更新日: 2023.08.02 贈与
親が内緒で「100万円」をくれたけど、ほかの兄弟にバレる? 黙っていると「脱税」になるの?
執筆者:佐々木咲(ささき さき)
2級FP技能士
バレる可能性はある
結論からいうと、兄弟姉妹にバレる可能性はゼロではありません。特に、親が死亡した際に相続税を申告する場合はほぼバレるといえるでしょう。相続税の「生前贈与加算」という制度があるからです。
親が内緒でくれた100万円は贈与税の対象
自分以外の人から無償で財産をもらった場合、贈与があったとして贈与税の対象になります。親であっても「自分以外の人」なので、親がくれた100万円は贈与税の対象です。
ただし、贈与税には110万円の基礎控除が設けられているため、毎年1月1日から12月31日までの間に受けた贈与が110万円以下の場合には贈与税はかかりません。贈与税申告も不要です。つまり、年間で100万円の贈与であれば、当事者の2人が黙ってさえいれば情報が表に出ることはなく、兄弟姉妹にバレることはないように思えます。
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相続税の生前贈与加算とは
ところが、前述の通り「生前贈与加算」制度があるためバレる可能性が高いのです。この制度は、死亡した人から生前に受けた贈与のうち、死亡前3年以内のものについては相続財産に加算するというものです。
つまり、親に相続税がかかるほどの財産がある場合で、100万円の贈与が親の死亡前3年以内に行われていた場合には、生前贈与加算の対象として相続税申告書に記載されるのです。
相続税申告書には同じ相続人である兄弟姉妹の署名捺印が必要になるため、全く中身を見ないということは考えにくいでしょう。税理士などから内容を説明されているうちに、「あれ?」と内緒の100万円贈与に気づく可能性は非常に高いのです。
ちなみにですが、「相続税申告があったとしても贈与100万円については黙っておけばよい」と思うかもしれませんが、それは意図的な脱税行為です。それで逃れられる可能性はあります。しかし、相続税申告が発生するような場合であれば、税務署が生前から目をつけているものです。
もしかすると、通帳などの動きから100万円の贈与を把握している可能性があります。それで提出された相続税申告書に100万円贈与の生前贈与加算が記載されていなければ、税務調査ということになるでしょう。税務調査が入った場合には、不正はほぼ見つかると思ってください。
相続税がかかるほどの財産とは
相続税が発生するかどうかは、相続財産が相続税の「基礎控除額」を超えるかどうかで決まります。基礎控除額は以下の算式で計算します。
基礎控除額=(3000万円+600万円×法定相続人の数)
例えば母親が死亡した場合で、相続人は父親と子ども3人とすると、基礎控除額は(3000万円+600万円×4人)=5400万円です。母親の相続財産が5400万円を超える場合には相続税申告が必要となり、5400万円以下であれば不要となります。
相続税がかからなくてもバレるケース
親の相続財産が相続税の基礎控除以下であれば相続税の計算自体行わないため、生前贈与加算が関係することもありません。明らかにバレる機会はないということになりますが、絶対に大丈夫ということでもないので注意が必要です。例えば、次のようなケースが考えられます。
他に贈与を受けている場合にバレる
100万円の贈与を受けた年に別の贈与も受けており、合計が110万円を超える場合には贈与税申告をしなければなりません。もし、贈与税申告をしなかった場合には税務調査が入る可能性があり、兄弟姉妹に「何事?」と聞かれるかもしれません。
遺品整理中にバレる
親が死亡した場合には相続税発生の有無に関係なく、遺産を相続人で分ける手続きを行わなければなりません。兄弟姉妹が通帳などを見た際に、贈与を疑う可能性もゼロではありません。
まとめ
親が内緒でくれた100万円が兄弟姉妹にバレる可能性はあります。特に、親に相続税申告がある場合には、ほぼバレると思っていてください。相続税申告がない場合はバレる可能性は格段に下がりますが、それでも決してゼロではありません。
出典
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
国税庁 No.4152 相続税の計算
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士