する子どもがいる場合は、親は38万円(19歳以上23歳未満は63万円)の所得控除(扶養控除)が受けられます。
 
2025年より、扶養対象者である大学生の合計所得金額が48万円以下から58万円以下に改正されました。給与所得控除は65万円(給与収入190万円以下一律)ですので、子が18歳以下ならアルバイト収入が年収123万円(改正前は103万円)までは、親の扶養に入れます。
 
19歳以上23歳未満の子どもについては、「特定親族特別控除」の創設により、年収が123万円を超えても188万円以下であれば親は特定親族特別控除を受けられるようになりました。控除額は150万円以下までは63万円、それ以降は徐々に縮小され188万円超でゼロになります。
 

社会保険上、大学生が親の扶養に入る条件

所得税と社会保険(健康保険・厚生年金)では、「扶養」の考え方が異なります。社会保険の場合、子どもが被扶養者と認められれば保険料の支払いが不要になります。社会保険上の壁には、「106万円の壁」と「130万円の壁」がありますが、「106万円の壁」について学生は対象外です。
 
「130万円の壁」の被扶養者の主な要件は、年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ、同居の場合は収入が扶養者の収入の半分未満、別居の場合は収入が扶養者からの仕送り額未満であることです。
 
ただし、20歳以上の子については、国民年金の第1号被保険者として年金の保険料を納付する義務が発生するため、130万円の壁を意識する必要はないでしょう。
 
なお、「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」の要件を満たした学生には、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。
 
また、親が子どもの国民年金保険料を代わりに支払った場合には、全額を社会保険料控除として親の所得から差し引くことができます。
 

まとめ

大学生のアルバイト収入が110万円を超えると住民税がかかり、130万円を超えると親の健康保険の扶養から外れ、150万円を超えると親の税負担が増え、160万円を超えると学生の所得税が増えます。
 
親の健康保険の扶養から外れると国民健康保険料の負担が生じるので、大学生は「130万円」を意識するといいでしょう。高等教育の修学支援新制度を受けている人は、住民税の課税情報をもとに収入基準(選考基準)が判断されます。アルバイトは110万円を超えると、支援額に影響が出てきますので注意してください。
 
なお、学生であっても、厚生年金保険に加入している事業所であり、労働日数および労働時間が正社員の4分の3以上の場合は、正社員等と同様に一般被保険者として健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。
 

出典

国税庁 令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.1175 勤労学生控除
日本年金機構 従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
 
執筆者 : 新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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