扶養内で働く妻が「もっと働きたい」と言っています。世帯として払う税金が増え、家計的に損になる可能性はありますか?
では実際のところ、妻が扶養を外れて働くと、本当に世帯として損をするのでしょうか。本記事では税金や社会保険の仕組みを踏まえながら、わかりやすく解説します。
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住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
目次
「扶養内」とは? 税金と社会保険の2つの意味
まず、「扶養内」と一口に言っても、実は2つの制度があります。一つは所得税上の扶養(配偶者控除・配偶者特別控除)、もう一つは社会保険上の扶養です。
【税金の扶養(配偶者控除)】
妻の年収(給与収入)が123万円以下であれば、夫が配偶者控除(38万円)を受けられます。これにより夫の所得税・住民税が軽減されます。ただし夫の所得が1000万円以下などの要件もあります。
さらに、妻の年収が給与収入のみの場合、123万円超201.6万円以下であれば「配偶者特別控除」として段階的に控除が受けられるため、妻の収入が少し増えた程度では急に税金が増えるわけではありません。
【社会保険の扶養】
妻の年収が130万円(または勤務先によって106万円)を超えると、健康保険や年金に自分で加入する必要が出てきます。これが「社会保険の壁」です。保険料負担が発生するため、手取りが一時的に減少する可能性がある点が「損」と感じられる原因になります。
実際に「損」なのか? 収入アップとのバランスがポイント
仮に妻の年収が130万円を少し超えて、社会保険に加入することになったとします。社会保険料(健康保険、介護保険、厚生年金保険料など)は、おおむね年収の約14〜15%前後です。つまり、年収150万円なら年間20万円程度の負担が生じます。
一見「損」に思えるかもしれませんが、妻の収入が増えた分を考慮すると、実際の手取りは増える場合もあります。さらに、社会保険に加入することで以下のようなメリットも得られます。
・将来、自分自身の年金(老齢厚生年金)が受け取れる
・健康保険の傷病手当金や出産手当金などの給付が受けられる
・雇用保険加入により、失業給付を受けられる可能性がある
短期的には「手取りが減った」と感じても、長期的には保障面が充実し、老後の安心につながるのです。
「働き損」を避けるには、制度を理解してシミュレーションを
家計にとって最も大切なのは、「扶養を外れる・外れない」にこだわるよりも、トータルでの可処分所得を最大化することです。
たとえば、妻が年収160万円程度まで働くと、社会保険料を払ってもなお手取りは130万円前後となり、扶養内にとどまる場合(年収103万円前後)よりも明らかに増えます。
一方で、勤務時間を中途半端に増やしても、130万円〜140万円程度にとどまると、社会保険料の負担により手取りがほとんど増えない場合があります。このゾーンがいわゆる「働き損」と呼ばれる部分です。そのため、妻が「もっと働きたい」と考えているなら、次の2つを意識するとよいでしょう。
1.勤務先での社会保険加入条件を確認する(106万円基準の企業もある)
2.年収150万〜160万円以上を目指す働き方にシフトする
また、夫婦それぞれの収入で所得税率は決まるため、年末調整や確定申告のシミュレーションを行っておくと安心です。
扶養の壁に縛られず、家計の「総合的な得」を考えよう
「扶養を外れると損」というイメージは、単純な比較から生まれた誤解にすぎません。確かに一時的に税負担や保険料が増えることはありますが、妻の収入アップと社会保障の充実を考えれば、世帯としてのメリットは大きいケースが多いのです。
重要なのは、「扶養の壁」を恐れて働く時間を制限するのではなく、制度を理解した上で家計全体の最適化を目指すこと。長い目で見れば、「もっと働きたい」という意欲を後押しすることが、家庭の安定にもつながるでしょう。
出典
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
厚生労働省「年収の壁」への対応
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
