最終更新日:2019.01.10 公開日:2018.01.23
相続

相続しても「登記」されない土地が増えている

親が亡くなったあとに、親が残した土地を子などが引き継いで相続すると、通常はその土地の権利を確定するために「登記」が行われます。登記により名義変更をすると、その後、毎年固定資産税がかかります。しかし最近では、登記がなされないために、所有者不明の土地が増えて問題となっています。
黒木達也

執筆者:

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

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黒木達也

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Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

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土地を相続してもメリットがない

通常相続が発生すると、その土地や建物については所有者の名義変更をする手続きが行われます。それぞれの地域にある法務局の登記所に申請し、不動産の名義が相続した人に書き換えられます。
 
問題なのは、この登記が行われていないために、結果として所有者不明の土地が多くなっていることです。この所有者不明の土地は、日本全体では九州全体の面積に匹敵する、という調査結果が最近公表されています。こうした土地は売買することも、開発することもできません。
 
では、なぜこうした登記が実行されていないのでしょうか。その大きな理由の一つが、仮に相続後に登記を行ったとしても、その土地から得られる恩恵が期待できないと感じる人が増えているためです。
 
売ることも難しく、ほとんど利用もできず資産価値もない土地に対し、相続税だけでなくその後に発生する固定資産税を払ってまでも、実際に所有することに否定的になるからです。さらに固定資産税評価額が比較的高く、実態に即していないケースも増えているためと思われます。
 
こうした背景には、相続税や固定資産税が実情に比べ高すぎると考える人が多いのでは、と思われます。急速に過疎化が進んでいる地域では、2、3年前の評価額は高すぎるケースも多くなるはずです。また毎年課税される固定資産税についても、利用できない土地なのに課税されている、と不満を持つ人は増えています。このため相続時に名義を書き換える登記を行わずに、固定資産税も支払わなくなっているのです。
 

登記に法的な義務ではない

相続登記に関する大きな問題点として、登記自体に法的な「義務」はなく、あくまで「任意」なことが考えられます。
 
大都市の住宅地を相続した人の場合は、相続人の権利を確定するためだけでなく、その土地を売却する際にも登記簿などが必要なため、登記をするのが一般的です。
 
ところが、地方の山林などを相続したとしても、その山林が荒れ果てほとんど利用可能な土地ではなく売却もできないと思われる場合、わざわざ登記することはない、と考えてしまいます。親が住んでいた老朽化した空き家なども同様です。所有者不明の土地は、大都市よりも地方で圧倒的に多くなっています。
 
利用が困難な土地でも、固定資産税の課税対象になるからです。固定資産税だけでなく、司法書士などに支払う登記手数料や、登録免許税などの税金も別途負担する必要があるため、登記を躊躇する要因になります。
そして実際に登記をしなくても、なんの罰則もありません。
 
遺族が相続税だけを支払っていれば、特に名義変更をしなくても問題がないため、登記をせずに放置することも十分に考えられます。仮に「そのうちに登記の手続きを」と考えていたとしても、土地の資産価値が年々減少している、登記のための手数料や固定資産税を払うのが面倒、といった理由あれば、登記がなされないまま放置されてしまいます。
 
登記情報は古くなるほど、相続人の数も増え実態がつかみにくくなります。
 

登記の手続きも結構煩雑

登記の手続きは義務化されていないことだけではなく、手続き自体が煩雑なことも登記が進まずに、所有者不明の土地を増やす要因となっています。個人で登記の手続きすることはかなり難しく、実際は専門家である司法書士に依頼します。そのための諸経費が必要になり、これらのコストを払いたくない、と考える人もいると思われます。
 
しばらく登記が放置されていると、さらに複雑な問題が出てきます。法定相続人がごく少数の場合はまだしも、多数いるとなると、その相続人が亡くなってしまうことで、新たな相続人も増えてきます。亡くなった人の土地を、誰が相続するかを確定するための書類(遺産分割協議書)の作成には、相続人全員の合意が必要で、全員が実印を押すことが求められています。
 
相続が発生してから2、3年ならまだしも、10年以上経過すれば、相続人の遺族を含め、全員の合意を示す書類を作ることは非常に困難になります。そのため、20年以上登記がなされない土地については、相続人が果たして何人いるかも特定できず、仮に相続人の1人が登記しようとしても、全員から実印の押印ができずに、登記をあきらめてしまうケースも生まれてしまいます。
 
特に地方で多くみられる耕作放棄地や荒廃した山林は、登記がされないまま長期間放置され、相続人の特定もできずに所有者不明となっているケースが多くみられます。
 
今後は地方だけでなく都市部においても、利用困難な土地(地形が悪い、傾斜地、崖上の土地)が、登記されずに所有者不明となっていく可能性もあります。
 

土地に関する行政の課題

こうした実態を放置しておくと、ますます所有者不明の土地が日本中で増え続けることになります。
 
人口減少社会が進み、土地神話も崩壊しつつあります。土地は先祖代々からのもので、それを守っていくという発想は、しだいに希薄になっています。土地所有に関する意識が、大きく変わっていることを前提に考えることが不可欠です。
 
まずは、登記実務の簡素化が急務です。登録免許税など登記にかかる費用の軽減、遺産分割協議書など登記にかかわる書類の簡素化が求められます。さらに固定資産税などを、土地利用の実態に即して減額する必要も出てきます。利用価値の乏しい土地と、課税の基準が乖離していないかを検証すべきです。
 
所有者不明の土地が増えるほど、固定資産税も課税できなくなり、結果として納税額も減少します。
 
また長期間所有者不明となっている土地を、どう有効利用するかも検討課題です。相続人全員を探し出すことで、その土地の所有者を確定することも大切ですが、市町村が土地を借り受け、公園などの公共性の高いものに利用できるルールづくりも必要になるといえます。
 
さらに相続の際、なんらかの形で登記を義務化する方法も追求する必要があります。その際、登記の意志のない土地については、市町村が無償または安く購入して公共用地とし、公共施設の建設などに活用する制度づくりも必要になるかもしれません。
 
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職

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