社会人2年目、シングルマザーの母を経済的に支えたいです。高校生の妹を私の扶養に入れた方がいいでしょうか?

配信日: 2025.11.30
この記事は約 3 分で読めます。
社会人2年目、シングルマザーの母を経済的に支えたいです。高校生の妹を私の扶養に入れた方がいいでしょうか?
Aさんは、シングルマザーの母と高校生の妹と3人暮らしです。年収400万円ほどの母を経済的に支えたいと考えていて「妹を私の扶養に入れたら母の負担が減るのでは?」と考えているそう。Aさんは社会人2年目、年収は300万円ほどです。高校生の妹はどちらの扶養に入れたほうがいいのでしょうか?
柴沼直美

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

扶養に入れるための条件と効果

まず、扶養に入れるということはどういうことか確認しましょう。
 
妹をAさんの扶養に入れると、Aさんが生活を支えている親族がいる(妹)ことになり、所得税や住民税の課税所得から一定額を差し引くことができ課税対象が抑えられます。控除対象となるには、扶養される人(妹)が「16歳以上」「所得が年間48万円以下(給与収入のみなら年収103万円以下)」「同一生計である」などの条件を満たす必要があります。
 
Aさんの場合は年齢条件を満たしていますので、妹にアルバイトなどで所得がない場合、扶養控除の対象になります。
 

所得税・住民税の控除額とその影響

高校生(16~18歳)を扶養に入れると、所得税では38万円、住民税では33万円の控除が受けられます。この控除により、納税者の課税所得が減り、結果として支払う税負担が軽くなります。
 
たとえば、課税所得が330万円の人が高校生を扶養に入れると、所得税率5%で約1万9000円、住民税で約3万3000円、合計約5万2000円の節税効果が見込まれます。
 

「同一生計」と「扶養の重複」に注意

扶養控除を受けるには、「同一生計」であることが条件です。これは、生活費を共有している状態を指し、同居している場合は基本的に満たされます。より大切なポイントはこの控除を母が受ける場合とAさんが受ける場合では、どちらがより節税効果が高いかを見極めることです。
 
扶養控除は重複しての申告はできません。妹を母とAさんの両方の扶養に入れることはできず、どちらか1人が申告する必要があります。Aさんが妹を扶養に入れる場合、母はその分の控除を受けられなくなります。その結果、母の税負担が重くなるということになるかもしれません。
 
一般的には、所得が高い人が扶養控除を受けたほうが、より節税効果が大きくなります。ただ、実際は課税所得の差や他の控除の状況によっても変わります。Aさんが控除を受けることで本当に「家計全体の負担が減るか」を慎重に見極める必要があります。
 

今後の制度変更にも注意

2026年からは、高校生への児童手当(月額1万円)の支給が始まる一方で、扶養控除額の縮小が予定されています。
 
これにより、所得税・住民税の控除額が減るため、扶養控除による節税効果が小さくなる可能性があります。制度変更の影響を受けるのは母でもAさんでも同じですが、世帯全体の収入と控除のバランスを見て、どちらが扶養に入れるべきかを判断することが重要です。
 
実務的には、年末調整の時期に源泉徴収票などをもとに、母とAさんそれぞれの課税所得を確認し、どちらが扶養控除を受けたほうがより節税効果が高いか、どうすれば世帯全体にとってより賢明な選択なのかをシミュレーションしましょう。
 

まとめ:節税だけでなく家族の協力がカギ

妹を誰の扶養に入れるかは、単なる税金の話ではなく、家族全体の生活を支えるための選択です。母の負担を減らしたいというAさんの気持ちは理解できますが、実際に節税効果があるかどうかは、所得額や控除の仕組みによって変わります。
 
まずは冷静に試算し、家族で話し合って決めることが大切です。税制は複雑ですが、家計の助けになるよう理解していきましょう。
 

出典

国税庁 扶養控除
 
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者

  • line
  • hatebu
【PR】 SP_LAND_02
FF_お金にまつわる悩み・疑問