今年の医療費は「9万8000円」…あと“5000円”払えば「医療費控除」でお得になりますか?「年収500万円」の私は、いくら“税金が減る”でしょうか? 還付額をシミュレーション

配信日: 2025.12.22
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今年の医療費は「9万8000円」…あと“5000円”払えば「医療費控除」でお得になりますか?「年収500万円」の私は、いくら“税金が減る”でしょうか? 還付額をシミュレーション
1年間の医療費が10万円を超えると医療費控除が受けられる、という話を聞いたことがある人は多いでしょう。そのため、年末に一年分の領収書を集計して合計額が9万8000円だった場合、「年内に受診して10万円以上にしたほうが、税金が減らせてお得なのではないか」と考える人がいるかもしれません。
 
あえて5000円の医療費を追加で支払って合計額を10万3000円にした場合、実際にいくら税金が減らせるのでしょうか? 本記事では医療費控除の仕組みと実際に還付される金額について解説します。
浜崎遥翔

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

医療費控除は10万円を超えた金額分が控除になる仕組み

まず押さえておきたいのは、医療費控除の仕組みです。
 
年間の医療費が10万円を超えたら「支払った医療費の全額が控除となる」、あるいは「ある決まった金額が控除される」と考えている人がいるかもしれませんが、それは正しくありません。
 
扶養控除では、扶養親族がいれば38万円の控除が受けられますが、所得が58万円(給与収入の場合は123万円)を超えて扶養親族でなくなると控除金額は0円となります。扶養控除の場合は、この123万円を超えるかどうかで支払う税金額に大きな差が生じます。
 
医療費控除は、こういったいわゆる「0か100か」という性質を持つものではありません。
 
医療費控除による所得控除額は、「年間の医療費-10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)」で計算されるものです。
 
例えば、現在の医療費9万8000円に対し、年末にあえて5000円の治療費を追加で支払ったとします。すると年間の医療費総額は10万3000円となりますが、医療費控除の対象になるのは10万3000円全額ではなく、10万円を超えた金額に当たる3000円となるのです。
 

戻ってくる税金は約600円

さらに言うと、医療費控除はあくまでも所得控除の一種です。3000円の控除を受けたからといって、3000円の税金が安くなるわけではありません。
 
所得控除とは、税金そのものが安くなるのではなく、税金の計算の根拠となる所得金額が減るだけです。実際に減る税負担は「所得控除金額×税率」で計算される金額となります。
 
例えば、年収500万円の人の場合の所得税率は高くて10.21%(扶養控除や生命保険料控除などの所得控除を受けられる人は5.105%となる人もいる)ので、医療費控除で3000円分の所得控除を受けても減らせる所得税負担は多くても306円に過ぎません。同様に住民税(税率は一律10%)も減らせますが、こちらは300円です。
 
これに加えて、控除を受けるために必要な手間も考慮する必要があります。というのも、医療費控除を受けるためには、年末調整ではなく確定申告が必要です。医療費の詳細に加えて、源泉徴収票を使って年末調整の結果やふるさと納税で行った寄附の詳細を申告書類に記載し、税務署に届け出る手間が発生します。
 
税負担をたった600円減らすために、無理して10万円を超えるように受診する必要があるかに加えて、慣れない事務作業を行うことがコストパフォーマンスに見合うかどうか、冷静に判断する必要があるでしょう。
 

セルフメディケーション税制なら使えるかもしれない

医療費控除の10万円には届かないけれど、今年は湿布薬や胃腸薬などを薬局でよく買ったという場合は、セルフメディケーション税制が使える可能性があります。
 
これは、ドラッグストアなどで購入できる特定の医薬品の購入額が、年間1万2000円を超えた場合に使える減税制度です。対象となる商品はスイッチOTC医薬品と呼ばれ、パッケージに識別マークがついていたり、レシートに対象商品であることが印字されていたりするので確認してみると良いでしょう。
 
例えば、医療費のうち、セルフメディケーション税制対象医薬品の購入額が2万円であれば8000円の所得控除が受けられます。無理に追加で受診しなくても、医療費控除以上の控除を受けられる可能性があるのです。
 

まとめ

医療費控除は、高額な医療費がかかってしまった時の負担を軽減するための制度です。ただし、あくまでも10万円を超えた分のみが対象となる制度であり、「年間の医療費が10万円を少し超えたくらい」のときの控除額は決して大きくありません。
 
また、医療費控除の適用には確定申告が必要となります。どれだけ税負担を減らせるかに加えて、それが手間に見合うのか考えることが重要といえるでしょう。
 

出典

国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
 
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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