更新日: 2022.06.15 葬儀

「家族葬」が増加傾向。葬儀の簡素化が進行し費用も大幅減【いまどきの葬儀】

「家族葬」が増加傾向。葬儀の簡素化が進行し費用も大幅減【いまどきの葬儀】
葬儀に対する考え方が以前とは大きく変わってきています。
 
今や多くの親戚や知人の集まる一般葬は次第に減り、家族葬が比較的多くなってきました。著名な経済人や文化人でも、大規模な葬儀は行わずに、家族葬で済ませるケースも目立っています。
 
コロナ禍を契機に、日本人の葬儀に対する考え方も、大きく変わってきたのかもしれません。
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

コロナ禍が葬儀の簡素化に拍車

ここ数年続くコロナ禍は、人の集まりを大きく制限することになり、大勢が集まる葬儀が難しくなりました。
 
かつては経済人や文化人、有名タレントが亡くなると、大きな葬儀会場に多くの関係者が参列する光景がよくみられました。ところがコロナ禍で情勢は一変、多くの人が集まる葬儀は、影を潜めるようになりました。
 
現在では、葬儀の形も家族中心で故人を見送る「家族葬」が増加傾向にあり、多くの親族や知人が会葬に訪れる「一般葬」は、以前と比較して減少しています。
 
コロナ禍を機に、手間と経費のかかる一般葬をやめて家族葬に変更した、という方もいらっしゃるでしょう。特に宗教的な事情や作法を考慮しないで済む方の間では、顕著な傾向といえます。
 
葬儀日数も短縮傾向にあります。「一般葬」は通夜と告別式に分け、2日間かけて実施します。「家族葬」は、2日かけることもありますが、通夜を省略、1日で済ませる「1日葬」もあります。
 
家族中心の少人数で告別式だけを行い、その後に火葬場に向かう形です。さらに通夜も告別式も行わず、直接火葬場に向かい、そこで簡単な儀式だけで火葬にする「直葬」または「火葬式」という形もあります。
 
葬儀は、大きな葬儀会場を使用しない、僧侶を呼ばない、という方向になりつつあります。病院で亡くなった場合でも、一般葬にはせずに、簡単な家族葬か、そのまま火葬場で「直葬」にするかを選択する方もいらっしゃいます。
 
また、介護施設で亡くなると、その施設の居室で、家族と施設の方で1日葬を行う様式もあります。自宅や式場まで遺体を運ぶ手間もなく、手早く葬儀ができる利点があり、協力的な介護施設もあります。
 

小さな式場が増え、リモート葬儀も

これまで比較的大きな葬儀を実施してきた斎場でも、変化がみられます。
 
大人数が会葬に訪れることを前提とした広い式場を減らし、家族葬対応の小さな式場の数を増やす斎場も少なくありません。大規模式場の利用頻度は、明らかな減少傾向にあります。
 
さらに最近では、オンライン形式で「リモート葬儀」を行う式場も出てきました。遠方に住んでいる親族や知人でも、リモートならば葬儀に参加できるメリットがあります。コロナ禍が生んだ新しい葬儀形態になりつつあります。
 
その一方で、葬儀費用を生前から積み立てておく組織「冠婚葬祭互助会」は、現在でも大きな影響力を持っているものの、加入者の減少が悩みのタネです。互助会に加入しなくても、簡単な死亡保険に加入していれば、最低限の費用は捻出できる時代だからです。
 
加入者の減少は互助会にとって深刻です。退会を申し出た会員に対し、多額の解約金を要求する互助会もあり、監督官庁の経済産業省への苦情も寄せられています。経営基盤の弱い互助会は、大きな互助会に吸収されるケースや、やむなく廃業するケースも見受けられます。
 

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ネットの普及がコストを可視化

葬儀費用に関しても、ネットが普及し可視化が進んでいます。
 
以前は、主催者などが突然のことで気持ちが動揺しているため、葬儀について、実際の葬儀を仕切る業者から言われるままの価格を支払うケースもありました。無事に葬儀を終えたい、葬儀費用の相場が分からない、見積もりを取る時間がない、といった理由で、高額な葬儀費用を払っていました。
 
しかしコロナ禍の中で、インターネットで料金を明示する葬儀会社が増加傾向にあります。葬儀会社の閉鎖性が取り払われたのです。
 
また、葬儀会社の料金を、比較検討できる情報サイトを提供する会社もあります。葬儀事業に他業種からの参入会社もあり、業者間の競争が激化したことが、可視化と低価格化が進んだ背景といえるでしょう。
 
ネットを検索すれば「家族葬なら値段はいくらくらい?」「1日葬に変更すればいくら安くなる?」といったことが、葬儀に関する知識が乏しくても一目瞭然に理解できるのです。
 
ただし、ネットで公表している料金には、低料金を強調したいがために、一部の経費が除外されていることがよくみられます。
 
例えば、霊きゅう車の代金、遺影の製作費、火葬の費用など、主として外注する経費は別料金といわれるケースがみられます。ネットに表示されている金額にどこまで含まれるかを、注意深く確認する必要があります。
 

葬儀費用の下落傾向は顕著

これまでは“ブラックボックス”といわれてきた僧侶へのお布施の額まで、ネット検索で分かります。檀家(だんか)でない方でも、希望する宗派の僧侶を派遣してもらえます。
 
施主の方が希望する葬儀のタイプにより、実際の支払金額の概算が分かるようになりました。以前と比べると、大幅に安い費用で葬儀を行うことができます。
 
業者間の料金比較も可能です。突然の不幸に見舞われた際は、十分な吟味ができないかもしれませんが、家族の死期が近いと感じている方は、葬儀費用が計算できるかもしれません。
 
葬儀の形態や規模を検討し、安心して故人を見送ることができます。葬儀は「簡素にしてなるべく安く」という考え方が定着しつつあります。実際にかかる経費は、葬儀の内容などにより幅があります。
 
飲食費を除いた相場は、通夜と告別式を2日に分けて行う家族葬で60~150万円、1日葬にすると50~120万円、さらに直葬だと25~60万円程度が相場といわれています。これは、筆者が各社を調査した結果ですので、あくまで目安としてお考えください。
 
一般葬の場合の費用はやや高額になります。葬儀会場の規模、参列者の人数、祭壇のレイアウト、ひつぎの品質などによって変わります。
 
原則として飲食代や香典返礼品代も加わるため、少ない場合でも180万円、充実した葬儀で故人を送りたい場合は、300万円を超えるケースもあります。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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