更新日: 2023.01.19 相続

相続したが利用しない土地 国が買い取る制度を新設

執筆者 : 黒木達也 / 監修 : 中嶋正廣

相続したが利用しない土地 国が買い取る制度を新設
親が亡くなり土地を相続したが、それが遠方にあるため、ほとんど放置状態にしているという方も多いかと思います。このまま所有し続けていても、固定資産税や管理費用もかかるため、どう対応するか困ってしまいます。
 
この点を解決する1つの方法として、2023年4月以降、個人が利用しない土地を国が引き取る新制度がスタートします。
 
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

中嶋正廣

監修:中嶋正廣(なかじま まさひろ)

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

長野県松本市在住。

空き家対策としての「相続土地国庫帰属制度」

現在、日本には多くの空き家があり、大きな社会問題になりつつあります。その多くが相続を契機に発生しています。地方に住んでいた両親が2人とも亡くなり空き家となっている、都市近郊の新興住宅地の土地と住宅を相続したが、交通の不便な地域でそのまま放置している、などといったケースが見られます。
 
一方で、利用しない不動産であっても、固定資産税がかかる、庭木の伐採など環境保全費用や水道光熱費がかかる、といった維持費も大きな負担となります。都市の近郊地域では、維持費が少なくとも年間15万円以上かかると推測されます。
 
さすがに国もこうした状態を放置しておくわけにもいかず、1つの対策として、土地については、国が個人から有償で引き取る「相続土地国庫帰属制度」が、2023年から新規にスタートします。
 
相続しても利用しないでいる方に対して、建築物がなく更地であれば国が引き取る制度です。空き家に対する固定資産税の強化と並んで、空き家を減少させる決め手となるかもしれません。
 
しかし、どのような土地であっても、国が買い取ってくれるわけではありません。いろいろな制約条件もあるため、この制度がどの程度利用されるかが注目されます。
 

国が土地を引き取るための条件

相続した土地や長期に未利用の土地を、国に引き取ってもらうにしてもいくつかの条件があります。

(1) 対象となる土地が更地で建築物がないこと
(2) 隣人との間で境界線争いなど、土地を巡るトラブルがないこと
(3) 金融機関の担保権などが設定されていないこと
(4) 土地に隣接した5メートル以上の崖や、土地が30度以上の急勾配になっていないこと
(5) コンクリート片や大きな石など、地下部分に埋設物がないこと
(6) 土壌汚染や有害物質の汚染がないこと
(7) 土地自体に地割れや陥没のおそれがないこと

などの条件を必ず満たす必要があります。この条件を満たしていない土地については、国が引き取る対象にはなりません。
 
国に引き取り申請をするためには、まずこの条件をクリアすることが必要です。特に家屋を含めて相続をした方は、家屋を解体し更地にした上で、他の条件をクリアできるかが大前提です。初めての制度実施にあたり混乱も予想されるため、今回は国の窓口となる法務省の外局である各法務局で「事前相談」を受ける仕組みを設けています。
 
実際の申請は2023年4月以降からですが、事前相談は先行して実施されています。国への買い取りを希望される方は、この事前相談の窓口に予約を取り、国の引き取り対象となる土地かどうかを相談します。土地の登記簿謄本など関係書類を準備し、その土地が条件を満たすために改善する点があれば、それをクリアする必要があります。
 
条件をクリアするために、建物を解体し土地を更地にする、境界線の確定の書類をそろえるなどを行い、法務局に申請を行います。申請が審査・承認されれば、負担金を納付します。ただし、対象となる土地が急な傾斜地になっている、隣人との境界争いが続いている、といった改善の見込みの立たない障害がある場合には、この制度は利用できません。
 

国へ払う負担金の金額はどのくらいか

国に土地を引き取ってもらうのですが、無償ではありません。奇妙に思われるかもしれませんが、土地を提供する側が、負担金を支払う仕組みです。2022年の秋に、負担金の具体的内容が明らかになりました。
 
通常の土地取引とは矛盾するかもしれませんが、実際は国に対して一定の金額を支払います。保持し続けることによる維持費用がなくなるメリットに対応して金銭を負担する、という発想が根底にあります。
 
引き取りの対象となる土地の種類、宅地か、農地か、山林かによって負担金が異なります。例えば宅地の場合、都市計画法に基づく「市街化区域」に該当するかどうかで、負担金が異なります。
 
もしその土地が、市街化区域以外の場所にあれば、その面積に関係なく一律20万円です。また農地(田や畑)についても一律20万円です。地方にある両親が住んでいた建物と土地を相続し空き家となり、管理に困っている方の多くがこれに該当します。建物を撤去する費用はかかりますが、国への引き取り申請が可能となります。
 
都市および近郊の「市街化区域」に指定された土地の場合、その面積に応じて国の引き取り価格は異なります。細かく決められた計算式にあてはめて算出します。具体的な金額は、50平方メートルの土地で約41万円、100平方メートルの土地で約55万円、200平方メートルの土地で約80万円、400平方メートルの土地で約130万円です。
 
土地の面積によって計算式は6段階に区分され、その土地の面積が広いほど高額になります。仮に800平方メートル以上になると、200万円を超える金額になります。市街化区域以外と比較すると、引き取り価格はかなり高額です。
 
当然、土地を提供するのに支払いが発生することに納得がいかない、広い土地を引き取ってもらうほうがなぜ高額になるのか、と考える方もおられるかもしれません。ただ、相続した土地を保有し続け、売却はできないまま、固定資産税などの税金や管理費・光熱費を払い続ける、これとの比較だと思います。
 
今後、人口減少社会が続くことが確実で、土地に対する需要が減り、不動産市場で容易に買い手がつかない物件も増えると予想されます。もし相続した土地の利用法に難しさを感じておられる方は、この制度の利用を検討してもよいかもしれません。国が引き取った土地については、公園などの公共用地として有効活用されることも期待できます。
 

出典

法務省 相続土地国庫帰属制度の概要
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト
 
監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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