80代の親には愛猫がいます。「ペットも一緒に埋葬できるところがあるらしいから樹木葬にしたい」と言うのですが、樹木葬にデメリットはないのでしょうか?
配信日: 2024.12.23
ひとり暮らしの親がいるだけでも心配なのに,ペットが同居していれば、さらに心配という方も多いでしょう。
ただ、飼い主とペットがいくら仲がよくても一緒に亡くなることはありません。亡くなる前に体が弱ったとき、病院への入院をするときにはどうするのか含め、高齢者がペットを飼う場合に考えておくべきことをお話しします。
執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
樹木葬を選ぶことは大きな選択肢になりつつある
今はやりの樹木葬。先祖代々のお墓があったとしても、継承してくれる人がいない、もしくは子どもに面倒をかけたくないという理由で、樹木葬を選ぶという話を聞くようになった方も多いでしょう。
墓石の代わりに樹木を植え、かかる費用は比較的安価なこと、そして一定期間経過後には合祀(ごうし)場所に移してもらえることなど、樹木葬にはさまざまな利点が挙げられるわけです。
先祖代々の墓がすでになく、これからお墓を準備するということであれば樹木葬を選ぶことは合理的だといえます。しかし、これから樹木葬を選ぶことを考えたときに「ペットと一緒に樹木葬」といっても実情が同じというわけではありません。
人間とペットを一緒に埋葬してもらえるのか、それとも同じ敷地内ではあるものの人間とペットの埋葬されるエリアが別々になっているのか、など細かい違いがあるのです。
また、猫の場合は犬ほどに大きさの幅は少ないでしょうが、それでも樹木葬の区画の広さは値段に反映されることが多いものです。親がペットと一緒の埋葬を希望しているのであれば、埋葬される部分がどれくらいの広さなのか、もし墓じまいをして樹木葬にお骨を移動してくる場合には広さや手続き方法も、管理者にしっかりと確認しておく必要があるでしょう。
体が弱ったときにどうするかも考えておきたい
今回の相談者は「ペットと一緒に樹木葬に埋葬してほしい」というご希望を言っているだけの状態ですが、もうひとつ、必ず考えておくべきことがあります。
それは、「親の体が弱ったときにはどうするか」です。ペットが先に亡くなってしまって、そのまま親が認知症になってしまうこともあるでしょう。そうなってしまうと、ペットの火葬および骨つぼの保管など、子どもが請け負わなければなりません。
樹木葬をしたいという希望に加えて、「体が衰えたときにどうしたいのか」を親に聞いておきましょう。病院への入院や高齢者施設への施設入所には、ペットは連れていくことはできません。ペットホテルなど、お金で解決するのか、預けられる知人がいるかの確認はしておきたいものです。
もし親が入院などしている間にペットが亡くなってしまえば、ペットの火葬や埋葬まですべてを子どもがしなければなりませんから。
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樹木葬にデメリットはあるのか
親の方がペットよりも先に亡くなるか、もしくはペットが先に亡くなるか、亡くなる順番が異なれば,樹木葬に至る道や手続きは異なりますが、全体的に樹木葬のほうが通常のお墓よりも費用や手間の面でメリットは多いと感じるでしょう。
ただ、まったくデメリットがないというわけではありません。親がペットより先に亡くなれば、親に代わって子どもが一定期間ペットを飼って、最後まで面倒を見てからということになります。しかし、高齢化社会の今、親よりも先に自分が認知症になったりして、親の希望をかなえられないケースもあるでしょう。
ペットが先に亡くなってしまうと、そのお骨も親が保管するのか、子どもが保管しておくのかなど決めておいても、家族の誰かが庭に埋めてしまったり、所在があいまいになってしまうこともあります。今回のご相談のケースでは、お墓に関して親の希望が聞けたわけですから、これを機会に、親とお金の話をしておきましょう。
親亡き後の、ペットの飼育費用、火葬や樹木葬のために支払う管理費用などは当然かかります。最近はネットでも費用が明確に描かれていることが多いですが、「30万円~」と「~」と書かれているのは、埋葬後13年経過後に合祀となるのか、20年経過後なのか、プレート料や個別埋葬の広さなど、さまざまな条件により加算されるからです。
樹木葬だから「費用が安い」「簡単」と思わず、樹木葬の管理者に費用や条件の詳細をしっかり聞くことをお勧めします。
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。