【実録】離婚で夫が「4000万円のマンションは渡す」と言いますが…“賃貸中の物件”は財産分与で受け取ると損? 専業妻にとってお得な選択肢とは?

配信日: 2025.12.22
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【実録】離婚で夫が「4000万円のマンションは渡す」と言いますが…“賃貸中の物件”は財産分与で受け取ると損? 専業妻にとってお得な選択肢とは?
離婚を控える専業主婦にとって、「マンションを渡す」という夫の言葉は一見ありがたい提案に思えます。しかし、その物件が賃貸中だった場合、税金・名義変更・将来の売却リスクなど、知らないと損をする落とし穴がいくつかあります。
 
果たして4000万円のマンションは、本当に得になる財産分与なのでしょうか。
 
今回は実際の相談事例をもとに、どのような選択肢があるかを分かりやすく解説します。
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50代専業主婦、「4000万円のマンションを渡す」と言われた実際の相談内容

今回寄せられた相談は、結婚20年以上の50代夫婦の離婚に伴う財産分与についてです。夫名義で、結婚後に購入したマンション(売値は約4000万円、査定は約3300万円)があり、住宅ローンはすでに完済済みです。
 
夫は転勤で別の地域に住んでおり、そのマンションには現在賃借人が入居中で、夫婦自身も他県で賃貸暮らしをしています。夫からは「マンションは妻に渡す。賃料月10万円を生活費にあてて、困ったら売ればいい」と提案されている状況です。
 
一方で妻は、「賃貸中のまま財産分与で自分の名義にすると、贈与税や不動産取得税などの税負担が重いのでは」と不安を抱えています。
 
不動産会社からは「賃借人がいる状態のまま売却することも可能」と提案されており、「賃貸のままマンションをもらう」「夫名義のまま売って現金を受け取る」「賃借人を退去させて自分が住む」のどれが将来にとって有利か悩んでいるケースです。
 

離婚でマンションを財産分与するときにかかり得る税金の基本

離婚に伴う財産分与として不動産を移転する場合、まず押さえておきたいのが「贈与税」と「譲渡所得税」の扱いです。基本的に、離婚の財産分与として適正な範囲で不動産を取得する場合、受け取る側(今回のケースでは妻)には贈与税は課されないとされています。
 
ただし、婚姻期間や夫婦の資産状況に比べて明らかに過大な分与とみなされるような場合には、一部が贈与と判断されるかもしれません。
 
一方、マンションを渡す側(今回のケースでは夫)には譲渡所得税が問題となる場合があります。
 
離婚による財産分与でも、税法上は「資産の譲渡」とみなされ、時価に基づいて譲渡したとみなされるため、譲渡所得税が発生することがあります。夫婦間で現金精算を含めた総額や、マンションの取得費・売却見込み額などを踏まえて、税理士などにシミュレーションを依頼するのが実務的です。
 
さらに、妻がマンションの所有権を取得する場合には、「登録免許税」も考慮する必要があります。離婚に伴う財産分与による所有権移転登記には、登録免許税がかかり、税率は原因が離婚による「財産分与」の場合、分与する不動産の固定資産税評価額の2%が一般的な目安とされています。
 
なお、夫婦間の財産の清算を目的として行われる財産分与の場合、不動産取得税は原則として課税されませんが、離婚後の扶養や慰謝料として不動産を取得した場合は課税対象となるケースがあります。
 

「賃貸のままもらう」「夫名義のまま売って現金をもらう」「自分が住む」を比較

相談者が悩んでいる3つの選択肢には、それぞれ税務・生活面で特徴があります。
 
まず「賃貸のままマンションを妻が取得する」場合、妻は家賃収入を得る立場になるため、所得税の「不動産所得」として申告が必要となります。
 
固定資産税や管理費・修繕積立金などを経費計上できる一方で、空室リスクや将来の修繕負担も妻が負うことになります。所有権移転時の登録免許税はかかりますが、不動産取得税は財産分与であれば原則非課税となります。
 
次に「夫名義のまま賃貸のマンションを売り、その売却代金の一部を現金で財産分与として受け取る」方法です。この場合、譲渡所得税の納税義務者は夫となるのが一般的で、妻は現金を受け取るだけなので不動産取得税や登録免許税はかかりません。
 
売却後に手取りの金額が確定し、その範囲で預貯金などとして分けるため、妻としては現金での将来設計がしやすいメリットがあります。一方で、今後の居住場所の確保や老後の住まいは別途検討する必要があります。
 
最後に「賃借人に退去してもらい、妻が自ら居住する」パターンです。妻の自宅として使う前提であれば、中長期的には家賃支払いが不要になり、老後の住まいの不安を軽減しやすい選択肢です。
 
居住用財産に関する税制優遇(最大3000万円の特別控除特例など)は、売却時に夫側で検討される制度ですが、将来妻が売却する際にも自己居住要件などを満たせば、一定の特例が使える可能性があります。ただし、賃借人の退去には契約内容や正当事由が関係し、簡単には進まないケースも多いため、賃貸借契約の内容確認と専門家への相談が欠かせません。
 

専業主婦が損を避けるために押さえたいポイント

専業主婦期間が長い50代の離婚では、「老後の住まい」と「安定した現金収入」の両方をどう確保するかが重要になります。マンションそのものを取得する場合は、将来の家賃収入や売却可能性を考えつつ、登録免許税の扱いなどを確認し、過大な財産分与とみなされない範囲での取り決めを意識するのが現実的です。
 
一方で、売却して現金のみを受け取る選択肢も、税金面ではシンプルで、専業からの就労再開までの生活費や引っ越し費用の確保に向いています。離婚協議書や公正証書で、分与額・支払方法・時期を明確にしつつ、必要に応じて弁護士や税理士、不動産会社へ相談することで、想定外の税負担やトラブルを減らせるでしょう。
 
今回のように、賃貸中のマンションをどう扱うかは、税金だけでなく「どこに住み、どう働き、どう老後を迎えるか」というライフプランと一体で考えることが重要です。専門家の助言を得ながら、自分にとって無理のない選択肢を比較検討することで、離婚後の生活を前向きに再設計できる可能性は十分にあるといえるでしょう。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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