契約書に贈与を受ける意思を書き忘れた!これってどうなっちゃう?
配信日: 2018.07.15 更新日: 2019.01.10
また、書面によらない贈与(つまり口約束)は履行をしていない部分に限り、取り消すことができるとされています。
言い換えると「書面でした贈与は取り消すことができない」ということです。
では、書面により贈与をしたものの、その書面に受贈者(もらう側の人)の意思が記載されていなかったらどうでしょうか。
受贈者の意思が記載されていないことで、書面による贈与とはみされないこととなってしまうのでしょうか。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
契約書に受諾の意思を記載し忘れた
AさんとBさんは100万円の現金について、Aさんを贈与者(あげる人)、Bさんを受贈者(もらう人)として贈与契約を結びました。
BさんはAさんの申し出を承諾し、その証拠として贈与について次のような内容の契約書を作成しました。
「〇月×日 AさんはBさんに100万円を贈与する。」
しかし、贈与の日、AさんはBさんに対し次のように述べて贈与を拒否しました。
「確かに契約書上で贈与の意思は示した。だが、その契約書には受贈者であるBさんの意思が書かれていない。そのため、書面による贈与が完成しているとは言い切れない。それにまだ私は贈与の履行をしていない。」
それについてBさんは次のように反論しました。
「書面には記載がないだけで、実際のところ私は贈与について承諾しています!それに、Aさんの贈与の意思は書面によって明確になっている以上、今更撤回なんて認められない!」
AさんとBさん、どちらの言い分も正当な理由があるように感じます。この場合、どうなるのでしょうか。
Aさんは贈与を撤回することができません
結論として、今回の贈与は書面による贈与として有効となり、Aさんは贈与の意思を撤回することができません。
なぜなら、Aさんの贈与の意思は既に書面にて明確になっており、かつ、書面の外ではありますが、Bさんも贈与について受諾しているからです。
贈与の契約書にはBさんが受諾したという記載がないのになぜ・・・と思われることでしょう。
しかし、書面による贈与においては、贈与者の受贈者に対する意思が明確になっていれば足り、受諾者の意思の記載までは必要でないとされています。
このような理由から今回の事例において、AさんとBさんとの間でなされた贈与は書面による贈与として有効であり、Aさんは贈与の意思を撤回することができない。という結論となるのです。
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書面において受贈者の意思の記載は必須ではありません
贈与自体は特別の様式を必要とせず、口頭でのやり取りのみであっても、意思の合致さえあれば成立する契約です。また、受贈者の意思が記載されていないことで、書面による贈与が無効となることはありません。
とはいえ、書面上に受贈者の意思の記載がないことにより、無用な争いが生まれてしまう可能性があります。
無用なトラブルを避けるためにも、安易な気持ちで贈与をしないのは当然のこと、贈与契約を書面化する際は贈与者の意思だけでなく、できる限り受贈者の意思も記載しておくようにしてください。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー