退職金「1200万円」手にした父が、銀行に「インド株」をすすめられた! 高成長が見込めるそうですが、本当に大丈夫ですか? インド株の“魅力とリスク”とは

配信日: 2025.10.21
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退職金「1200万円」手にした父が、銀行に「インド株」をすすめられた! 高成長が見込めるそうですが、本当に大丈夫ですか? インド株の“魅力とリスク”とは
インド経済の高成長は目覚ましく、2026年にはGDPが日本を抜いて世界4位となる見通しです。20年以上前からBRICSの一角として世界の経済成長をけん引してきたインドですが、個人の投資先としてはどうでしょうか。
 
金融機関でもインド関連の金融商品は多く扱われており、退職金などまとまったお金を手にして、インド株への投資を考えているという人もいるかもしれません。
 
本記事では、インド株の魅力とリスクについて最新情報をお伝えします。
掛川夏

2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種

これまでの上昇要因と下落要因

インド株式市場は、この20年間で10倍強まで上昇しました。特に2020年ごろから急激な上昇が続き、主要株価指数SENSEXは2024年9月に過去最高値を記録しています。しかし、その後は下落傾向に転じ、2025年3月から4月にかけて特に大きく下落したあと、5月以降は上昇基調にあるものの不安定です。
 
長く上昇基調が続いている理由は、2014年から現在まで続くモディ政権が比較的安定していることが挙げられます。
 
経済面では、そのモディ首相による経済政策「モディノミクス」のもと、製造業の振興策などが奏功したことが大きいとされています。また、「デジタル・インディア」計画に基づきデジタル経済が拡大してきたことも、市場の成長を後押ししてきました。
 
一方、2024年からの下落要因としては、主要企業の四半期決算数値の悪化や、慢性的な経常赤字と財政赤字によるルピー安が続いたことで物価が上昇し、金融引き締め傾向が広がったため、これが企業にとってマイナス材料となり株価下落を招いたと考えられます。
 

中長期視点では世界平均を上回る高成長

ただし、インド経済は中期的には引き続き成長トレンドにあると言えるでしょう。2025年8月にはインドの外貨建て長期信用格付が18年ぶりに引き上げられました。株式市場の不安があるにせよ、コロナ禍以降の力強い経済成長や財政健全化の進展、金融政策の信頼性向上などが評価された形と言えます。
 
実際、コロナ禍以降のインドの経済成長率は、米国や中国を含めた世界全体を上回っています(図表1)。今後5年間の予測値でも同じ水準での成長が見込まれており、2030年の経済成長率予測値は6.5%とされています。
 
先進国を中心に緩やかな成長鈍化が見込まれ、世界全体での成長予測も3.1%にとどまるなか、インドは中期的に見ても高い成長率が予測されており、株式市場も相応の上昇が期待されます。
 
図表1

図表1

IMF World Economic Outlook(April 2025) のデータに筆者加筆
 

米中関係などリスクも依然多い

しかし、今後の市場環境には不透明な要素、すなわちリスクも存在します。今年8月には米国がインドからの輸入品に最大50%という世界最高水準の関税を課しました。インド経済全体、とりわけ強みとされるITサービス産業が受ける打撃も深刻なことが予測されます。
 
隣国中国とは、経済分野を中心とした関係改善が進みつつあるものの、国境問題など一筋縄ではいかない複雑な関係が続いています。また米中以外にも、隣国パキスタンやロシアとの地政学的な問題も複雑に絡まり、インド市場の予測を難しくしています。
 
こうした局面でもモディ首相は国民の人気が高く、モディ1強体制を続けていますが、現在75歳と高齢で、「ポスト・モディ」が育っていないと指摘する向きもあります。モディ氏が退陣した際には派閥争いなどで政局が不安定化し、市場にもマイナスの影響を及ぼすことが懸念されます。
 

米国市場とは連動性が低くリスク分散先になりえる

このように、インド株式市場は世界的に見ても中期的に高い成長が見込まれるものの、不透明感も高くリスクも存在します。
 
仮に、銀行など資産の預け先からインド株の購入を提案された場合、それはすでに保有している国内や米国関連資産に対するリスク分散の意味合いがあるかもしれません。インド株の成長ドライバー(成長をけん引するもの)は個人消費をはじめとした内需の拡大です。
 
米国をはじめとしたハイテク関連銘柄の成長ドライバーである技術革新とは異なる性質を持つため、「共倒れリスク」はゼロではないものの、例えば日米株を併有する場合よりも低いと言えます。
 

まとめ

インドを投資先とする場合は、短期ではなく中長期での保有を前提に、余裕資金の範囲内で始めるのがおすすめです。「気長にインド経済の成長を見守る」程度のゆとりを持つのがよいかもしれません。
 
個別銘柄ではなく、Nifty50やSENSEXといったインデックスに連動する投資信託やETFもあり、それらの一部は新NISAの対象にもなっているので検討してみるのもよいでしょう。
 

出典

IMF World Economic Outlook (April 2025)
IMF DataMapper
 
執筆者 : 掛川夏
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種

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