“最低賃金”+“年収の壁”の引き上げ、「勤務時間」の見直しは必要? 結局「年収123万円」稼ぐのが正解!?
本記事では、最低賃金の引き上げによって変わる「勤務時間」の考え方について紹介していきます。
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10月から「地域別最低賃金」が引き上げに
2025年10月3日より、東京都における最低賃金の時間額が「1226円」に改正されました。従前の1163円から、「63円(5.42パーセント)」の引き上げです。
なお、全国加重平均の最低賃金は「1121円」(引き上げ率6.3パーセント)となり、東京都より全国平均の伸びがやや大きい結果です。
最低賃金の引き上げは都道府県別に順次実施されており、秋田県など自治体によっては令和8年に入ってから行われる場合もあります。厚生労働省のホームページで、お住まいの地域の実施状況を確認しましょう。
12月の年末調整では「年収の壁」も引き上げに
勤務時間と実収入を考える際は、最低賃金だけではなく「年収の壁」にも注意が必要です。財務省は「令和7年度税制改正」で、物価上昇を踏まえた以下のような改正を実施しました。
・「所得税の基礎控除の控除額」を「48万円→58万円」に
・「給与所得控除の最低保証額」を「55万円→65万円」に
控除額が計「20万円」増えるため、いわゆる「103万円の壁」は「123万円の壁」となります。加えて、低~中所得者に対する税負担の配慮から、所得税の課税最低額が「160万円」になります。こちらの税制改正も、2025年12月の年末調整からの適用です。
以上から、所得税に関しては実質的に「103万円の壁」から「160万円の壁」まで一気に引き上げられた、といえるかもしれません。
「配偶者控除」を考慮すると“年収123万円”もひとつの選択
共働き世帯を例に考えてみましょう。このケースでは、考慮すべき「年収の壁」は先述した「160万円の壁」だけではありません。
例えば「夫が会社員・妻がパート」というご家庭では、パート収入が「123万円」を超えるか否かによって、夫の受けられる「配偶者控除」が変わります。具体的には、パート収入による年収が123万円未満の場合は「配偶者控除」、123万円を超え160万円までは「配偶者特別控除」の全額が対象です。
年収が160万円を超える場合、201万円に近づくにつれ配偶者特別控除の金額が下がります。なお、201万円を超えると配偶者特別控除の対象外となります。以上をまとめると、表1のとおりです。
表1
| 年収 | 控除の内容 |
|---|---|
| 123万円未満 | 「配偶者控除」の対象 |
| 123万円以上160万円未満 | 「配偶者特別控除」の全額が対象 |
| 160万円以上201万円未満 | 「配偶者特別控除」の金額が段階的に減少 |
| 201万円以上 | 「配偶者特別控除」の対象外 |
出典:首相官邸「「年収の壁」対策」を基に筆者作成
これらの配偶者控除が受けられるのは、控除の対象となる納税者本人の年収が「1000万円以下」の場合です。こうした事例では、パートで得る収入を所得税単体の「壁」である160万円ではなく、控除も視野に入れた「123万円」までを目安にするのもひとつの方法かもしれません。
なお、それぞれのご家庭には個別のケースがあります。「自分は配偶者控除の対象なのかわからない」と疑問に思った方は、一度ファイナンシャルプランナーなどの専門家へ相談してみましょう。
まとめ
最低賃金の引き上げや税制改正によって、考慮すべき年収の金額も変わりつつあります。「控除の対象範囲内で働く予定だったのに」といった事態を未然に防ぐためにも、ご自身の勤務時間について今から見直してみてはいかがでしょうか。
本記事では2025年分所得税に適用される控除額等を紹介しましたが、制度は今後も見直される可能性があります。官公庁のホームページなどで最新情報を確認しながら勤務時間を調整するのが良いかもしれません。
出典
厚生労働省 地域別最低賃金の全国一覧
財務省 基礎控除等の引上げと基礎控除の上乗せ特例の創設
首相官邸「年収の壁」対策
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
