更新日: 2020.04.06 その他相続
長年放置された土地が増加! 土地の相続登記が行われない理由
しかし、最近はさまざまな理由から相続登記が行われず、被相続人の名義のまま放置されている土地が増えているとのことです。そのため、長年放置された土地は、現在の所有者がすぐには判明しづらく、売却処分したり、公共事業などに利用する段階で支障をきたすケースが多くなっています。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
相続登記が行われない理由
その理由の1つ目は、不動産登記制度自体にあります。
不動産登記とは、不動産の権利者(所有者)がだれなのかを、「第三者に対して知らしめるための制度」です。つまり、「第三者に対する対抗要件を備える」という目的があります。そのため、相続登記自体には義務はありませんし、登記しなくても罰則などがありません。
2つ目の理由は、簡単にいえば「お金もかかるし面倒だ」ということです。
相続登記(所有権移転登記)には、不動産の固定資産税評価額に対して0.4%の登録免許税がかかります。さらに、司法書士に登記手続きを依頼する場合には手数料もかかります。
例えば、3000万円の土地の相続登記を行う場合、「3000万円 × 0.4% = 12万円」の登録免許税がかかります。司法書士の手数料とあわせると20万円程度の費用となります。
また、実際の相続の際には、相続人が1人だけの場合や、有効な遺言書がある場合は、あまり面倒ではないですが、それ以外の相続人が複数人ある場合などでは、遺産分割協議に基づいて作成された遺産分割協議書に相続人全員の実印が必要とされ、それがないと相続登記ができないなど、手続きが煩雑となります。
相続登記にかかる登録免許税の免税措置
上記のような所有者不明土地問題を解決するための措置として、相続登記にかかる登録免許税を免税とする特例が創設されました。
その内容とは、相続によって土地を取得した相続人Aが相続登記をする前に死亡した場合に、2018年4月1日から2021年3月31日までの間に相続人Aを当該土地の所有権の登記名義人とするための登記については、登録免許税を免税とするという特例です。
この事例ですと、相続人Aが一次相続で被相続人父Bから相続した土地を相続登記する前に、相続人A自身が亡くなり、二次相続が発生したケースとなります。仮に、二次相続で長男Cが当該土地を相続した場合に、登記名義人を被相続人父Bから相続人Aに所有権移転登記する登録免許税が免税となります。
なお、この場合に登記名義人を長男Cにかえる際(二次相続分)の登録免許税は課税される点には注意が必要です。
参考: 法務局 相続登記の登録免許税の免税措置について
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相続登記されないまま放置される弊害
相続による所有権移転登記がされないまま、土地の相続人が亡くなると、次の相続(二次相続)が発生します。そして、その二次相続の相続人全員が、その土地に関わることになります。
つまり、相続登記がされないまま放置され続けると、「関わらなくてはならない相続人の関係が複雑化」し、「その人数が増えていく」ことが考えられます。
一次相続などの初期の段階では、簡単にまとまっていた遺産分割の協議についても、相続人が複雑化してくると話し合いの場を持つこと自体が難しくなることもあります。また、相続人を確定するために必要となる書類も多くなり、手続きが煩雑になってしまいます。
まとめ
昨今、新聞等でも所有者不明の土地問題が取りあげられており、相続登記を義務化しようという動きもあるとのことです。そのための打ち手として、相続登記の手続きを大幅に簡素化する「法定相続情報証明制度」が2017年から開始されています。
この問題の特徴は、何よりも後世の相続人にさまざまな負担を強いることになるという点です。現代に生きる我々は、決して問題を先送りにすることなく、自分の世代の問題は自分たちで解決するという姿勢が必要なのではないでしょうか?
※法定相続情報証明制度については、筆者が執筆した「相続手続きにこれ1枚でOK!法定相続情報証明制度」https://financial-field.com/inheritance/2018/08/17/entry-22515 をご覧ください。
出典:
法務局トップページ>新着情報一覧>相続登記の登録免許税の免税措置について
Text:高橋 庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー