更新日: 2024.10.28 その他相続
母が亡くなりました。母には現金がほとんどなく、資産は自宅と不動産のみで相続税が払えそうにありません。私も貯金がないのですが、どうしたらいいですか?
今回は「延納」について、どのような場合に対象となるのか見ていきましょう。
執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
相続税の現状
令和4年分相続税の申告事績の概要によりますと、令和4年分における死亡者数は156万9050人でした。そのうち、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は15万858人、課税割合は9.6%、相続税の課税価格の総額は20兆6840億円、申告税額の総額は2兆7989億円でした。
死亡者数は前年比9%増でしたが、被相続人数は12.4%増、課税割合は0.3ポイント、税額は14.6%増となっています。
どのような要件であれば延納が申請できるの? 延納の期間は?
以下のすべての要件を満たす場合に、延納を申請できます。
1.相続税額が10万円を超えること。
2.金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること。
3.延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること。ただし、延納税額が100万円以下で、かつ、延納期間が3年以下である場合には担保を提供する必要はありません。
4.延納申請に係る相続税の納期限または納付すべき日(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して税務署長に提出すること。
(出典:国税庁「No.4211 相続税の延納」)
延納申請書を提出したときは、延納申請期限から3ヶ月以内に許可または却下が決定しますが、延納担保などの状況により、許可または却下までの期間を最長で6ヶ月まで延長される場合があります。
延納できる期間は相続財産に占める不動産等の割合によって異なり、財産の種類・割合によって5年から最長20年(特定の森林については40年)が限度となっています。もちろんこの場合は、所定の利子率により計算した延納利子税を併せて納める必要が出てきます。
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どのようなものが担保として認められるの?
延納の担保として提供することが可能な財産の種類は、下記のものに限られます。これらの財産は相続または遺贈により得た財産に限ることなく、相続人の固有財産や共同相続人、または第三者が所有している財産の場合も担保として提供できます。
1.国債および地方債
2.社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
3.土地
4.建物、立木、登記される船舶など、保険に付したもの
5.鉄道財団、工場財団など
6.税務署長が確実と認める保証人の保証
上記のものであっても、担保が適当でないとされるときは、変更を求められる場合があります。
延納利子税がつくので注意が必要
場合によっては延納することは可能です。ただし、前述のように延滞利子税がついてしまいます。相談者さまのお母さんは一人暮らしで、資産はほぼ不動産であったのでとのことですので、不動産が75%以上の延納の場合の延納利子税は年3.6%です。もしご自身でその家に住まないのであれば売却するというのも1つの方法かもしれませんね。
出典
国税庁 No.4211 相続税の延納
国税庁 令和4年分 相続税の申告事績の概要(令和5年12月)
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表