離婚時のローン付マイホームと財産分与。具体例から見る考え方と計算式。
配信日: 2018.04.20 更新日: 2019.01.10
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
財産分与のポイント
まず、財産分与について確認しておきましょう。
財産分与は、婚姻期間に夫婦の協力によって築いた財産を、離婚時に2人で分けるものです(清算的財産分与)。このほか、専業主婦(夫)であった者が、離婚後、仕事を始めるときまで生活を援助する趣旨で、分与されるものもあります(扶養的財産分与)。
また、慰謝料の支払いとして、財産分与が行われることもあります。
財産分与の対象となるのは、不動産や預貯金など財産的価値のあるものです。財産分与は、婚姻期間中に夫婦の協力によって築いた財産を分けるものなので、結婚前に築いた財産や別居後に築いた財産は対象外です。
また、親から贈与された財産や相続した財産も財産分与の対象となりません。
住宅ローンや借金がある場合は、これら負債を財産の額から控除した金額が、財産分与の対象となります。厚生年金の納付記録も対象です(年金分割制度)。
財産分与の割合は、原則として2分の1です。専業主婦(夫)も2分の1請求できます。内助の功があるからです。年金分割も財産分与も離婚後2年以内に請求する必要があります。
ローン付マイホームと財産分与
夫が会社員、妻が専業主婦の夫婦が、婚姻後、共同生活を送るために住宅ローンを組んで、マンションや一戸建てなどのマイホームを購入したとします。
収入のない妻は、金融機関からマイホーム購入資金を借りることができません。収入のある夫が金融機関から住宅購入資金を借り入れ、その担保としてマイホームに抵当権を設定します。そのため、マイホームは夫の名義となり、夫が住宅ローンを返済していくことになります。
しかし、このマイホームは、夫名義であっても夫婦の共有財産であり、住宅ローンは夫婦で返済していかなければならない債務です。
とはいえ、金融機関との関係では債務者は夫ですので、妻が連帯債務者や保証人になっていない限り、妻には金融機関に住宅ローンを返済する義務は原則ありません
さて、離婚時、マイホームの時価よりも住宅ローン残高が多い場合、例えば、マンションの時価が2000万円、住宅ローン残高が2500万円などの場合、時価から住宅ローンを控除するとマイナスになりますので、財産分与の対象とならず清算的財産分与請求権は発生しません。
この場合、マイホームをどうするかは夫婦で協議して決めることになります。
逆にプラスの場合は財産分与の対象となり、マイホームを売却して代金を2分の1ずつ分けることもできますし、一方がマイホームを取得して、他方に2分の1を支払い、住宅ローンの残金を支払うこともできます。
妻が離婚後も夫名義のマイホームに住み続ける場合、さまざまな問題が生じます。住宅ローンの返済を夫が滞納すれば、マイホームを失う可能性があります。また、名義を妻に変更するのも容易ではありません。
金融機関からすれば返済能力のある夫にお金を貸したからです。離婚専門の弁護士などにアドバイスを受けるといいでしょう。
【PR】「相続の手続き何にからやれば...」それならプロにおまかせ!年間7万件突破まずは無料診断
具体例
マンション購入代金5000万円のうち、妻の親から1000万円の援助を受け、夫婦は1000万円を頭金として、夫名義で4000万円の住宅ローンを組んだ場合、離婚の際のマンションの時価が3000万円、住宅ローン残高が1000万円だったとすると、妻の財産分与対象額はいくらになるのか考えてみましょう。
妻の親が贈与した1000万円は夫婦の共有財産ではありませんので、財産分与の対象額はマンションの時価3000万円から親から贈与を受けた1000万円を控除した2000万円となります。
2分の1ルールにより、夫および妻は各1000万円を取得することになります。
ところで、妻はマンション5000万円のうち1000万円を負担していますので、財産形成に20%貢献していることになります。この貢献部分を評価する必要があります。どのように評価するかは大きく2つの考え方がありますが、ここでは、1つの方法を示します。
妻の財産分与の対象額は、2000万円から妻が財産形成に貢献した額を控除した残額に2分の1ルールを適用して、妻に対する分与額を計算する方法です。この考え方によると、妻に対する分与額は1200万円となります
※計算式(2000万円×80%÷2)+(2000万円×20%)
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。