サラリーマンが知っておきたい「課税所得を減らす方法」って?
配信日: 2020.04.21
今回は、サラリーマンが知っておきたい「課税所得を減らす方法」について、解説していきたいと思います。
執筆者:中村将士(なかむら まさし)
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー
私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。
課税所得を減らすには「所得控除」に注目
課税所得とは、税金(所得税)を計算するうえで対象となる所得のことです。この課税所得は、1月1日から12月31日までの1年間を対象としていますが、受け取った全ての所得(これを「総所得」と言います。
収入が給与だけであれば、総所得の額は給与所得の額と同じになります)を指しているのではなく、総所得から「所得控除」を差し引いた残りの所得のことを指します。つまり、課税所得を減らすためには、所得控除について知っておいた方が良いということになります。
所得控除は、全部で14種類あるのですが、その中で特にサラリーマンが利用しやすい控除として、「小規模企業共済等掛金控除」「寄附金控除」「医療費控除」「生命保険料・地震保険料の控除」の5種類を取り上げていきます。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除とは、小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛け金などを支払った場合には、その支払った金額全額について所得控除が受けられるというものです。
「個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)」がこれに当たります。サラリーマンの場合、勤務している企業の企業年金制度の種類や加入の有無によって掛け金の限度額が異なります。
例えば、企業年金が無い場合は月額2万3000円(年額27万6000円)まで、企業型確定拠出年金に加入している場合は月額2万円(年額24万円)まで、企業型確定拠出年金と確定給付企業年金に加入している、あるいは確定給付企業年金のみに加入している場合は月額1万2000円(年額14万4000円)までが、掛け金の限度額となります。
「個人型確定拠出年金iDeCo」は、掛け金が全額控除になるだけでなく、運用益が非課税になること、受け取るときも控除を受けられる(年金として受取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受取る場合は「退職所得控除」が適用される)というメリットがあります。
ただし、運用次第では元本を下回る可能性があること、60歳までは受け取ることができないことには注意が必要です。
寄附金控除
寄附金控除とは、個人が国や地方公共団体、特定の法人に寄付をした場合、確定申告を行えば、その金額から2000円を差し引いた金額が、寄附金控除として所得金額から差し引くことができるというものです。
「ふるさと納税」がこれに当たります。ふるさと納税は、自治体から、寄付のお礼として「お礼の品」も届きますので、お得感があります。ただし、「ふるさと納税」で控除される金額には上限があり、年収や家族構成によって異なるため、注意が必要です。
医療費控除
医療費控除とは、ご自身や生計を一にしているご家族の医療費を支払ったときは、その医療費から保険で補填した金額(生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など)と所得金額の5%(上限10万円)を差し引いた金額を、医療費控除として所得金額から差し引くことができるというものです。
ただし、医療費控除の対象となる医療費は、診療や治療の対価、治療や療養に必要な医薬品の購入の対価であり、人間ドックなどの健康診断や特定健康診査の費用は控除の対象とはなりません。
しかし、健康診断の結果、重大な疾病が発見され、引き続き治療を受ける必要があった場合や、特定健康診査を行った医師の指示によって一定の特定保健指導を受けたときには、健康診断や特定健康診査の費用も医療費控除の対象となります。
この「医療費控除」とは別に、「医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)」というものがあります。
これは、ご自身や生計を一にしているご家族の特定の医薬品を購入した場合において、ご自身がその年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取組として一定の健康診査や予防接種などを行っているときは、1万2000円を差し引いた金額(上限8万8000円)を、セルフメディケーション税制に係る医療費控除として所得金額から差し引くことができるというものです。
ただし、「医療費控除」と「医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)」は、選択制となっているため、どちらか一方を選択して控除を受けることになります。
生命保険料控除・地震保険料控除
生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払ったときは、最高12万円までを生命保険料控除として所得金額から差し引くことができます。地震保険料を支払ったときは、最高5万円までを地震保険料控除として所得金額から差し引くことができます。
まとめ
サラリーマンがこれらの控除を受けるためには、「小規模企業共済等掛金控除」「生命保険料控除・地震保険料控除」については、勤務先で所定の手続きをすることで年末調整のときに控除が受けられます。
一方、「寄附金控除」「医療費控除」については、確定申告をすることで控除が受けられます。もし、確定申告をしていなかったとしても、5年間は、確定申告をすることによって納め過ぎた所得税の還付を受けることができます。
課税所得を減らすということは、手取り収入が増えることや節税につながります。それだけでなく、控除を受けるために支払った掛け金や費用は、将来的にはご自身にとって大きな役割を担うものです。お金を有効に利用して、ご自身の夢を実現していきましょう。
出典
国税庁「所得税のしくみ」
国税庁「No.1135 小規模企業共済等掛金控除」
国税庁「寄附金を支出したとき」
総務省ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税のしくみ」
iDeCo公式サイト「iDeCoってなに?」
国税庁「医療費を支払ったとき」
国税庁「保険と税」
国税庁「No.2030 還付申告」
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー