更新日: 2024.10.10 貯金
財形貯蓄ってどんな制度? やっておくべき?
財形貯蓄は、貯金が苦手な人でも税制メリットを効率よく活用しながらお金を貯められる仕組みです。どんなものなのか、そのメリットやデメリットについて解説します。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
財形制度とは?
一般的には「財形」と呼ばれていますが、正確には「勤労者財産形成促進制度」といいます。この制度に申し込むと、給料から毎月一定の金額を自動的に資産形成等を目的とした口座に振り分けることになります。勤務先が金融機関と連携して、毎月給与天引きで貯金専用口座にお金を振り込んでくれるイメージです。
貯金にまわるぶん、毎月の手取り額は減ります。しかし、残りの金額で生活を成り立たせる癖がつくので、「手元にお金があるとつい使ってしまう」という方でも、自分で手間をかけることなく「気付いたら貯まっていた」という状態を作りやすくなります。
「お金が余ったら貯める」ではなく「貯金分を先に取り分けておいて残りで生活する」というのは、「先取り貯蓄」と呼ばれる、貯金の王道的な方法です。財形は、その名のとおり、働く人が財産を築きやすいように作られているのです。
■財形制度は3種類ある
財形制度には次の3種類があります。
●一般財形貯蓄(勤労者財産形成貯蓄)
……いろいろな目的に使える。3年以上積み立てる
●財形年金貯蓄(勤労者財産形成年金貯蓄)
……老後の備えに使える。5年以上積み立てる
●財形住宅貯蓄(勤労者財産形成住宅貯蓄)
……マイホーム購入に使える。5年以上積み立てる
「一般財形貯蓄+財形住宅貯蓄」など別の種類の財形を同時に契約したり、一般財形貯蓄を複数契約したりすることも可能です(※1)。
「先取り貯蓄ができる」以外のメリットも
財形制度を利用するメリットは、先取り貯蓄が実践できること以外にもあります。
一般財形貯蓄や通常の銀行預金では利子に約20%の税金がかかりますが、財形「年金」貯蓄と財形「住宅」貯蓄は、あわせて550万円まで利子が非課税になります。お金を貯める目的がはっきりしているのであれば、これらの制度を利用するとより合理的に資産形成ができます。
将来住宅の購入を考えている方は、財形を利用している人限定の「財形持家転貸融資」という公的な住宅ローンも知っておくとよいでしょう。2021年1月現在、年0.68%(5年固定金利)で財形貯蓄残高の10倍以内(最高4000万円)まで、住宅の購入費用等の90%以内まで借りられます。
また、会社によっては財形をしている社員にお金を支給する「財形給付金制度」や「財形基金制度」を用意している場合もあります。
財形制度の注意点
財形制度の注意点やデメリットについても知っておきましょう。
■利用できるのは、制度が導入されている会社の従業員だけ
財形制度は、基本的に会社の福利厚生の一環として提供されています。そもそも制度を導入していない会社の従業員の方や、雇用されていない自営業やフリーランスの方などは利用できません。
■お金が増えにくい
財形貯蓄は、着実にお金を貯めたい方には向いていますが、年0.01~0.04%(※2)程度とそこまで高い金利にはなっていないため、積極的にお金を増やしたい方には合わないかもしれません。自分で貯金や運用ができる方やもう少しリスクを取れる方なら、もっと効率よくお金を増やせる方法を検討するのも選択肢のひとつです。
ちなみに、財形では預金だけでなく保険(※3)や投資信託も選択できます。この場合、運用結果次第で増える可能性もありますが、元本割れ(支払った金額より受け取る金額のほうが少ない状態)になる可能性もあります。
まとめ:制度をうまく活用して、貯蓄を成功させよう
財形制度を利用すると、給与天引きで自動的にお金が貯まっていく仕組みが作れます。銀行の預金と違って気軽に引き出しにくいこともあり、貯金が苦手な方でも資産形成しやすいのが特徴です。会社で制度の案内を受け取ったら、自分の家計の状況や将来のお金の使い道を考慮して、検討してみてはいかがでしょうか。
(※1)
厚生労働省「財形貯蓄制度」
ろうきん「財形貯蓄とは?」
(※2)
ろうきん「預金金利」
新生銀行「新生銀行の財形貯蓄(2月募集分について)」
(※3)
第一生命「財形保険」
(出典)
厚生労働省「財形貯蓄制度」
独立行政法人 勤労者退職金共済機構 勤労者財産形成事業本部「財形制度について」
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表