給与所得とは? その1 ~事業所得との違い~
配信日: 2020.05.18 更新日: 2020.05.19
その1では、給与所得とは対照的な事業所得との違いを述べることで、給与所得の特徴を説明したいと思います。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
給与所得とは?
給与所得とは、勤務先から受ける給料、賞与などの所得をいいます。
給与とは何か?
「給与」とは、「雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき雇用主に従属して非独立的に提供した労務の対価として雇用主から支払を受ける給付など」から生じる所得をいいます。
それが定額給であるか出来高払い給であるか、あるいは基本給であるか、勤務地手当・扶養手当・超過勤務手当など各種手当であるかを問わず、給与の性質を有するものは給与所得となります。
一方、事業所得とは「自己の危険(=リスク)と計算において、独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して営まれる経済活動」から生じる所得です。事業所得が「独立的」な事業活動によるものであるのに対し、給与所得は雇用主との雇用契約に「従属した」ものであることになります。
給与は役務提供により受け取るものですが、その中でも使用者と労働者間の「雇用契約」、または、法人と役員間の「委任契約」に基づき受け取るものが、給与所得となります。
[役務提供に係る契約形態と各種所得の関係]
契約形態によって所得の種類が異なるので、それぞれの契約形態を説明すると次のようになります。
「雇用契約」とは、当事者の一方(労働者)が相手方(使用者)に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対して報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる契約をいいます(民法第623条)。
そして、この「雇用契約」によって生じるものを「給与所得」といいます。
「委任契約」とは、当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方(受任者)に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約をいいます(民法第643条)。例えば、商品の販売委任契約などです。
「委任契約」の対象は、準委任契約も含めると法律行為・法律行為以外の事務などで、受託者は仕事の結果ではなく仕事を行う過程に対して責任を負います。弁護士・税理士・塾講師・コンサルタントなどがそれにあたります。
「委任契約」によって生じるものを「事業所得」「雑所得」といいます。
ただし法人と法人の役員間は委任関係にありますが、役員が法人から支払いを受ける報酬などは、給与の性質を有するものとして「給与所得(役員報酬)」となります。
「請負契約」とは、当事者の一方(請負人)がある仕事を完成することを約し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことに同意することによって、その効力を生ずる契約をいいます(民法第632条)。例えば、建物の建築請負契約などです。
「請負契約」の対象は製品の製造や建物の建築などで、請負人は仕事の過程ではなく仕事の結果に対する責任を負います。「請負契約」によって得られる報酬は、「事業所得」又は「雑所得」です。
まとめ
その1では給与所得の特徴を事業所得と対比して説明しました。その2では、給与所得の課税形態について説明したいと思います。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー