1個130円のモノを2個買ったら261円取られた。どうしてそうなるの?

配信日: 2021.01.18

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1個130円のモノを2個買ったら261円取られた。どうしてそうなるの?
先日、不思議な体験をしました。コンビニである商品を購入したのですが、表示価格は税込み130円。
 
これを2個持ってレジに進んだところ、請求されたのは261円でした。これって、おかしくないのでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

130円のモノを2個買うと261円になるワケとは

どうして、そうなるのか。これは消費税のせいです。もう少し状況を詳しく説明すると、この商品の陳列棚には[本体価格119円(税込み130円)]と価格表示されていました。(軽減税率が適用されない消費税率10%の商品です)
 
次のように書いて整理してみると、確かに2個では税込み261円になりますね。
◇1個買う場合: 税別119円+消費税11円(1円未満切り捨て)=税込み130円
◇2個買う場合: 税別238円+消費税23円(1円未満切り捨て)=税込み261円
 
1個ならば消費税の端数[0.9円]は単純に切り捨てされるのに、2個だと端数は[0.9円×2=1.8円]と積み上がり、このうち0.8円は切り捨てされますが1円の部分は切り捨てにならないというわけです。
 
この話をしたら、「1個ずつ2回に分けてレジで支払いをすれば1円安く買えたのにねえ……」と家人に笑われましたが、端数処理が直感とは違った結果をもたらすエピソードでした。
 
税抜価格に消費税相当額を上乗せする際に1円未満の端数が生じる場合、どのように処理(切り捨て、切り上げ、四捨五入)をして税込み価格を設定するかは、事業者ごとの判断となっています(※1)。
 

「数円」程度の範囲に収まらない端数処理もある

コロナ禍における政府の景気対策の1つである「Go To トラベル事業」のように、ルールによっては「数円」程度ではない大きな数字の差をもたらす端数処理もあることは、以前に書いたとおりです。
 
給付上限内であれば旅行代金の35%分が直接割引されるとともに、15%分の地域共通クーポンがもらえる仕組みで、割引は1円単位でされます。一方、クーポンは500円単位での四捨五入で金額が決まります。
 
以前にも例示しましたが、同じような内容の日帰りバスツアーで旅行代金が[A社9900円、B社1万円]の場合。
 
1万円の大台を切ったA社のほうが一見おトクそうですが、クーポンの付与額は実は[A社1000円、B社2000円]と大違いで、表面の価格差100円や直接割引額の差35円は、あっという間に逆転されてしまうのです。
 

かつては1円単位ではなかった年金の端数処理

端数処理は“決めの問題”で、切り捨て、切り上げ、四捨五入、どうするかはルール次第です。
 
「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」では、債務の支払金について50銭未満の端数は切り捨て、50銭以上1円未満の端数は切り上げて1円としています。ただし、特約があるときはそれに従います。
 
また、国や公庫等が受け取りや支払いをする場合は、「国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律」に切り捨てや切り上げが定められています。
 
このほかにも身の回りのいろいろなシーンそれぞれで、法律などによって端数処理の方法が決められています。
 
その中で公的年金では、平成27(2015)年10月からの被用者年金制度の一元化(厚生年金に公務員・私学教職員も加入して一本化)がされた際に、年金給付額の端数処理のルールが次のように改正されています。
 
(旧) 100円未満四捨五入
(50円未満は切り捨て、50円以上100円未満は100円に切り上げ)
(新) 1円未満四捨五入
(50銭未満は切り捨て、50銭以上1円未満は1円に切り上げ)
 
公的年金は、毎年2・4・6・8・10・12月の6期にそれぞれ前月までの分が支払われます。上記の改正と同時に、毎年3月から翌年2月までに切り捨てられた額の合計額(1円未満切り捨て)が2月支給分に加算して支給されることになりました。
 

まとめ

多くの場合、端数処理の対象は1円未満や10円未満などの金額帯です。端数処理をしてもしなくても大した差は発生しないイメージが強いのですが、端数処理のルール自体が問題視されるケースも、ないことはありません。
 
先述の公的年金で2月期にそれまでの端数処理分を加算する改正がされる前のことですが、年金額と実際の支給額の差額(年6回支給時に各回に1円未満が切り捨てられるため発生)の支払いとその計算ルールの是正を求めた訴訟がありました(※2)。
 
この訴訟で請求された差額は6円で、判決は原告敗訴でした。この訴訟と、2月期での端数処理分加算が制度化されたことの関係は定かではありませんが、端数処理では「たかが1円、されど1円」となる側面もあるようです。
 
[出典]
(※1)財務省「消費税、酒税など(消費課税)」~「総額表示に関する主な質問」 (Q9)と(答)
(※2)最高裁判所「行政事件 裁判例集」~「事件番号:平成21(行ウ)6、事件名:年金支払等請求事件、裁判年月日:平成21年10月21日、裁判所名:名古屋地方裁判所」 判決全文は添付のPDFファイル参照
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士
 

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