更新日: 2020.08.17 その他資産運用
長期投資の意味は、長く持つことではなく、投資を続けるということ。
どうしてなのかは分かりませんが、いつの間にか長期投資が株式や投資信託などを長く保有するという意味になっていて、本来の意味とは違った形で使われていることに少し違和感を持っています。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
長期投資は投資を続けるという意味
長期投資とは本来、「投資を続ける」という意味です。逆に短期投資は、「投資を続けない」という意味です。
長期投資と短期投資は、単純にこのような反対語にすぎないため、素直に地の意味を理解すればいいだけですが、今では、長期投資が「投資はなるべく長く銘柄を保有しましょう」、短期投資は「リスクが高いので怖いものです」といった意味にすり替えられています。
○日経平均株価指数(1965年1月5日~2020年6月12日)
※筆者作成
このチャートは1965年1月5日から2020年6月12日までにおける日経平均株価指数の推移ですが、なるべく長く銘柄を保有しましょうという意味で使われる長期投資を前提にこのチャートを見ると、例えば、バブル崩壊のころに株式を買った場合、長く保有し続けてしまったため、結果として現在に至っても損失を回復できない状況に陥っていることが分かります。
一方、投資を続けるという意味で長期投資という言葉を使う場合、必ずしも銘柄を長く保有することが前提になっているわけではないため、例えば、バブル崩壊時に銘柄を保有していたとしても売る決断ができ、また状況を見ながら下値で買い付けを行う判断もできます。
このようなことから、資産運用ではなるべく長く銘柄を保有することが重要ではなく、状況を見ながら長期間投資を続けることにより価値があるということができます。
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長期投資という言葉が変わったのはなぜ?
なぜこのような言葉の勘違いが起こるのでしょうか。
実務をしていて思うことは、国の政策として確定拠出年金制度やNISA(少額投資非課税制度)が始まり、資産運用を身近なものと捉えてもらう必要があるため、その結果、安定性を強調せざるをえなくなったからのように思えます。
確定拠出年金制度にしろ、NISA(少額投資非課税制度)にしろ、共通するのは「税の優遇」です。
確定拠出年金制度では、掛金が小規模企業共済等掛金控除により所得控除され、売却益などに対しては非課税、また受取時には退職所得控除や公的年金等控除が適用されます。
NISA(少額投資非課税制度)では、毎年一定の非課税枠があり、その金額までなら売却益などに対し税金がかからないようになっています。
このような税の優遇を適用させてでも「貯蓄から投資へ」の流れに家計のお金を乗せていく必要があったわけですから、リスクではなく安全性・安定性を強調するようになったのも無理のないことかもしれません。
家計のお金を投資に回すにはどのような運用方法が理解されやすいだろうか。
「長期投資」
なるべく長く銘柄を保有し続ければ、結果として積立効果と福利効果で資産が増えていく。
このように表現すれば、リスクよりも安全性・安定性を強調できるため、多くの人が老後の生活などを目的にお金を投じてくれるだろう……。
その結果、長期投資という言葉の意味は、本来の「状況を見ながら長期間投資を続ける」という意味から「なるべく長く銘柄を持ち続けていればいい」という曲解になってしまったように思います。
まとめ
冒頭の日経平均株価指数のチャートは、なるべく長く銘柄を持ち続けていればいいという考え方が間違いであることに気づかせてくれます。
相場は本来揺れ動くものです。
このため、長期投資を行う場合、原則として状況を見ながら保有銘柄を売買したり、入れ替えたりと臨機応変に対応していく必要があります。
これを理解した上で資産運用をやるのとやらないのとでは大きな違いがあります。
少なくとも理解した上で資産運用をしているなら、仮に損失が出ても自分で納得できるでしょう。
しかし、分からずにやっていると、なぜ損失を被ったのかすら自分で答えを見つけるのが難しくなるかもしれません。
貯蓄から投資へ、貯蓄から資産形成への流れの中に私たちの人生はすでに組み込まれています。
資産運用の習慣がない人にとっては急にその世界に投げ込まれるためどうしたらいいか分からないというのが本音のように思います。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)