内縁関係の夫が亡くなった。自分に残してくれた財産は全て相続できる?

配信日: 2022.01.18

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内縁関係の夫が亡くなった。自分に残してくれた財産は全て相続できる?
共に暮らし、夫婦としての実体を伴う関係ではあるものの、婚姻の届出は提出していない内縁関係。この内縁関係は、日常生活には支障がないと思っていても、相続の場においては影響を及ぼすことがあります。中でも相続人となれるかどうかは、特に大きい問題です。
 
内縁関係にある夫婦は、お互いの相続において相続人となることができるのでしょうか。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

内縁の夫が亡くなったとき、妻は財産を全て相続できる?

内縁関係にある夫婦の一方が亡くなった場合、遺族となる他方は財産を相続することができるのでしょうか。このような事例は毎年1件から2件、筆者の事務所に相談が寄せられます。
 
直近では、「内縁関係にある夫が亡くなったため、妻である自分が相続財産を全て相続することができるか」と相談に来られた女性がいました。
 
残念ながら、内縁関係にある夫婦の場合、まず相手方の相続人となることはできません。相談に来られた女性も、結局は相続人となることができず、財産は全て内縁の夫の子が相続しました。
 

なぜ内縁関係では相続人となれないのか

内縁関係にある夫婦がお互いの財産を相続できないのは、法律上、相続人となれる人の中に内縁関係の夫婦が含まれていないからです。
 
法律上で相続人となる人を法定相続人と呼びますが、法定相続人となれるのは婚姻届により法律上の夫婦となっている場合であり、内縁関係は法定相続人として規定されていません。
 
遺言書に「内縁の妻へ財産を遺贈する」という旨の記載があれば、遺言書に従って相続財産の一部または全額を受け取ることも可能だったのですが、今回の事例ではそういった遺言書もありませんでした。そのため、相談者の女性も相続人になれず、内縁の夫の子が相続人となったのです。
 
また、遺言書に「財産の全てを遺贈する」と遺贈の記載があったとしても、全ての財産を受け取れるとは限りません。
 
内縁関係の夫の子など、遺留分(亡くなった方の兄弟姉妹以外の相続人に認められる最低限の相続分)を有する相続人から遺留分侵害額の請求をされれば、遺留分を侵害している部分を返還する必要があるからです。
 
遺留分は亡くなった方の兄弟姉妹以外の相続人に認められる権利であるため、よほど限定的な状況でない限り、内縁の夫の相続財産を全て妻が受け取ることは難しいでしょう。
 

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特別縁故者として相続財産を受け取れることも

先に述べたように、内縁関係では相手の相続人とはなれません。
 
しかし、相続人が不在の場合で、かつ、亡くなった方の債権者など相続財産について権利を主張する者が不在のまま相続財産が残った場合、内縁関係の配偶者(今回の事例では内縁の妻)は特別縁故者として相続財産が分与される可能性があります。
 
特別縁故者に該当する方は次のような方です。

●亡くなった方と生計を同じくしていた
●亡くなった方の療養看護に努めた
●亡くなった方と特別の縁故があった

内縁関係にある配偶者で相続人にはなれなくても、特別縁故者として相続財産の全部または一部を受け取れることがありますが、特別縁故者と認められるには家庭裁判所への申し立てが必要です。
 
また、仮に上記の条件に該当していたとしても、家庭裁判所に認められるかは別問題となる点に注意してください。詳細については、亡くなった方の住所地を管轄する家庭裁判所へご相談ください。
 

内縁の夫が残した財産を全て受け取れるとは限らない

内縁関係にある夫婦の場合、お互いに相手の法定相続人とはならないため、遺言書などで遺贈を受けるか、特別縁故者として認められない限り、相続財産を全く受け取ることはできません。
 
もし、内縁関係の夫が亡くなってしまい、遺言書もない場合は家庭裁判所への特別縁故者の申し立てについて検討してみてください。
 
出典
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
裁判所 特別縁故者に対する相続財産分与
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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