更新日: 2024.01.29 贈与
夫が病気になり、「万が一のために」と妻の口座に振り込み!「1000万円」振り込むと贈与税はかかる? 夫婦間でお金を移動する際の注意点を解説
特に夫婦間では、お金や物の所有を移動させても「贈与」という感覚が意識されにくいかもしれませんが、十分理解しておかないと思わぬ落とし穴に陥る可能性があります。本記事では会社員の夫が病気となってしまい、専業主婦の妻が将来に不安を覚えているケースを例に、注意点を解説します。
執筆者:御手洗康之(みたらい やすゆき)
CFP、行政書士
夫婦間の場合、生活費以外の資金移動は原則贈与対象となる
贈与税について、国税庁の説明によれば、原則として贈与されたすべての財産に対して贈与税がかかるとされています。しかし、特定の条件に該当する場合は贈与税がかかりません。一般的な夫婦間での資金移動において、贈与税がかからない場合に該当するのは次のようなケースです。
・夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
本ケースの夫婦が将来の不足を考慮して、夫の口座から妻の口座へ1000万円の資金移動させた場合、「通常必要と認められる生活費」には該当しない可能性が高そうです。したがって、贈与税の対象となる可能性が高いでしょう。
また、名目上は生活費として移動させても、その資金が株式や不動産などの購入資金となっている場合には贈与税が課せられます。
贈与税にはさまざまな税控除制度がある
財産の移動をした場合、夫婦間だとしても原則として贈与税が課せられますが、一定の条件を満たすと贈与税が優遇(一定額まで控除される)される制度もあります。
具体的には「おしどり贈与」と呼ばれることもある居住用財産の贈与に関する配偶者控除などがそれにあたります。この制度は、婚姻期間が20年以上である夫婦の間で居住用不動産の贈与、もしくは居住用不動産を取得する金銭の贈与があった場合、2000万円(基礎控除110万円を含めると2110万円)まで控除できるという特例です。
また、贈与の基本的な仕組みとして、毎年110万円以内の贈与であれば原則として贈与税はかかりません。なお、2024年より「相続時精算課税制度」を利用していても、110万円の基礎控除が利用できるようになりました。
一般的に、贈与税は意識することが少なく、理解しにくいと感じる人が多いのではないでしょうか。ただし、贈与税についての理解が不足していると、優遇制度を利用できなかったり、そもそも贈与税が課されるケースであることに気づかなかったりする可能性もあるので注意が必要です。
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具体的なケースについては専門家に相談を
夫婦間の資金移動においても原則として贈与税がかかることは理解しておく必要があります。ただし、「通常必要と認められる生活費」は除かれるなど、曖昧な表現が多いことも事実です。また、110万円以内の贈与だとしても、毎年一定の金額贈与を続けた場合は「連年贈与」とみなされ贈与税がかかる場合もあるようです。
ご自身の状況に関して気になる点があれば、個人で判断せず、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
出典
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除
財務省 令和5年度税制改正の大綱(2/10)
執筆者:御手洗康之
AFP、FP2級、簿記2級