更新日: 2021.01.25 その他税金
年金を受け取る前に知っておきたい! 年金にかかる税金のこと
また2018年度税制改正により、2020年分から公的年金等控除などが見直されました。そこで、年金収入がある場合にはどのように税金がかかるのかを見ていきたいと思います。
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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所得税の計算では雑所得の扱いとなる年金
所得税を計算するとき、収入はまず以下の10種類の所得に分類されます。所得の種類に応じて所得税の計算方法が異なります。
所得の種類 | 内容 |
---|---|
利子所得 | 公社債、預貯金の利子などの所得 注:源泉分離課税が原則 |
配当所得 | 利益の配当、剰余金の分配、投資信託の収益分配などによる所得 |
事業所得 | 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの事業による所得 |
不動産所得 | 不動産、不動産上の権利や船舶・航空機の貸し付けによる所得 |
給与所得 | 給与、賃金や賞与による所得 |
一時所得 | 一時的な所得で労務など資産の譲渡の対価によるものではない所得 |
譲渡所得 | 資産の譲渡による所得 注:特定のものは分離課税 |
山林所得 | 山林の伐採または譲渡による所得(5年超のもの) 注:(申告)分離課税 |
退職所得 | 退職手当およびこれらの性質を有する給与による所得 注:(申告)分離課税 |
雑所得 | 上記各種所得以外の所得 |
※筆者作成
年金は上記所得のうち、表の最後にある雑所得に分類されます。雑所得とは他の9つの所得のいずれにも該当しない所得です。年金収入から雑所得を求める計算は、その年金が公的年金等に該当するかしないかで、以下のように分けて計算します。
1.公的年金等に該当する年金
対象:国民年金、厚生年金、確定給付企業年金、確定拠出企業年金など
計算:その年の上記年金収入金額-公的年金等控除額※
※以下の公的年金等控除速算表を参照
2020年分から公的年金等控除・給与所得控除および基礎控除が見直されました(基礎控除が一律10万円引き上げられた代わりに給与所得控除・公的年金等控除がそれぞれ一律10万円引き下げられることになりました)。
その結果、2020年分から公的年金等収入以外の合計所得が1000万円以下の人の公的年金等控除額は以下のようになっています。
・年齢65歳未満の人(公的年金等収入以外の合計所得が1000万円以下)
公的年金等の収入金額 | 公的年金等控除額 |
---|---|
130万円以下 | 60万円 |
130万円超 410万円以下 | 収入金額×25% + 27万5000円 |
410万円超 770万円以下 | 収入金額×15% + 68万5000円 |
770万円超 1000万円以下 | 収入金額×5% + 145万5000円 |
1000万円超 | 195万5000円 |
・年齢65歳以上の人(公的年金等収入以外の合計所得が1000万円以下)
公的年金等の収入金額 | 公的年金等控除額 |
---|---|
330万円以下 | 110万円 |
330万円超 410万円以下 | 収入金額×25% + 27万5000円 |
410万円超 770万円以下 | 収入金額×15% + 68万5000円 |
770万円超 1000万円以下 | 収入金額×5% + 145万5000円 |
1000万円超 | 195万5000円 |
※筆者作成
なお、公的年金等収入以外の合計所得が1000万円超の人は上記表の公的年金等控除額からさらに以下の金額を引いた数字となります。
公的年金等収入以外の合計所得が1000万円超2000万円以下 | 10万円 |
公的年金等収入以外の合計所得が2000万円超 | 20万円 |
2.公的年金等に該当しない年金
対象:個人年金保険契約、生命保険契約、生命共済契約などの年金など
計算:その年の年金収入金額 – 必要経費※
※必要経費は以下の計算式により求めます
年金の額×(保険料の支払総額÷年金保険金の総額または見積額)
上記の1と2で求められた金額の合計と、他にも年金収入以外の収入で雑所得となるものもあればそれらも合算した金額が雑所得として総合課税され、他の総合課税対象の所得とともに総所得金額に含まれます。
所得税は、総所得金額からさらに基礎控除や扶養控除などの人的控除や社会保険料控除、生命保険料控除などにより所得控除された課税所得に税率を掛けて求められます。そして求められた所得税からは、さらに税額控除(住宅ローン控除など)ができる場合があり、その場合は所得税が軽減されます。
所得税がかからない人も
先に見てきましたように、所得税の計算では収入からいろいろなものが引かれた上で所得税が求められていることが分かります。そのため、収入よりも引かれるものが多ければ所得税がかからないことになります。
例えば公的年金である厚生年金の月13万円だけが収入となっている70歳の人のケースで計算してみましょう。(ここでは簡易的に基礎控除以外の社会保険料控除などの所得控除は考慮しません)
公的年金収入 | 年156万円(月13万円×12ヶ月) |
公的年金等控除額 | 110万円 (公的年金等の収入が330万円以下で年齢が65歳以上) |
基礎控除 | 48万円 |
課税所得=公的年金収入156万円-公的年金等控除額110万円-基礎控除48万円
課税所得が0円以下のため、所得税はかかりません。
住民税と所得税の違い
年金収入があれば所得税以外にも住民税が発生する可能性があります。個人の住民税の計算の基本的な仕組みは所得税と同じですが、所得税は1年間の所得に対してその年に課税されるのに対し、個人の住民税は前年1年間の所得に対して課税されます。
税額を求める上での所得税との違いは税率や控除額が異なることです。また、個人が納付する住民税は所得に応じて負担する「所得割」の他、広く均等に負担する「均等割」があり、それらを合算したものになります。
そのため、所得税は課税されていないのに、住民税は課税される場合があります。その要因としては、所得税と住民税での所得控除額の違いがあげられます。一般には所得税における所得控除額が、住民税における所得割額よりも大きくなっています。
よって、所得税においては、所得額を所得控除額が上回っていても、住民税においては下回るため課税の対象となる金額が残り、所得割と均等割が課税されることがあります。
先ほどの所得税がかからないケースを住民税の計算で見た場合は、基礎控除が住民税の計算上では43万円となり、課税所得として3万円が残ることになります。
まとめ
これまで年金にかかる所得税・住民税を見てきましたが、年金でも障害年金や遺族年金は非課税となります。
また、公的年金等の税金は源泉徴収がされますが、生命保険料控除や医療費控除などの所得控除の適用を受けたい場合や、年金以外の収入がある場合には、所得税の確定申告により税額が確定しますので、所定の期間に確定申告が必要となります。
なお、公的年金等の収入金額が400万円以下で、公的年金等以外の所得(収入から経費を差し引いたもの)が20万円以下の人は、「確定申告不要制度」によって確定申告は不要となります。
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)