相続税のキホン。相続税がかからない財産と、相続財産から控除できる債務
配信日: 2022.06.28
ここでは、相続税がかからない財産と相続財産から控除できる債務について解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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相続税がかからない財産
遺産の中には、その性質や国民感情、社会的政策などの理由から、相続税を課税するのが適当でないものがあります。具体的には以下の財産などには相続税がかかりません。主なものをみてみましょう。
(1) 墓地、仏壇等
墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物には、相続税がかかりません。ただし、純金製の仏具など、投資の対象となるものなどには相続税がかかります。
(2) 公益事業用の財産
宗教、学術、慈善、その他のほか公益を目的とした事業を実施する一定の個人等が、相続・遺贈により得た財産で、公益を目的とする事業に使われることが確実なものは非課税とされています。
(3) 国や地方公共団体、特定の公益法人への寄付金
相続や遺贈によって取得した財産で、相続税の申告期限までに、国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄付したもの、もしくは、相続・遺贈により得た金銭で、相続税を申告する期限までに、特定の公益信託の信託財産とするため支出したものは、非課税です。
(4) 生命保険金
相続によって得たとされる生命保険金のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分は非課税です。
(5) 上記のほかにも、死亡退職金(一定額)、弔慰金(一定額)、心身障害者共済制度に基づく給付金受給権が非課税です。
非課税財産を活用した節税対策
生前にお墓や仏具を購入したり、手元の現預金を生命保険に加入し非課税財産に組み替えておくことで、相続税の節税になります。
ただし、相続開始後に購入した仏具やお墓は相続財産から控除できませんので、生前に購入したことを示す領収証などは証拠書類としてしっかり保管しておきましょう。
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相続財産から控除できる債務
相続税を計算するときは、被相続人が残した借入金などの債務を、遺産の総額から差し引くことが可能です。
(1) 債務
債務とは、平たくいうと借金のことです。差し引くことが可能な債務は、被相続人が死亡時にあった債務で「確実」だと認められるものです。
具体的には、金融機関からの借入金、クレジットカードの未決済分、病院や介護施設に対する未払金、未払いの固定資産税や準確定申告の所得税などです。税金の未払い分は申告漏れにならないように注意してください。
(2) 葬式費用
葬式費用は債務ではありませんが、相続税の計算時は遺産総額から差し引くことが可能です。具体的には、お通夜、本葬費用、寺院への支払い、火葬、埋葬費用、遺体運搬費用、会葬御礼費用などです。
ただし、香典返戻費用(香典返し)、墓地買入費用、仏具代、初七日、四十九日などの法要費用は、債務控除の対象になりませんので留意してください。
したがって、非課税財産であるお墓や仏具・墓地などは生前に購入することで、支払うべき相続税額の減少が可能になります。
なお、香典は相続税の対象外で贈与税もかかりません。また、被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など、非課税財産に関する債務は、遺産総額から差し引けません。
出典
(※1)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4108 相続税がかからない財産
(※2)国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4126 相続財産から控除できる債務
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー