18歳の子どもに「うっかり年収123万円稼いでしまったので税金負担が増えるかも」と謝られました。税金はいくらくらい増えるのでしょうか?
この控除の対象となる基準は、令和7年分から改正されており、今までは対象外となる年収でも控除を受けられるようになる場合があるため、確認しておきましょう。
今回は、扶養控除の対象となる基準の変更点や改正により税額にどう影響するのかなどについてご紹介します。
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扶養控除の基準は令和7年分から変更に
法改正前であれば、子どもが給与収入で103万円(合計所得金額48万円)を超えると扶養控除から外れるようになっていました。しかし、法改正により条件となる所得額が高くなったため、年収120万円でも扶養控除を受けられるようになっています。
国税庁によると、令和7年分の改正前後で扶養控除対象親族の所得条件の違いは以下の通りです。
・改正前:合計所得が48万円以下
・改正後:合計所得が58万円以下
扶養控除の対象になると、扶養している親の所得から一般の扶養親族であれば所得税は38万円、住民税なら33万円を差し引いて計算できます。
また、19歳以上23歳未満の子どもなどで、合計所得金額が要件を満たす特定扶養親族に該当する場合は、所得税で63万円、住民税で45万円が控除されます。なお、令和7年分からは扶養親族の合計所得要件や給与所得控除の内容も見直されているため、計算時には最新の条件を確認し、間違えないように注意が必要です。
所得の求め方
所得とは、収入から必要経費などを差し引いて計算した各種所得の金額を合計したものです。もし子どもが給料を受け取る形で働いている場合、その子どもの給与収入について給与所得を計算する必要があります。給与所得とは、給料などの収入金額から給与所得控除を差し引いた金額です。
給与所得控除も扶養控除と同じタイミングで改正されており、改正前後で図表1(改正前)、図表2(改正後)のように変動します。
図表1【改正前】令和2年分~令和6年分
| 給与などの収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
|---|---|
| 162万5000円 | 55万円 |
| 162万5001~180万円 | 収入金額×40%-10万円 |
| 180万1~360万円 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万1~660万円 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万1~850万円 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万1円~ | 195万円(上限) |
出典:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問) No.1410 給与所得控除」を基に筆者作成
図表2【改正後】令和7年分以降
| 給与などの収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) |
給与所得控除額 |
|---|---|
| ~190万円 | 65万円 |
| 190万1~360万円 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万1~660万円 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万1~850万円 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万1円~ | 195万円(上限) |
出典:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問) No.1410 給与所得控除」を基に筆者作成
年収が120万円のとき、給与所得控除額の改正により、所得額は10万円少なくなります。
改正前後で税金負担はどう変わる?
今回は、以下の条件で、改正前後の税額の差を比較しましょう。税金の計算には社会保険料も必要なため、社会保険料についても定義しています。
・親は東京都在住の50代、年収500万円(給与所得のみ)
・全国健康保険協会に加入しており、標準報酬月額は年収を12で割ったものとする
・ボーナスは考慮しない
・給与所得は給与所得控除を適用して算出し、そのうえで社会保険料控除、扶養控除、基礎控除のみを考慮する
・令和6年と令和7年(改正前後)の金額で比較
・住民税は所得割10%、均等割5000円(森林環境税を含む)を用いる
・子どもの年収は120万円
条件を基にすると、改正前後の控除や税額などは図表3の通りです。なお、改正により所得税の基礎控除も変わっています。
図表3
| 令和6年 | 令和7年 | |
|---|---|---|
| 給与所得控除 | 144万円 | |
| 社会保険料控除 | 76万5048円 | 76万580円 |
| 扶養控除 | なし (子どもの所得65万円のため対象外) |
所得税38万円/住民税33万円 (子どもの所得55万円のため対象) |
| 所得税基礎控除 | 48万円 | 68万円 (基礎控除58万円 +基礎控除の特例による上乗せ10万円) |
| 所得税課税所得 | 231万4000円 | 173万9000円 |
| 所得税率、控除 | 10%、9万7500円 | 5% |
| 所得税 | 13万3900円 | 8万6950円 |
| 住民税基礎控除 | 43万円 | |
| 住民税課税所得 | 236万4000円 | 203万9000円 |
| 住民税の割合 | 10%+5000円 | |
| 住民税 | 24万1400円 | 20万8900円 |
※筆者作成
図表3から令和6年分と令和7年分の所得税・住民税の合計を比較すると、(令和6年分:所得税13万3900円+住民税24万1400円)−(令和7年分:所得税8万6950円+住民税20万8900円)=7万9450円となり、税制改正により税金は合計7万9450円安くなることが分かります。
したがって、今回のように年収が120万円となった子どもに相談されたときは、税制改正によって税金負担が増える心配はないことを伝えるとよいでしょう。
制度の改正により子どもが年収120万円でも税金負担が軽くなる可能性がある
税制改正前は年収120万円の場合、扶養控除の対象から外れてしまいました。しかし、税制改正によって扶養控除の所得基準が引き上げられ、あわせて給与所得控除の最低額も高くなったため、年収120万円であっても扶養控除の対象に入る可能性があります。
ただし、子どもが給料以外に収入を得ているなど、ほかの条件によっては扶養を外れる場合もあるため、よく確認しておきましょう。
出典
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1410 給与所得控除
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1180 扶養控除
調布市 住民税の所得から差し引かれる金額(医療費控除・生命保険控除・配偶者控除・扶養控除など)基礎控除(令和3年度より改正)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.1199 基礎控除
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.2260 所得税の税率
総務省 地方税制度 個人住民税
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
監修 : 高橋庸夫
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