扶養内パート主婦、フリマアプリでアニメキャラの限定品を出品したら、なんと20万円で売れた! 扶養から外れてしまいますか?
本記事で「突然の高額売却でも大丈夫なのか?」について、一緒に確認していきましょう。
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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結論としては、20万円で売れても「扶養から外れないことが多い」
「扶養から外れてしまうのでは?」と心配される相談をよく受けます。特に、扶養内で働くパート主婦の方がフリマアプリに出品して、思わぬ高額で売れたとき、不安になるでしょう。結論から言うと、一度売れた20万円がそのまま「扶養から外れる所得」になることはほとんどありません。
理由は、フリマアプリでの売却は多くの場合、「生活用動産の売却」と判断され、所得税の課税対象にならないからです。例えば、家にある不要な服、バッグ、趣味のグッズなどを売った場合、それがどれだけ高値でも「非課税」であり、扶養判定の対象となる所得には含まれないのです。
非課税とされる売却の条件「課税されるケースとの違い」
ただし、すべてが非課税というわけではありません。国税庁は、生活用動産(衣類、家具、趣味の物など)を売った利益は課税しないと明確にしています。
今回のように、アニメキャラの限定グッズを個人的に購入し、使っていた、またはコレクションしていた物を売ったのであれば、生活用動産の範囲に入り、税金はかかりません。
一方で、課税される可能性がある場合として、以下のケースが挙げられます。
1. せどりのように、転売目的で仕入れて反復継続的に売っている場合は事業所得または雑所得という扱いになるでしょう。
2. 貴金属・宝石・書画骨とうなど特定の資産を売って1年を通して50万円超の利益が出た場合は譲渡所得の対象
したがって、パート主婦(夫)が個人的に持っていたアニメグッズを1点売っただけで20万円になったというケースでは、通常は課税対象には該当しません。
では、「扶養(税法上の扶養)」はどう判定されるか?
では、改めて税法上の扶養、つまり配偶者控除・配偶者特別控除の判定を確認しましょう。基準は「合計所得金額」です。ポイントは「非課税のものは合計所得金額に入れない」という点です。
そう考えると、生活用動産の売却は所得に計上されません。したがって扶養に影響しない、という結論になります。
パート主婦(夫)の場合は、年間の合計所得金額が58万円以下(令和2年分から令和6年分までは48万円以下、令和元年分以前は38万円以下)であること、給与のみの場合は給与収入が123万円以下(令和6年分以前は103万円以下)であれば配偶者控除の対象、58万円超133万円以下(令和2年分~令和6年分までは48万円超133万円以下、平成30年分~令和元年分までは38万円超123万円以下)の範囲であれば、配偶者特別控除の範囲内になります。
したがって、今回の相談者のように、給与+フリマ売却=扶養の基準を超えるという心配は不要です。給与収入さえ基準内であれば、20万円の売却は扶養判定には含まれません。
健康保険の扶養は、判定基準が別!
ここで気を付けたいのが、健康保険の被扶養者の基準は税法上の扶養とは違う、という点です。
健康保険では、年収130万円未満(または106万円基準の対象者)であるかが判断基準になります。ただしここでも、生活用動産の売却は「収入」ではなく「資産の売却」扱いとなり、収入基準の判定に含めません。
したがって20万円の臨時収入があったとしても、それが「商売としての収入」でなければ、被扶養者から外れることは通常ありません。ただし、売買を継続的に行っている場合には、保険者が「事業収入」と判断する可能性が出てきます。今回のような、単発の売却では問題ありません。
まとめ 20万円で売れても扶養は問題ないが、継続的な転売は別
アニメグッズの単発売却 は、生活用動産の売却として非課税です 。したがって所得には含まれません。税法上の扶養判定となる、給与以外の非課税収入は影響しません。また健康保険上の扶養についても、売却益は「年収」とみなされないため問題はありません。
ただし継続的な転売は、事業所得扱いとなる可能性があります。つまり、20万円で売れたからといって扶養から外れることはほぼありません。「一時的な断捨離・コレクション売却」は大丈夫だと理解してください。
出典
国税庁 No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.1195 配偶者特別控除
全国健康保険協会(協会けんぽ) 被扶養者とは
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者