親から「大掃除で180万円入った通帳を見つけた」と連絡が! 私名義で貯めていたそうですが、受け取っても「贈与税」はかかりませんよね?
配信日: 2024.12.26
本記事では、180万円が入った子ども名義の通帳が見つかったケースを例として、子どもが知らない間に親が貯めた子ども名義の貯金は誰のものなのかを考えながら、贈与税について解説します。
執筆者:浜崎遥翔(はまさき はると)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
見つかった通帳の180万円は誰のお金?
今回のように、銀行口座の名義が子どもであっても、子どもが知らないお金であった場合は、いわゆる「名義預金」として扱われると考えられます。名義預金とは、実際の所有者と名義が異なる預金を指す言葉です。
このケースでは親が子ども名義の口座にお金を振り込んではいますが、その時点では子どもは受け取ったことを認識していません。
民法では「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」としています。つまり、贈与には少なくとも「(1)贈与者のあげたという意思」「(2)受贈者のもらったという意思」が必要です。
また、一般的には「(3)もらった人がもらった財産を自分自身で管理・支配している」ことも必要とされており、今回は(2)と(3)が不足しています。
したがって贈与が成立していないので、通帳の名義は子どもであっても、お金の所有者は親のままという状況となっているわけです。
通帳をもらった瞬間に180万円の贈与に? 贈与税はいくら?
今回のケースでは、子どもが通帳を受け取るタイミングで180万円の贈与が成立すると考えられます。贈与税には110万円の基礎控除がありますが、今回は180万円の贈与となるため贈与税の支払いが必要です。受け取った180万円のうち110万円を超えた70万円に贈与税がかかります。
200万円以下の贈与の場合、税率は10%で、今回は7万円の贈与税が発生することになります。贈与された年の翌年の3月15日までに確定申告し、贈与税を支払わなければなりません。
正しく納税をせず、後から税務署に指摘された場合、延滞税や加算税がかかる可能性があることに注意が必要です。なお、一度に180万円を口座に振り込んだ訳ではなく、例えば毎年12万円ずつ15年間にわたって振り込んでいた場合でも、結果は変わりません。
一見、毎年の金額が基礎控除の110万円以内なので、贈与税がかからないようにも見えますが、振り込んだタイミングでは先ほどの意思表示の条件を満たしておらず贈与が成立していないからです。
もし、贈与税がかからないように贈与をしたかったのであれば、「口座に貯金をしている段階で子どもに贈与の事実を知らせること」と「子どもが自由にそのお金を使える状態にしておくこと」が必要です。
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このお金に対して贈与税を防ぐ方法はある?
今回見つかった通帳のお金を贈与税なしで子どもに渡したいなら、ひと工夫が必要です。前述した通り通帳のお金の所有者は親なので、まずいったんお金を引き出し、親の口座に戻します。この資金の移動は本来の所有者にお金を戻しただけなので、贈与税はかかりません。
その上で、改めて親から子どもに贈与を行います。ここで180万円を2年以上に分けて渡すのがポイントです。
例えば、初年度に100万円、翌年に80万円渡すようにすれば、どちらも贈与税の基礎控除110万円の範囲内に収まるため、贈与税はかかりません。なお、贈与税は1月1日から12月31日を1年の間に贈与された額の合計を対象とします。
自分名義の通帳であっても適切な税務処理が必要
自分名義の通帳に大金が入っている場合は、軽率に受け取るべきではありません。名義預金であった場合、通帳をもらった瞬間に一括の贈与とみなされ贈与税の課税対象となり、正しく申告しなければペナルティを受けるリスクがあります。
本来であれば、名義預金とみなされないようにお互いの認識のもと贈与を行っておくのが理想です。それができなかったのであれば、いったん正しい所有者の元に戻し、改めて贈与税がかからないように渡すのが良いでしょう。
出典
e-Gov法令検索 民法
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士