兄が相続した土地の価格だけが高騰。「遺産分割」のやり直しってできる?

配信日: 2021.12.15

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兄が相続した土地の価格だけが高騰。「遺産分割」のやり直しってできる?
遺産の中に土地や株式など値動きをする財産が含まれている場合もありますが、遺産分割をした後に相続財産の価格が変動して不公平な状況が生じたとき、遺産分割のやり直しはできるのでしょうか。遺産分割後、一部の財産の価格が急騰した場合について考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

遺産分割後に一部の財産が高騰したとき、やり直しはできる?

Aさんと兄は親の財産について50%ずつ、等しい相続割合で遺産分割を行いましたが、後日、兄が相続した土地だけ価格が急騰しました。その結果、兄が実質的に財産の55%、Aさんが45%を相続したような形となり、不公平な状況となってしまいました。
 
不可抗力とはいえ、遺産分割が不公平な結果となってしまったAさんは納得がいきません。しかし兄としては、いまさら遺産分割をやり直すのはおかしな話だろうと考え、遺産分割を再度行うことには反対の立場です。Aさんは兄に遺産分割のやり直しを請求することはできるのでしょうか。
 
なお、相続人はAさんと兄のみで、両者とも意思はしっかりしており、遺産分割に当たって詐欺や脅迫の事実などもないものとします。
 

遺産分割のやり直しは合意があるなど一定の場合のみ可能

結論として、本事例のAさんが遺産分割のやり直しを実現することは困難でしょう。なぜなら、遺産分割をやり直せるのは下記の条件のうち、いずれかに該当する場合となるからです。

(1)遺産分割が相続人全員で行ったものではなかった
(2)相続人以外が遺産分割協議に参加していた
(3)遺産分割協議の際、相続人が意思能力を欠いていた(重い認知症であったり、精神障害があるような場合が該当)
(4)詐欺や脅迫、錯誤(後から遺言書や隠れた財産の発見)があった
(5)遺産分割のやり直しについて相続人全員で合意をした

今回の事例において遺産分割のやり直しを現実的に考えるのであれば、上記(5)の「相続人全員で合意」という条件に合致させるため兄と相談し、合意を得た上でやり直すということになるでしょう。
 
これは相続人全員である兄弟2人のみで遺産分割を行っており、脅迫や詐欺の事実もなければ、意思能力を欠いている人もいないからです。しかし、兄には合意に応じる義務はないため、やはり遺産分割のやり直しは困難だと考えられます。
 

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Aさんは遺産分割時にどうするべきであったか

Aさんは遺産分割に当たってどう対応していれば、今回のように納得のいかない結果とならずに済んだのでしょうか。
 
それはまず、一度行った遺産分割は原則、やり直しが難しいものだと知っておくことです。そして、遺産分割に当たっては遺産の現在価格だけではなく、将来の価格変動も見越しておくべきだったといえます。
 
具体的には、相続財産の中に土地があるため、その土地の将来の価格変動の可能性を調査し、高騰することも踏まえて土地を相続するか、または兄と交渉して土地を相続しない代わりに多めに遺産を分けるといった対応が考えられます。
 
しかし、将来のことは確実ではないため、逆に土地の価格が下がり、Aさんと兄とが逆の立場となっている可能性もあります。
 
いずれにせよ遺産分割に当たっては、やり直しが原則できないものだと考え、相続財産の価格変動は起こり得るという事実も踏まえて、十分に検討して相続内容を確定させることが大切といえるでしょう。
 

遺産分割の確定は慎重に

遺産分割は協議中に詐欺や脅迫などがない限り、やり直しには相続人全員の合意が必要となるため、今回の事例を1つの参考に、あとから後悔をしないような内容にしてください。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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