父の死後、実家を「1500万円」で売却したら“税金280万円”も取られショック! しかも後日「払わなくて済む方法があった」と聞いたのですが、どうすれば良かったのですか? 特例を使う要件とは
しかし、一定の要件を満たせば、実家を売った利益から最大3000万円を控除できる特例を使え、数百万円の税負担がなくなる場合があります。本記事では、被相続人(亡くなった人)の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例について解説します。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
なぜ相続した空き家の売却が優遇されるのか?
総務省によると、全国の空き家数は約900万戸(2023年10月時点)と過去最多を更新しています。管理が行き届かない古い家が増え続ければ、景観の悪化や防犯上の問題、地震時の倒壊被害など、周辺への影響も避けられません。
また、空き家を放置して、特定空家等や管理不全空家等に指定されると、住宅用地の特例が外れ、固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。
こうしたことから、空き家対策の一環として、2016年に被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例が始まり、2027年末まで特例の適用期限が延長されています。
特例を使うための主な要件
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例の、主な要件を挙げます。
・1981年5月31日以前に建築された一戸建てであること(マンション等の区分所有建物は対象外)
・相続直前まで亡くなった人が一人で居住していたこと(一定の要件を満たす老人ホーム等への入居中に亡くなった場合も対象)
・相続開始から売却まで、事業、貸付、居住の用に供されていないこと
・相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
・売却代金が1億円以下であること
・売却時に耐震基準を満たしているか、建物を取り壊して土地を売ること
・令和6年1月1日以降の譲渡については、売却後翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行うこと
なお、2024年1月1日以降の譲渡から、相続人が3人以上の場合は、1人あたりの控除上限が3000万円から2000万円に引き下げられています。
実家売却にかかる税金を計算してみる
不動産を売って得た利益のことを譲渡所得といい、「収入金額-(取得費+譲渡費用)」で求めます。取得費とは購入時にかかった費用、譲渡費用とは売却時の仲介手数料などです。
取得費は実際にかかった金額を使うのが原則ですが、実際の取得費が不明な場合や収入金額の5%に満たない場合は、収入金額の5%を概算取得費として使うことができます。今回のケースの実家の状況は、次の通りです。
・建築年:1965年(昭和40年)
・建物は取り壊し済み
・収入金額:土地の売却価格1500万円
・取得費:75万円(収入金額の5%で概算)
・譲渡費用:55万円(仲介手数料など)
これらの数字をもとに譲渡所得を計算します。
譲渡所得=1500万円-(75万円+55万円)=1370万円
所有5年超の不動産に適用される長期譲渡所得の税率は、所得税・住民税合わせて約20.315%のため、税額=1370万円×20.315%=約278万円になります。
しかし、特例を適用すると、譲渡所得1370万円から最大3000万円を控除できるため、課税所得はゼロになり、約278万円の税金を払う必要はありません。
特例の適用を受けるには確定申告が必要
特例の適用を受けるには、税額がゼロになる場合も含めて確定申告が必要です。相続した空き家を売却した翌年の確定申告期限までに、必要書類をそろえて申告しましょう。
親が亡くなると、葬儀や各種手続きに追われ、実家の売却や税金の手続きまで気が回らないのが実情ではないでしょうか。しかし、譲渡と確定申告の期限を過ぎると、要件を満たしていても特例は使えません。
気づいたときには遅かったということのないよう、いざというときに役立つ制度として覚えておきましょう。
出典
国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
総務省統計局 令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果
執筆者 : 小熊晋平
1級ファイナンシャル・プランニング技能士