更新日: 2024.05.01 贈与
友人が卒業祝いで「100万円」もらったと聞きました。正直嫉妬してしまうのですが、そのまま「非課税」でもらえてるんですか?
本記事では、贈与受取時の注意点について解説します。ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:小林裕(こばやし ゆう)
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
暦年贈与の110万円の非課税枠
結論として、今回の100万円の贈与については、暦年贈与の仕組みによって非課税でお金などの受け渡しが可能です。贈与税には110万円の基礎控除額が設けられているため、1年間(1月1日~12月31日)における贈与合計額が110万円以下である場合、贈与税が非課税となる仕組みを用いた贈与方法が暦年贈与です。
今回の贈与の金額は「100万円」であり、110万円以下であるため、当該年に別の贈与がなされなかったと仮定した場合、非課税枠の範囲内と判断できます。
また、暦年贈与で受け取った金額については資金使途が制限されないため、娯楽費などに自由に利用することができます。暦年贈与は非常に利便性や自由度の高い贈与方法といえるでしょう。
しかし、暦年贈与は便利な方法である一方、注意点も存在するため、次項以降にて解説します。
暦年贈与には「持ち戻し」ルールが存在する
前項にて、年間110万円までの贈与であれば非課税でお金などの受け渡しが可能と記載しましたが、それはあくまで「贈与実行時点」での話です。暦年贈与の大きな注意点は、「贈与をした側の人が亡くなった時」にあります。
贈与をした側の人が亡くなり相続を開始する際、一定期間分の贈与について「持ち戻し」が発生するのです。 「持ち戻し」が発生した場合、持ち戻し対象期間中に贈与を行っていた金額が相続財産に加算されてしまいます。その結果、持ち戻し対象期間中の贈与分は、相続税の課税対象になるのです。
上記「持ち戻し」ルールについて、2023年までは「持ち戻し」期間は3年間でした。しかし2024年1月1日以降は、「持ち戻し」期間が段階的に7年間に引き伸ばされることが決定しています。例を挙げると、2031年1月1日に亡くなった場合、2024年1月1日以降に行った暦年贈与の金額が全て「持ち戻し」対象となってしまい、相続税の課税対象になります。
そのため、暦年贈与を行う際には、資産移転の開始時期は可能な限り早期にすることが望ましいといえます。
なお、持ち戻しの対象となるのは、子や配偶者をはじめとする法定相続人に贈与する場合です。そのため、孫への贈与の場合には原則「持ち戻し」は適用されません。今回の卒業祝いが祖父母からの贈与である場合は「持ち戻し」の対象にはなりません。
贈与を考えている人は「持ち戻し」ルールについて把握した上で、計画的な贈与を行うとよいでしょう。
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贈与は可能な限り早めに始めると効果的
本記事では暦年贈与について解説しました。「毎年110万円までの贈与は非課税」ですが、相続が発生すると「持ち戻し」ルールが存在するため、今回の「100万円」の贈与のケースの場合、「贈与税」がかからなくても「相続税」がかかってしまう可能性はあります。
また、贈与を行う側の祖父母や両親の意思判断能力が低下してしまった場合には、贈与が認められないケースもあります。贈与は、可能な限り早めの行動をすることが肝心です。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
財務省 令和5年度税制改正の大綱
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート