義姉夫婦は「年収1400万円」で“パワーカップル”のはずが、「服はユニクロ・旅行は数年に1回」とのこと。高収入でも意外と余裕はないのでしょうか?「累進課税」の負担感とは
本記事では、世帯年収1400万円が日本でどのような位置づけにあるのか、そして高収入でも余裕がないといわれる理由について解説します。
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世帯年収1400万円は日本でどのくらいの位置づけ?
厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査」によると、日本の世帯所得の中央値は410万円、平均所得金額は536万円です。世帯年収1400万円は、平均の約2.6倍に相当します。
同調査の所得金額階級別の分布をみると、世帯年収1000万円以上の世帯は全体の約12%です。世帯年収1400万円は、日本において高収入世帯といえるでしょう。
なお、夫婦ともに高収入を得ている共働き世帯は「パワーカップル」と呼ばれることがあります。世帯年収1400万円のパワーカップルは、確かに高収入の部類に入ります。
高収入でも余裕がない理由
世帯年収1400万円は高収入ですが、実際に自由に使えるお金は、額面ほど多くない場合があります。高収入でも余裕がないと感じる主な理由を見ていきましょう。
税金や社会保険料の負担が大きい
世帯年収1400万円といっても、そのすべてが自由に使えるわけではありません。給与からは所得税、住民税、社会保険料が控除されます。
夫婦それぞれ年収約700万円の共働き世帯の場合、世帯全体で約350万円が控除されます(夫婦2人とも40歳以上とする)。その結果、世帯年収約1400万円でも、手取りは約1050万円となり、額面の約75%にとどまります。
累進課税による負担感
日本の所得税は「累進課税」という仕組みを採用しており、所得が増えるほど税率が高くなります。税率は5%から45%まで7段階に分かれており、給与所得者で年収700万円程度では課税所得の多くに20%の税率が適用されます。
さらに、住民税は一律10%が課されるため、所得税と合わせると収入の約30%が税金として差し引かれることになります。「稼いでも稼いでも手元に残らない」という感覚を持つ人が多いのは、この累進課税の仕組みが一因といえるでしょう。
また、2027年以降は厚生年金保険料の標準報酬月額の上限が段階的に引き上げられ、2029年には現行の65万円から75万円になる予定です。年収800万円前後の高収入者は、保険料負担がさらに増える見込みとなっています。
教育費の負担
子どもがいる場合、教育費も大きな負担となります。文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」によると、学校教育費と学校外活動費を合わせた学習費総額は図表1のとおりです。
図表1
| 学校種別 | 公立 | 私立 |
|---|---|---|
| 小学校 | 約34万円 | 約183万円 |
| 中学校 | 約54万円 | 約156万円 |
| 高等学校 | 約60万円 | 約103万円 |
文部科学省 令和5年度子供の学習費調査より筆者作成
公立でも年間34万~60万円程度、私立であれば年間100万~183万円程度の負担となります。子どもが2人いれば、この金額が2倍になるため、教育費だけで年間数百万円が必要になるケースもあります。
さらに、大学進学となれば、国公立でも年間約54万円、私立文系で約83万円、私立理系では約116万円の学費がかかります。子どもの将来を考えると、早い段階から教育資金を準備しておく必要があるでしょう。また、初年度は入学金も考慮しなければなりません。
住居費・生活水準の上昇
高収入世帯は都心部に住むことが多く、住居費が高くなる傾向があります。共働きで通勤の利便性を重視すると、都心のマンションを選ぶケースも多く、住居費の負担が大きくなりがちです。
また、収入が増えると生活水準も上がりやすく、食費や交際費などの支出も増加しがちです。さらに、夫婦共働きの場合は、時間を節約するために外食や家事代行サービスを利用する機会も増え、支出がかさむ要因となります。
まとめ
世帯年収1400万円は、上位12%以内に入る高収入世帯ですが、手取りは約1050万円となります。教育費や住居費などの固定費が重なると、自由に使えるお金は想像以上に限られます。
そのため、義姉夫婦のように高収入でも質素な生活を送っているケースは、決して珍しくないといえるでしょう。現状におごることなく、家計を見直し、優先順位をつけた支出計画でゆとりのある生活を目指したいものです。
出典
厚生労働省 2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況
国税庁 No.2260 所得税の税率
厚生労働省 厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて
文部科学省 令和5年度子供の学習費調査の結果を公表します
文部科学省 私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
執筆者 : 金子賢司
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