更新日: 2023.10.27 贈与

奨学金の返済を親や祖父母がしてくれるというのですが、贈与税がかかるって本当でしょうか?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

奨学金の返済を親や祖父母がしてくれるというのですが、贈与税がかかるって本当でしょうか?
学生時代に借りた奨学金の返済負担が大きくて、生活が困難になっているという人もいるでしょう。そのようなときに親や祖父母が奨学金の返済を代わりに行ってくれるとなれば、ありがたく頼りたいと考えるのではないでしょうか。
 
しかし、相手が親や祖父母であっても一定の金額以上の財産を受け取る場合は、贈与税の課税対象となるので注意してください。本記事では、奨学金の返済で贈与税がかかるかどうか、贈与税がかからないケースなどを詳しく解説します。
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奨学金とは?

奨学金とは、家庭の事情や経済的な理由で学費を用意できない学生に対し、学業支援の一環として学費や生活費の貸与や給付を行う制度です。奨学金制度を利用することで、高等学校や専門学校、大学、大学院、海外の学校などへの進学が可能になります。
 
奨学金制度は貸与型と給付型に分類され、貸与型は返済が必要(有利息・無利息)で、給付型は返済義務がありません。ただし、貸与型でも一定の条件に該当すれば返済義務が免除されるケースもあります。
 
国や都道府県、市区町村が行政施策として行う「公的奨学金」と、社団法人や学校法人などが独自に設定する「民間奨学金」など、奨学金制度といってもさまざまです。気になる奨学金制度を事前に調査したうえで、自分に適した制度を選ぶようにしましょう。
 

贈与は暦年課税で年間110万円までなら非課税扱い

贈与税は、暦年課税によって年間110万円を超えない贈与であれば発生しません。暦年課税は、毎年1月1日〜12月31日の間に贈与を受けた財産に対して税額を計算します。年間の贈与合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた金額が贈与税の課税対象です。
 
暦年課税は贈与財産の種類に制限がなく、生活費や教育費を目的としないものでも年間110万円以下の贈与なら贈与税を非課税扱いにできます。注意点として、税務署による調査の結果によっては暦年課税を定期贈与とみなされる場合があるので、贈与のタイミングや金額を変えるなどの対策を検討するとよいでしょう。
 

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教育費以外の贈与には税金がかかる

奨学金を子や孫に代わって親や祖父母が返済する場合、贈与税の課税対象です。贈与税の納付義務は贈与した側ではなく、贈与を受けた側に発生します。
 
国税庁の「No.4405 贈与税がかからない場合」では、「夫婦や親子・兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」は贈与税がかからないと伝えています。
 
つまり、生活費や教育費が必要なタイミングで、親や祖父母がお金を支払うのであれば、贈与税はかかりません。
 
しかし、すでに卒業していて奨学金の返済に困っている子や孫に対するお金の贈与になると、贈与税の非課税扱いになる要件を満たさないので注意してください。親や祖父母が返済する奨学金は、生活費や教育費に対するものではなく、子や孫が借りた借金の返済資金にあたります。
 
進学に伴う生活費や教育費を親や祖父母が支払ってくれるのであれば、奨学金の返済ではなく、必要なタイミングで受け取る方法を検討してください。そのほうが、贈与税の課税対象にならずに済みます。
 

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた際も課税対象

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた際にも、贈与税は非課税扱いになりません。国税庁の「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」では、贈与税が非課税になる要件を以下のように伝えています。
 

・受贈者:平成25年4月1日から令和8年3月31日までの間に30歳未満(教育資金管理契約を締結する日において)
・贈与税が非課税になる金額:1500万円
・非課税の対象になる教育資金:学校に対して直接支払われる入学金や授業料、施設設備費、学用品の購入費、通学定期券代、留学のための渡航費など
・教育資金口座の開設と金融機関などに教育資金非課税申告書の提出が必要

 
非課税の対象になる教育資金には、奨学金の返済は含まれていません。非課税で教育資金の一括贈与を受けるのであれば、必要なタイミングに教育資金としてもらうのがよいでしょう。
 

奨学金の返済ではなく必要なタイミングで教育資金の援助を受けよう

奨学金の返済を子や孫に代わって親や祖父母が行う場合、家族間であっても一定金額以上は贈与税がかかります。
 
子や孫がすでに学校を卒業しており、贈与した資金を奨学金の返済に充てる場合は教育資金には該当しません。毎年1月1日〜12月31日の間に贈与を受けた財産が基礎控除額である110万円を超えた分に対して、贈与税がかかると認識しておいてください。
 
非課税で教育資金の援助を受けたいなら、奨学金の返済ではなく教育資金としてもらうといった方法を検討しましょう。

出典

国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし
国税庁 No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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