<相続税対策> 配偶者に相続税はかからない? 高額でも優遇され無税に

配信日: 2017.04.21 更新日: 2019.08.07

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<相続税対策> 配偶者に相続税はかからない? 高額でも優遇され無税に
相続税制は多くの納税者にとって頭の痛い問題となっています。しかし配偶者に関しては、相続時には非常に優遇されています。土地や金融資産などを数億単位で相続するケースでも、配偶者は、ほとんど相続税を支払う必要がありません。
黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

配偶者控除は非常に手厚い

配偶者の相続は優遇されています。ほとんど相続税を払うことはありません。配偶者と子が相続するケースでは、配偶者の相続割合は、被相続人から受け継ぐ財産総額の2分の1です。子も同様に2分の1です。例えば2億円の相続財産があり、それを2人の子とともに相続するケースでは、配偶者の相続額が1億円、子の相続額が2人で1億円、1人につき5000万円となります。
 このまま法定相続をすると、配偶者は1億円相続しても、相続税を一切支払う必要はありません。しかし、2人の子は5000万円の相続額に対応した相続税を、支払う必要があります。基礎控除額は、相続人が3人ですから、 3000万円+600万円×3人=4800万円、となります。子2人の相続分は合計1億円あり、基礎控除額をはるかに超えている金額です。

高額でも法定相続内なら全額控除

相続に関して、配偶者は多額の「配偶者控除」が認められています。それは、配偶者に対して「1億6000万円または法定相続額のうち、どちらか高い金額」が、配偶者控除となるためです。非常に稀な想定になりますが、かりに10億円の相続財産があったケースを考えます。配偶者控除は、法定相続分か1億6000万円のうち高いほうですから、法定相続分の5億円を配偶者が相続しても、配偶者控除を受け相続税を払わずに相続できます。子の相続分が残りの5億円あるわけですが、子がその5億円分を相続すると、相続税はきわめて高額になります。
 配偶者控除分の1億6000万円を、有効に利用することもできます。かりに2億円の相続財産を2人の子と相続する場合、配偶者の相続額を1億6000万円まで相続し、子の取り分を4000万円と少なくすれば、子も相続税を支払わずに済みます。法定相続分は1億円ですが、配偶者税額控除の1億6000万円を完全に利用するのです。ただし、当面の相続税は払わずに済むという恩恵にあずかれますが、次に相続する段階で大きな問題になります。

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次世代への2次相続は簡単ではない

配偶者が相続で特別優遇される理由があります。それは、配偶者は被相続人とともに財産形成に努力をしたと理解されているためです。しかし一方で、子や孫については、本人の努力なしに「親が築いた多額の財産を単純には相続させない」という、相続税制の趣旨が読みとれます。
ですから、もし配偶者が2億や3億の財産を、相続税を払うことなく相続したとしても、その配偶者が亡くなった後が常に問題になります。子や孫たちがその財産を相続する時点で、多額の相続税がかかってきます。これが「2次相続」問題です。

2次相続に直面し財産処分も

配偶者が相続した財産を、子や孫が相続する2次相続となると、ここには高額の相続税が待ち受けています。1代限りの財産形成は寛容でも、2代目以降がそれを相続すると、通常の税率が適用されるため、厳しい納税となります。もし子が1人の場合ですと、法定相続人は他にはいませんから、基礎控除額は3600万円だけしか受けられません。そのため、多額の相続税を支払う大変な事態となり、事前に準備をしていない限り、納税のために財産処分を迫られます。
 かつて東京近郊の農家が、農地を住宅地として売却することで、多額の富が築けた時代がありました。ところが、富を築いた親が亡くなり、その子や孫たちが、親が土地売却で得た財産を相続しようとすると、億単位となる多額の相続税が課税されることもしばしばです。手許の現金で納税することが困難になることも多く、所有する土地を新たに売却するなど、納税時に苦労している姿が目立ちます。
配偶者税額控除は、配偶者の立場を保全する意味では有効な制度です。しかしその後の相続に試練が待っています。恩恵が受けられるのは一代限りのため、その先の子や孫への2次相続を考え、しっかり設計をしておく必要があります。

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