「退職一時金・確定拠出年金」の“同時受け取り”は損!? それぞれ「2000万円・800万円」の場合、税金は“80歳以降”に受け取る場合とどれだけ変わる? 金額をシミュレーション
特に、退職一時金とDCを同じ年に一時金で受け取る場合、退職所得控除の計算方法により税負担が大きくなるケースがあるため注意が必要です。本記事では、控除の仕組みと受取時期の違いによる税額の差を分かりやすく解説します。
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目次
「退職所得控除」のルール:同時受け取りで税金が増える理由
退職一時金とDCを一時金として受け取る場合、税制上の優遇措置である「退職所得控除」は、以下の計算式から算出します。
・勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
・勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20年)
また、退職所得控除のルールでは、「前の退職金を受け取った日から19年以内」に次の退職金を受け取ると、退職所得控除額の計算が重複しないように調整されるため、注意が必要です。
これにより、本来全額非課税だったはずのDCの控除額が大きく目減りするだけでなく、税金が増えてしまうことから「同時受け取りで損をする」といわれています。
「同時受け取り」or「20年後の受け取り」の税金シミュレーション
税金がどのように変わるのか、具体的なシミュレーションで比較します。
退職所得の課税対象額は「(収入金額−退職所得控除額)×1/2」で計算されます。今回は前提条件として、下記を基にシミュレーションしてみましょう。
・退職一時金(企業):勤続期間30年、退職金額2000万円
・DC:加入期間20年、一時金額800万円
退職一時金とDCの控除額
勤続30年(20年超)の場合の控除額は「800万円+70万円×(30年−20年)=1500万円」です。そのため、課税対象額は「(2000万円−1500万円)×1/2=250万円」となります。
DCの場合の控除額は「40万円×20年=800万円」です。今回の一時金は「800万円」のため、全額が控除額となります。
同時(60歳)に受け取る場合の課税対象額
DCの加入期間20年は、退職一時金の勤続期間30年と重複しています。退職所得控除額の計算が重複しないように調整されるため、退職金合計額は「2000万円(退職金)+800万円(DC)=2800万円」です。
その結果、退職所得は「2800万円−1500万円(退職所得控除額)×1/2=650万円」です。所得税の税額表は図表1のとおりで、所得税は「A×B−C」で算出されます。
図表1

国税庁 退職金と税
所得税の税額表から算出すると、「650万円×20%−42万7500円=87万2500円」が所得税額です。
20年以上間隔を空けて(80歳以降)に受け取る場合の課税対象額
退職一時金を受け取った日からDCの受け取りまで20年超の間隔を空けた場合、DCの加入期間(20年)のすべてで控除が受けられるため、非課税となります。
退職一時金の課税対象額250万円を基に図表から算出すると、「250万円×10%−9万7500=15万2500円」が所得税額です。
以上により、同時受け取りでは所得税額が87万2500円と高額ですが、間を開けることで控除額が15万2500円に抑えられます。その差額は72万円と大きく、同時受け取りは不利になるでしょう。
DCの受け取りタイミングと「運用指図者」
DCは60歳以降、75歳になるまで一時金または年金として受け取らずに「運用指図者」として運用が続けられます。掛金の拠出はできませんが、運用商品の変更やスイッチングは可能です。
運用を続けて受け取りを遅らせれば、退職所得控除の期間を調整できるほか、受け取りまでの期間、運用益が非課税で再投資される複利効果が見込めます。
また、年金形式(分割)で受け取る方法もあります。DCを年金として分割して受け取る場合、一時金ではなく「雑所得」として扱われて公的年金や企業年金と合算され、「公的年金等控除」が適用されます。
年金収入が410万円以下の場合、65歳未満は年間60万円まで、65歳以上は年間110万円までが非課税です。DCの受取総額がこの控除内に収まるように調整することで、税負担を最小限に抑えられます。
「運用指図者」にチェンジまたは「年金形式での分割」を視野に入れよう
退職一時金とDCを同じ年に一時金として受け取ると、退職所得控除によっては多額の税金が課税される可能性が高くなります。DCの受け取りを退職一時金から20年以上ずらすのが理想ですが、年齢を考えると難しい選択かもしれません。
そのため、DCは「運用指図者」として運用を継続し、公的年金受給が始まる65歳以降に「年金形式(分割)」での受け取りを検討することをおすすめします。公的年金等控除の非課税枠を最大限活用し、税負担を大幅に軽減できるので、ぜひ参考にしてみてください。
出典
国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁 退職金と税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

















