更新日: 2019.01.10 相続税
遺産相続時にトラブルを減らすための方法
相続手続きが長引くと、結果として大きな不利益を被ります。
最近では相続税の控除額が変更になり、相続税を納める必要のある人は大幅に増えています。誰もが相続のトラブルに巻き込まれる可能性があるのです。
相続人が関係するトラブル
もし親の財産を兄弟のいない子1人で相続する場合は、その子がすべて相続するので、トラブルも起きずに済みます。
しかし相続人が多いとトラブルが起こりやすく、簡単に解決しないことがしばしばです。相続する財産の多寡に関係なく、トラブルは起きると考えていたほうがよさそうです。
例えば、次のようなケースが問題になります。
●相続人同士の折り合いが悪い
相続の際に、相続人同士の仲が悪いと問題が起こります。また、相続人の数が多い、付き合いのあまりない親族がいる、といったケースでも同様です。
親と同居していた子が多くの割合を相続しようとすると、ほかの兄弟からクレームがつくケースがよくあります。親の面倒を看ていたにもかかわらず、その点を無視して、疎遠だった兄弟が遺産を等分に配分するよう求めてくれば、トラブルになります。
特に長男が親と同居しながら、苦労した長男の妻には相続の権利はありません。法定相続人でない長男の妻に遺産を分けようとすると、遺言などの手続きが必要になります。
また普段は疎遠であった兄弟同士が、親の死を契機に集まり親族会議で相続問題を話し合うと、それぞれが自分の立場を主張し合い、なかなか解決策がみつからなくなります。
兄弟の数が多くなればなるほど、その配偶者が話し合いに加わってくればくるほど、事態は深刻化します。
●被相続人に子がいない
子がいない夫婦の相続も結構大変です。一方が亡くなったときは残った配偶者が相続しますが、問題はその相続した配偶者も亡くなったあとです。
亡くなった人の親が生きていれば解決しやすいのですが、兄弟や甥・姪だけが相続人となると、利害が衝突することがしばしばです。
兄弟同士や甥・姪などとの付き合いが少なく、相続が発生して久しぶりに顔を合わせる場合など、気を付ける必要があります。先に亡くなった配偶者の兄弟が、相続の話に口を挟むことも考えられます。
特に兄弟だけでなく、その配偶者が口を出すようになるとなかなかまとまりません。相続は、故人との親交がいくらあっても、相続の対象にならない人もいることを認識すべきです。
●離婚や再婚で親子関係が複雑
離婚をした前の配偶者との間に子がいた場合、その子には当然相続権があります。一方で再婚相手の子には、通常は相続権がありません。
離婚や死別した配偶者の子と疎遠になっても、彼らには相続権があり、再婚して一緒に住んでいる子には相続権がないため、本人が死亡すると難しい問題に直面します。
それをなくす意味で、再婚相手の子とは養子縁組をしておけば、その子の相続が可能になります。家族関係が複雑になれば、それだけ事前に準備する課題も多くなります。
相続争いを減らすための「遺言書」
相続をめぐる混乱を最小限にするために、最も重要になるのが遺言書です。これがあれば、すべてが解決するわけではありませんが、故人の意志が明確になり、故人の意向もかなり反映させることができます。
関係者の間で多少の不満があったとしても、遺言書があれば故人の意志だからといって、その場を収めることも可能になります。
相続に際して何らかのトラブルが予見されるときは、遺言書が残されていれば指針となります。確実に相続争いが起こると予見されていながら遺言書がないと、混乱に拍車がかかることは確実です。誰に一番相続させたいか、誰の相続分を減らしたいか、という意志表示ができるため、遺言書は意味を持ちます。
また何故このように配分したか、その理由も合わせて書いておくと、円満な相続を実現する支援材料にもなります。
●ルールどおりの遺言書をつくる
遺言書は一定のルールに沿ってつくる必要があります。何か書き留めておけばいい、というものではありません。
例えば、机の中にメモ書きとして残っていた、自筆ではなくパソコンで作成した、遺言書に日付の記載がない、といった内容では、遺言書自体が無効になってしまいます。また言葉1つ使い方を間違えるだけで、その効力が違ってきます。
せっかく作成しても不備があると、故人の意志だという正当性がなくなります。
できれば専門家と相談し、効力の発生する遺言書を作成しておく必要があります。特に事情が複雑な家庭であればあるほど、きちんとした遺言書を残しておきましょう。
●法定相続人の権利は保護を
長男の嫁に介護で関して世話になったのため財産を多く渡したい、といった内容の遺言書は、作成したとしてもそのとおりの配分にはなりません。
法定相続人にはそれぞれ「遺留分」といって、最低限相続できる割合が決められており、これを侵してほかの人に多く配分はできないからです。通常、遺留分は法定相続分の半分と定められています。
遺留分を侵害する内容の遺言状は、効力に限界があります。そのため、法定相続人が何人いるかを確認し、遺留分を考慮したうえで、相続する配分・内容を決めて遺言書を作成する必要があります。
どうしても遺留分を変更したいときは、遺言書の作成段階で、対象者に遺留分を放棄してもらう手続きが必要です。特に相続財産が土地と住宅だけが中心の場合、遺留分を考慮すると希望どおりに分割できなくなります。
遺留分を尊重するあまり、利害が対立する人同士が土地を共同名義にしても、あとあと問題になるだけです。遺留分の取り扱いについては、法改正を含め改善の余地があります。
社会の変化が進むなか、家族関係も大きく変わろうとしています。こうした変化に法制面の整備が十分に追いついていない面もあります。徐々に法整備も進んでいますが、「相続」が「争族」にならないよう注意したいものです。
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。
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