妻は年齢63歳の専業主婦です。年金制度が変わり遺族年金が「有期給付」になったと聞いたのですが、そもそも妻が専業主婦の場合でも受け取れるのでしょうか?

配信日: 2025.12.30
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妻は年齢63歳の専業主婦です。年金制度が変わり遺族年金が「有期給付」になったと聞いたのですが、そもそも妻が専業主婦の場合でも受け取れるのでしょうか?
2028年4月に、遺族厚生年金が見直される予定です。「遺族厚生年金が有期給付になる」と聞いて、不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

そこで本記事では「遺族厚生年金はどう変わるのか?」「妻が専業主婦の場合でも遺族厚生年金を受け取れるのか?」について解説します。遺族厚生年金の見直しは女性だけでなく男性にも関係しますので、ぜひ最後までお読みください。
中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

遺族厚生年金はどう変わるのか?

現在の遺族厚生年金の受給対象者は、死亡した方に生計を維持されていた以下の遺族です。
 
(1)子のある配偶者
(2)子
(3)子のない配偶者
(4)父母
(5)孫
(6)祖父母
 
この場合の「子」「孫」とは「18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方で、婚姻をしていない方」をいい、「夫(配偶者)」「父母」「祖父母」については「55歳以上であること」を条件としています。
 
遺族厚生年金の受給権は、原則として受給権者が「死亡」「婚姻」「親族関係の終了」などにより消滅します。しかし、受給権者が「30歳未満の子のない妻」であるときは、受給開始から5年を経過すると受給権は消滅します。
 
今度の改正のポイントを一言でいえば、「遺族厚生年金の男女差の解消」です。現在の遺族厚生年金は、配偶者の死亡時の状況により、男女で以下のような違いがあります。
 

・子のある妻:受給できる
・子のある夫:55歳以上なら受給できる(受給開始は60歳から)
・子のない妻:受給できる(30歳未満なら5年間のみ受給できる)
・子のない夫:55歳以上なら受給できる(受給開始は60歳から)

 
今度の改正の対象は「子のない配偶者(夫・妻)」であり、「子のある配偶者」についての変更はありません。改正後は、以下のように変わります。
 

・子のない配偶者:受給できる(60歳未満なら原則5年間)

 

妻が専業主婦の場合でも遺族厚生年金を受け取れるのか?

今度の改正を別の角度から見ると、以下のようになります。
 

・妻の5年間の有期給付:「30歳未満」から「60歳未満」に変更
・妻の無期給付:「30歳以上」から「60歳以上」に変更
・夫の5年間の有期給付:「60歳未満」で新設
・夫の無期給付:変更なし(「55歳以上で受給権発生」は消滅)

 
このことから、「30歳未満の子のない妻」と「60歳以上の子のない夫・妻」は、今度の改正による影響を受けないことが分かります。ただし、妻に関する改正は、2028年4月から20年かけて段階的に実施される予定とされています。改正直後に5年間の有期給付の対象となるのは、「2028年度末時点で子のない40歳未満の妻」です。
 
さて、「(63歳の)妻が専業主婦の場合でも遺族厚生年金を受け取れるのか?」という点については、「受給要件を満たしているなら無期給付を受けられる」といえます。「専業主婦の妻」は、先に挙げた受給対象者のうち、「(生計を維持されていた)子のない配偶者」に該当すると考えられます(「子のある配偶者」と考えることもできますが、そこは問題ではありません)。また、「63歳」であれば、2028年4月以降の遺族厚生年金制度改正の影響を受けずに「無期給付」を受けることができます。
 
あとは遺族厚生年金の受給要件を満たしているかどうかで判断しますが、この解説は本記事の趣旨ではないため、割愛させていただきます。したがって、結論としては「受給要件を満たしているなら無期給付を受けられる」となります。
 

まとめ

本記事では「遺族厚生年金はどう変わるのか?」「妻が専業主婦の場合でも遺族厚生年金を受け取れるのか?」について解説しました。まとめると、以下のとおりです。
 

・遺族厚生年金は、2028年4月から「子のない配偶者」における男女差が解消される
・妻が専業主婦の場合でも受給要件を満たしているなら無期給付を受けられる

 
遺族厚生年金が「有期給付」になるといっても、全ての遺族厚生年金が有期給付になるではなく、場合によっては無期給付を受けられます。また、これまで「子のない夫」は55歳以上でなければ遺族厚生年金を受け取れませんでしたが、改正により55歳未満であっても有期給付を受けられるようになります。
 
今度の改正の影響を受けるのは「子のない配偶者」ですが、60歳以上であればこれまで通り無期給付を受けられます。ライフプランを立てるうえで、制度への理解は欠かせません。本記事が、少しでもお役に立てば幸いです。
 

出典

日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて

デジタル庁 e-Gov法令検索 厚生年金保険法

 
執筆者 : 中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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