年末調整後に「地震保険」の“控除証明書”が出てきました。このままだと「1万円」近く損なのですが、自分で確定申告すれば“取り戻せる”でしょうか?「年収500万・900万・1200万円」の影響額も確認
その分、提出書類が多くなりがちで、控除もれに注意が必要です。書類の提出を急ぐあまり、あとから控除証明書が出てきて「もしかして損をしたかも」と不安になる人もいるのではないでしょうか。
しかし、年末調整で控除申請を忘れてしまったとしても、確定申告で取り返せる可能性があります。本記事では、年末調整や確定申告の仕組み、年末調整で控除申請を忘れてしまった場合の具体的な影響額について解説します。
FP2級、日商簿記3級、管理栄養士
年末調整とは?
年末調整とは、会社が従業員の1年分の所得税を精算する仕組みで、源泉徴収されていた税金を実際の所得や控除に合わせて調整する手続きです。控除されるものには、生命保険料控除や地震保険料控除など多くの種類があり、申請とともに控除証明書を会社へ提出することで税額に反映されます。
便利な制度ではありますが、書類の提出が遅れたり控除証明書を見落としたりすると控除が反映されず、税金を多く払いすぎてしまうことがあります。年末調整を行う年末は、普段の業務が忙しいことなどもあって、申請書類を整理しきれずに控除漏れが発生してしまうケースに注意が必要です。
控除漏れでどれくらい損? 年収別のリアルな金額
ここでは、地震保険料3万円に対する控除を申請し忘れたケースで、控除額にどれくらい差が出るのかを年収ごとに試算してみましょう。地震保険料控除は、所得税と住民税の両方に対して、次の計算方法で算出される控除対象額まで所得控除が受けられます。
・所得税:支払った地震保険料の全額(上限5万円まで)
・住民税:支払った地震保険料の2分の1(上限2万5000円まで)
住民税は年収に関わらず一律10%ですが、所得税は年収に応じて所得税率が変わるため、地震保険料控除の影響も年収による違いが出てきます。年収別に影響額を計算した結果は次の通りです。
なお、実際の所得税率は、給与所得控除や各種控除を差し引いたあとの「課税所得」で決まりますが、ここでは分かりやすさのために、年収ごとのおおよその税率を用いて計算しています。
・年収500万円(所得税率10%)の場合:
所得税:3万円×10%=3000円、住民税:3万円×1/2×10%=1500円、合計4500円
・年収900万円(所得税率20%)の場合:
所得税:3万円×20%=6000円、住民税:1500円(上記計算と同額)、合計7500円
・年収1200万円(所得税率23%)の場合:
所得税:3万円×23%=6900円、住民税:1500円(上記計算と同額)、合計8400円
このように、控除証明書1枚の提出漏れでも、年収によっては1万円近い税金の払いすぎが生じる可能性があります。
控除漏れが分かったらどうすればいい?
年末調整は一度提出すると、原則として会社でやり直すことができません。しかし、反映されなかった控除は、自分で確定申告することで取り戻せます。
確定申告とは、1年間の所得と控除を自分で申告し、税金を精算する仕組みです。確定申告は毎年3月頃が締切のため、控除申請漏れに気づいた時点で申告すれば、控除を反映した税額に修正することが可能です。
年末調整で申請漏れがあったら確定申告しよう
年末調整は、年末の忙しい時期に対応が必要となり、提出する書類も多いため、申請漏れが起こる可能性があります。
例えば、地震保険料3万円の控除申請を忘れるだけでも、年収によっては1万円近い税金の払いすぎにつながることがあります。
控除漏れに気づいた場合、確定申告すれば控除を反映した税額に修正が可能です。年末調整で申請し忘れたからといって諦めることなく、取り返す方法があることを覚えておきましょう。
出典
国税庁 No.1145 地震保険料控除
一般社団法人日本損害保険協会 VI.損害保険と税金について
東京都主税局 個人住民税
国税庁 No.2260 所得税の税率
執筆者 : 東雲悠太
FP2級、日商簿記3級、管理栄養士
