JR運賃値上げで「社会保険料」が増え“手取り減”に!? パートで「月給12万円」の場合、手取りへの影響はいくら?「通勤費は会社負担」の安心が招く“落とし穴”とは
しかし、この値上げがきっかけで、社会保険料が上がることがあります。特に月給がそれほど高くないパート従業員は、影響を受けやすいともいえます。本記事では、鉄道運賃の値上げと社会保険料との関係について説明します。
特定社会保険労務士・FP1級技能士
通勤費が上がっても手取りには影響なし?
通勤にかかる電車賃などは、「通勤手当」として支給されることが多いです。そのため、少し鉄道運賃が上がっても「どうせ会社が出してくれるから、私が損をするわけではない」と思う人は多いでしょう。
通勤費が変わると社会保険料が変わる?
しかし、鉄道運賃の値上げが手取り額に全く影響しないわけではありません。まず、雇用保険料が上がります。ただし、雇用保険料の増額は少額にとどまります。雇用保険料は「その月の総支給額×5/1000※」で計算されるため、仮に通勤手当が月1000円上がったとしても、増える保険料は5円程度です。
※2026年4月の雇用保険料率で計算
大きく上がる可能性があるのは、社会保険料のほうです。通勤手当単価のほんの少しの増額がきっかけで、社会保険料が何千円も上がることがあり得るからです。
随時改定通勤手当は「固定的賃金」
社会保険料は、原則として4~6月に支払われた賃金をもとに計算され、9月から変更されます。この社会保険料の決まり方を「定時決定」といいます。しかし、一定の要件に当てはまった場合は、年の途中でも変更されることがあります。それは、次の全てに当てはまったときです。
・固定的賃金が変動したこと
・3ヶ月間の平均給与を当てはめたとき、標準報酬月額の等級が2等級以上変動したこと
・3ヶ月間の賃金支払い基礎日数が月17日以上(働き方によっては11日以上)あったこと
つまり、「年の途中で給与が大きく変わったときは、社会保険料もそれに見合う額にしましょう」ということです。この制度を「随時改定」といいます。一般に「月額変更」とも呼ばれます。
さて、固定的賃金とは、基本給や時給単価、役職手当、資格手当など、一定単価で毎月支払われるものをいいます。通勤手当も固定的賃金に該当します。そのため、通勤にかかる電車賃の単価が上がれば、その後3ヶ月間の給与額によっては随時改定が起こる可能性があるのです。
「2等級」の幅
随時改定の条件の1つに出てくる「標準報酬月額」とは、給与の額を一定の幅で区切った額のことです(図表1)。
図表1
全国健康保険協会 令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
例えば、月給14万円の場合は、11等級の14万2000円のところに当てはまります。
11等級くらいまでは、等級間の差は8000円刻みくらいです。12等級から17等級までは1万円刻みになり、26等級までは2万円刻みに、さらにその上は3万円刻みに、という具合に、等級間の幅が大きくなっていきます。
月給50万円の人が2等級上がるには、「4万5000円」平均給与が上がる必要があります。しかし、月給12万円の人の場合は、1万円上がるだけで2等級上の標準報酬月額になってしまいます。
社会保険料が上がることも
そのため、標準報酬月額が少額なパート従業員は、通勤運賃の少しの値上げがきっかけとなり、たまたまその時期に残業が多かったなどの事情が重なると、2等級以上の変動となり、社会保険料が上がることがあるのです。
ちなみに、標準報酬月額が12万6000円の場合、健康保険料と厚生年金保険料の合計額は1万7734円ですが、2等級上の14万2000円になると1万9986円となり、社会保険料は2252円の増額になります。
※全国健康保険協会・東京都の会社・40歳未満・2026年3月の保険料率で計算した例です。
保険料が上がっても
社会保険料を上げないように、「鉄道運賃が上がってしばらくの間は、残業したりシフトを増やしたりしないほうがいいかな」と考えたくなるかもしれませんが、なかなかそうはいかないのが現実でしょう。
それに、標準報酬の等級が上がることは悪いことばかりではありません。将来の老齢年金が少し増えるし、傷病手当金や出産手当金を受けるときも、その等級に見合った額が受給できます。
まとめ
鉄道運賃の値上げで通勤手当単価が上がると、それがきっかけで随時改定に該当し、社会保険料が上がる可能性はあります。ただし、該当者はそれほど多くはないでしょう。
随時改定に該当するのは、その時期に残業などにより給与が多かったケースです。この春、通勤単価が上がった人は、繁忙期の場合は仕方がないとしても、ダラダラ残業のようなことは控えたほうがよいかもしれません。
出典
日本年金機構 随時改定(月額変更届)
全国健康保険協会 令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
厚生労働省 令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内
執筆者 : 橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士

