更新日: 2020.04.07 その他相続
実家を相続。住むつもりない場合は売却or活用、どっちがお得?
しかし、将来的に田舎に戻る予定がなくても実家が両親の持ち家である場合は、いずれは実家を相続することになります。本稿では、実家の相続に伴う問題と、その対応についてまとめます。
執筆者:廣岡伸昌(ひろおか のぶまさ)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定)
宅地建物取引士 ※試験合格
貸金業務取扱主任者 ※試験合格
大阪大学法学部卒。経済学修士(計量経済学)
地方銀行、コンサルティング会社を経て、現在、大手金融グループに勤務。その傍らでFPオフィスを運営して、お金に関する記事の執筆、相談業務を行っています。
専門分野は相続、資産運用、ローンなど個人向けのFP領域全般です。
相続による空き家の増加と有効活用
総務省の「住宅・土地統計調査」(平成25年)によると、全国の住宅総数6063万戸に対して、空き家数は約820万戸であり、空き家率は13.5%に達しています。
空き家の総数はこの20年で倍増しており、人口減少などを背景として今後も増加することが予想されます。
また、国土交通省住宅局が実施した「平成26年空家実態調査」によると、空き家を取得した人のうち52.3%が相続により取得しています。実家の相続に対する事前準備が不十分であることが、いわゆる「空き家問題」を大きくしている一因と言えるのではないでしょうか。
空き家となった実家の有効活用
それでは、相続した実家についてどのような活用方法が考えられるでしょうか。ここでは(1)売却、(2)賃貸物件として管理、(3)土地活用(駐車場など)の3つの視点で考えてみます。
(1)売却
「実家を相続したものの、立地的に賃貸に適さない場所にある」「住むには大規模なリフォームが必要であり、費用の捻出が難しい」といった場合は、そのまま売却することが選択肢の1つになります。
空き家にしておくと何も収益を生まないまま、固定資産税だけを支払い続けることになりますし、防犯・防災や衛生上の問題も気になるところです。
多くの思い出が残る実家を売却することには抵抗があるかもしれませんが、買い手が自身の希望に合わせてリフォームすることで、実家が再生されると考えれば抵抗感もやわらぐのではないでしょうか。
また、地価が下落している地域においては、売却により将来的な資産価値下落のリスクを回避できるという側面もあります。なお、2016年4月より、相続した空き家と敷地を売却した場合に、譲渡所得から3000万円を控除できる特例が導入されています。
被相続人が相続開始直前まで居住している、譲渡対価が1億円以下など、一定の要件を満たしている必要がありますが、適用できる場合は節税につながるでしょう。
(2)賃貸物件として管理
賃貸物件として活用できるかどうかは立地に依存します。最寄り駅や集客施設に近い場合は賃料水準が維持しやすく、賃貸に向いていると言えるでしょう。立地と物件の構造(ファミリー向けかなど)の適合度が高いことも重要です。
なお、賃貸できるような物件は、売却も検討の余地があります。その場合は賃料収入と一定期間経過後の売却見込額の合計を、現時点における売却見込額と比較します。
賃貸についてはリフォームにかかる費用や、空室が発生するリスクなどを考慮して複数のシナリオをシミュレーションしましょう。その結果が、賃貸物件として管理していくか、売却するかの一つの判断材料になります。
(3)土地活用(駐車場など)
家屋の老朽化が深刻な場合などは、建物を解体して更地にしたうえで、土地を活用する必要があります。なかでも活用例としてよく耳にするのが駐車場経営です。
形態としては、更地のままで手を加えない、更地をアスファルトで舗装する、コインパーキングや立体駐車場タイプなどさまざまです。パーキング需要を十分に調査したうえで、収益を確保できるだけの適切なキャパシティと設備を備えた駐車場にする必要があります。
なお、建物を解体した場合は、住宅用地について固定資産税の課税標準が6分の1になる軽減措置(小規模住宅用地の軽減措置。一般住宅用地の場合は3分の1)が適用されなくなり、固定資産税の負担が大きくなる場合があることには注意が必要です。
また、さらに相続が発生した場合に「小規模宅地等の特例」を適用して相続税負担を軽減するには、敷地上に構築物(アスファルトや砂利、機械式)がある必要があります。
ただし、構造物の所有者や設置面積等により評価割合が異なるため慎重な対応が必要です。もちろん、更地のままの状態ではこの特例は適用されません。
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空き家にさせないための事前準備
相続により発生した空き家の活用方法について整理してきましたが、そもそも空き家にさせないための準備が重要です。すなわち、相続人の間で将来の相続発生時に実家をどのように利用し、処分するかについて十分に協議して方針を決定しておくことが不可欠です。
その際の一つの検討材料として、既述のもの以外にリバースモーゲージを紹介しておきます。
リバースモーゲージは、自己所有の土地・建物を担保に差し入れて金融機関から融資を受ける商品で、利息のみを毎月支払い、元本については生存中の返済義務はありません。元本は死亡後に担保である物件を売却するなどで一括返済することを想定した商品です。
将来的に実家に戻る予定がなく、管理も難しいということであれば検討に値するかもしれません。これを利用することで相続による空き家の発生防止に加えて、老後資金の積み増しができる場合があります。
しかし、担保にできる不動産に制限があり、都市部の物件でないと担保にならないこともあるため、事前の確認が必要です。また、不動産評価額の下落時は担保割れにより返済を求められる場合がありますので、その利用は慎重に検討すべきでしょう。
以上をふまえて、早めに自身の状況にあう対策を検討することをおすすめします。
※2019/05/10 内容を一部修正させていただきました。
出典
総務省統計局「平成25年住宅・土地統計調査」
国土交通省住宅局「平成26年 空家実態調査」
執筆者:廣岡伸昌(ひろおか のぶまさ)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定)
宅地建物取引士 ※試験合格
貸金業務取扱主任者 ※試験合格