更新日: 2024.10.10 働き方

同一労働同一賃金とは? 働き方改革で何が変わったの?

同一労働同一賃金とは? 働き方改革で何が変わったの?
2020年4月1日から働き方改革の3本目の柱である、「同一労働同一賃金」が大企業からスタートしました。中小企業は1年遅れの2021年4月となっています。
 
しかし、早くから準備することで、事業主、従業員も安心して働くことができると思います。実際どのように変化するのでしょうか? それには働き方改革について確認する必要があります。
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

なぜ働き方改革が必要?

日本人の平均寿命は延び、人生100年時代といわれるなか、少子高齢化が加速化しています。日本の労働力人口の減少が懸念されるなか、高齢者や女性に注目が集まりました。
 
高齢者は健康寿命を延ばし、生きがいや豊かなセカンドライフなどのため、女性は出産、介護などにより、離職せず、働き続けることができるなど、新たな労働力人口を伸ばし、労働生産性を向上するための社会づくりが進んでいます。

そもそも働き方改革とは?

働き方改革とは、正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。労働者がそれぞれの事情に応じた、多様な働き方を選択できる社会を実現するために整備されています。
 
多様で柔軟な働き方の実現として、具体的な3本の柱は次のとおりです。
 
2019年4月から「長時間労働の是正」(中小企業は2020年4月)
        「年次有給休暇の時季指定(5日取得)」
2020年4月から「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(同一労働同一賃金)」(中小企業は2021年4月)

 
今回は2020年4月から本格施行した、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保として、同一労働同一賃金についてお伝えします。

同一労働同一賃金とは?

正社員と非正規雇用労働者(短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)との関係について例をもとに考えてみましょう。
 
短時間労働者であるAさんは、ある企業の本社において、隣の席に座って仕事をしている正社員Bさんと同じ業務内容の仕事をしています。万が一、お客さまから苦情があれば、AさんはBさんと同じように対応しています。
 
しかし、短時間勤務であるAさんと正社員のBさんの給与も福利厚生も違います。納得できないけれど、我慢しなければいけないのでしょうか?
 
この場合、AさんとBさんは業務内容、責任の程度は一緒と考えられます。さらに現在は本社勤務ですが、異動も同じようにあるなど、配置や職務の内容の変更も同じでした。もし、短時間勤務と正社員との違いだけで待遇が違うのは、納得できませんね。
 
AさんとBさんは、短時間労働者と正社員という理由だけで差別されるようなことがないような待遇にする、これが同一労働同一賃金です。

雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

働き方改革により「パートタイム・有期雇用労働法」が改正され、前段の例より、事業主は短時間勤務であるAさんからなぜ待遇が違うのか、説明の求めがあった場合、事業主は説明しなければいけません。
 
【説明のポイント】
・待遇差の内容や理由
・待遇決定に際して考慮した事項
 
事業主は、雇用形態(正社員・短時間労働者・有期雇用労働者など)によって不合理にならないように、公正な待遇の確保ができているかどうか確認しましょう。

行政ADR

行政ADRとは裁判外紛争解決手続きのことであり、労働者と事業主(企業)との間の紛争について、裁判をせずに解決する手続きのことをいいます。両者でトラブルが生じたときに、当事者の片方または双方からの申し出により、都道府県労働局において無料、非公開の紛争解決手続きを行います。
  
同一労働同一賃金の実現に向けて、行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備が、パートタイム・有期雇用労働法に盛り込まれます。
 
正社員と非正規雇用労働者との間で、あらゆる待遇について不合理な待遇差や、待遇差の内容や理由などを事業主に説明を求めても説明されなかった場合にも、行政ADRの対象となります。
 
【裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の規定の整備】


今まで規定がなかった、有期雇用労働者や派遣労働者(改正労働者派遣法)の人には朗報です。

まとめ

日本が抱えている問題、少子高齢化から労働力人口の減少が働き方改革によって改善され、労働生産性を向上させるのが目的であるといえます。
 
働き方改革により、高齢者や女性をはじめ、さまざまな立場の人が多様な働き方を選択できるようになっています。テレワークや副業など、労働者は自分に合った働き方をすることで、自信と意欲が持て、輝く働き方ができ、労働生産性の向上にもつながるのではないでしょうか。
 
従来の日本では当たり前だった、年功序列、終身雇用の雇用形態・労働環境は薄れてきています。事業主は優秀な人材の確保、離職率の低下などにつなげるためにも、これを機に事業所内の制度の再確認をしてみることをお勧めします。
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、三藤FP社会保険労務士事務所 代表、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士


 

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