更新日: 2024.10.10 ライフプラン
育児休暇からの復帰!仕事復帰をするママが知っておきたい社会保障制度とは
そこで、時短勤務で仕事復帰をするママに知っておいていただきたい社会保障制度があります。
それは、将来の年金受給額を減らすことなく、今支払う厚生年金保険料の支払い額を下げることができるという制度です。
2枚の書類を会社に出することによってこの制度を利用できるので、詳細をお伝えしたいと思います。
Text:前田菜緒(まえだ なお)
FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士
保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)
支払う厚生年金保険料を減額させる手続き
この手続きができる条件は、
1. 育児休業終了日に3歳未満の子を養育している
2. 育児休業終了日の翌日から3カ月間、17日以上勤務した月が1カ月以上ある
3. 休業前の標準報酬月額と復帰後の標準報酬月額に差がある
この3つです。
この条件をクリアしていれば「育児休業等終了時報酬月額変更届」という書類を会社に提出することで手続きができます。
3番目の条件である「標準報酬月額」とは聞き慣れない言葉だと思います。これは何かというと、厚生年金保険料決定の元となる基準値です。
産休前はフルタイムで働き、育休終了後は時短勤務となれば、当然ながら給料は下がります。にもかかわらず、厚生年金保険料は休業前の標準報酬月額により決定されます。給料は下がったのに保険料は高いまま、負担が大きいという状況です。
そこで「育児休業等終了時報酬月額変更届」を会社に提出することで、保険料を時短勤務の給料に即した金額に変更できるのです。
そもそも厚生年金保険料は、4、5、6月の平均給与額を「保険料を決定させる表」に当てはめて、標準報酬月額を割り出し決定されます。決定された保険料は、その年の9月に改定され翌年8月まで適用となります。
しかしこの変更届を提出すれば、9月の改定を待たずに、育休終了後4カ月目から保険料が改定されます。なぜ4カ月目からなのかというと、育休終了後から3カ月間の給料平均額に基づき標準報酬月額を算出するためです。
なお、3カ月間のうち勤務日数が17日未満の月があれば、その月を除いて平均額を計算します。例えば、4月25日に復帰した場合、4月の給料は計算に含めず、5月と6月の給料の平均額に基づき、7月分からの標準報酬月額が改定されます。
しかしこれは、7月の給料から厚生年金保険料が変更になる。ということではありません。会社の締め日にもよりますが、変更された保険料が給料に反映されるのは、一般的に改定月の翌月です。
7月分の保険料は8月給与で反映される場合が多いと思います。なお、この制度は厚生年金だけでなく、健康保険にも適用されます。
将来の年金額を減らさないために
ところで、支払う厚生年金保険料が少なくなるということは、将来もらう年金額も少なくなるということでしょうか。その点は、安心してください。
子どもが3歳までの間、時短で働き、標準報酬月額が低くなった場合「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」を会社に提出することで、子どもが生まれる前の標準報酬月額に基づく年金額を受け取ることができます。
つまり時短によって、支払う厚生年金保険料が減っても、将来もらう年金額は減らないという、とても優遇された制度なのです。
自分から申し出しないといけない
これらの書類は、基本的に「被保険者からの申し出を受けた事業者が」日本年金機構に提出します。つまり被保険者からの申し出がなければ提出不要ということです。大変優遇された制度ですから、ぜひ申し出をしてください。
仕事復帰の際、会社からさまざまな書類が配布されると思います。この2種類の書類が含まれているかどうか、チェックしてみてください。もし、会社から書類の配布がなければ、日本年金機構のホームページから書類をダウンロードできます。
http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-kankei/menjo/20130508.html
なお「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書」の提出要件に、育休を取得しているかどうかは関係ありません。男性でも要件が合えば届出ができますから、夫婦そろって届け出ることが可能です。
Text:前田 菜緒(まえだ なお)
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP(R)認定者