更新日: 2020.06.10 その他資産運用

金利の動きは複雑。コロナショックで変わる金利と日常への影響

金利の動きは複雑。コロナショックで変わる金利と日常への影響
金融や経済については、なんだか難しくてよく分からないという印象を持たれる方は多いような気がします。それも無理はありません。さまざまな事柄が複雑に絡み合ってできているのが、金融経済の世界だからです。
 
しかし、私たちの生活の中では、いつも身近に金融経済が存在します。「お金を貯めたい、どこに預けようかな」。「住宅ローンを借りたい、どこで借りようかな」。
 
これらの疑問は、別の視点で見ると、どの銀行の金利が自分にとっていいかを判断したいという気持ちの表れです。
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

コロナショックから考える金利の受け止め方

2020年2月に始まった新型コロナウィルスによる金融経済危機ですが、このショックは金利にも大きな影響を及ぼしています。
 
アメリカの中央銀行とされるFRB(米連邦準備理事会)は、2020年3月15日、米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、FF(フェデラルファンド)レートの誘導目標を1%引き下げ、政策金利を0.00から0.25の幅にさらに引き下げるという決断をしました。
 
このニュースは、マーケットにとって非常にインパクトのある内容でした。その理由は、アメリカの金利が事実上、ゼロ金利になることを意味しているからです。
 
金利は、私たちの日常生活にとても大きな影響を及ぼします。金利が低くなると、例えば、住宅ローンを借りるときの金利も下がるため、新規で借り入れを起こす方にとっては有利に働くでしょう。
 
また、企業を営む経営者にとっても、事業を継続するのに必要な融資を受けるに際し、金利が低いとそれだけ返済負担が減り、事業のランニングコストが軽くなります。
 
ニュースは、景気の減速を食い止めようとする金融当局の積極的な姿勢と受け止められます。少し難しいかもしれませんが、マネーリテラシーは、このようなニュースに触れた場合に、自分でどのような結論を導き出せるかといったインテリジェンスの基礎を提供してくれるものです。

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金利の動きと貯蓄性のある保険との関係性

このニュースに歩調を合わせるように、2020年3月16日、日銀の金融政策決定会合が急遽開催されました。
 
そこで決められたのが、ETF(上場投資信託)の買い入れ目標額を6兆円から12兆円に倍増させること、不動産投資信託(REIT)の購入目標を年900億円から年1800億円に引き上げ、CP(コマーシャルペーパー)と社債の買い入れ額をそれぞれ1兆円追加すること、中小企業に対し、無利子で資金を融資することの3つが柱です。
 
ただ、この時点では、日銀は利下げを行わず、政策金利を現行のマイナス0.1%/年にとどめるとしました。
 
ここまでの内容を理解するのはかなり周辺知識が必要になるため割愛しますが、日本の場合、アメリカと違い、政策金利の引き下げ余地がほぼないため、直接、金利を引き下げるのではなく、市場で流通している投資信託を買い入れ、資金を供給したり、企業に対し無利子で資金を貸し付けたりといった方法でこの難局を乗り切ろうとしています。
 
アメリカにしろ、日本にしろ、金融緩和政策を果敢に実行するというメッセージが込められていますが、これらの内容を私たちの身近な生活に落とし込んでいくと、次のような連想ができるかもしれません。
 
会社の売上や利益が落ちるかもしれない。自分のお給料が一時的に減るかもしれない。自分で運用している資産価値が目減りするかもしれない。そして、金利が下がっていくため、今契約している貯蓄性のある保険が近々満期になり、途中解約をすると、予定されていた利率で利益を得られなくなるケースもあります。
 
約款などで詳細を確認した方がいいですが、このとき、冷静に対処するか、慌てふためくかで進路が違ってきます。仮に冷静に対処しようという場合、金利の状況がどのようになっているかを調べようとするかもしれません。
 
一般的に、貯蓄性のある保険は、10年物国債の利回りを参考に適用利率が設定されます。10年物国債の利回りをチャートで確認していくことになりますが、確かに猛スピードで急落しているのがわかります。
 
例えば、日本の10年物国債の利回りは2020年1月、一時的に0.00%/年を回復しました。それがコロナショックを受けて、マイナス0.141%/年にまで急速に低下しています。世界経済の減速が懸念され、国債が買われたことが原因ですが、その後、利回りは回復し、2020年3月16日時点で0.024%/年まで回復しています。
 
国債の利回りが回復したのは、国債が売られたからですが、通常なら、金融危機のときは国債が買われ、利回りは下がります。
 
しかし、なぜ、そうなっていないのかの答えを知るには一定のマネーリテラシーが必要になってきます。理由は、国債を売ってまでも現金化する必要があるからです。
 
それだけ、資金需要がひっ迫しているという意味ですが、究極的な金融危機の際はこのような動きになるため、通常の法則が通じないことがあります。結果、私たちはどのように振舞えばいいか。先ほどの貯蓄性のある保険でいうならば、約款などを確認し、保険会社に問い合わせをしてみることです。
 
そのうえで、問題がなければそのままでいいでしょうし、問題があるならば、どのように見直せばいいかを検討していくことになります。

まとめ

金融経済については、理解するには相応の努力が必要になります。基礎的な知識や情報の組み立て方などを、経験を通じ身につけていくことになります。一般の方がそのような労力や手間をかけるのは難しいかもしれません。
 
ただ、今回のような異変が起こった場合、特に、平時よりも変化が大きく目立つため、「何かおかしい」と気づきやすいともいえます。
 
このようなときは、専門家などに質問する機会を持つのと、持たないのとでは、マネーリテラシーの身につき方に大きく違いが出ます。
※この記事は、2020年3月17日に執筆しています。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)


 

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