母が亡くなりました。母と私の2人とも貯金がないので「相続税」が払えないかもしれません。「物納」という制度があるそうですが、私でも使えるのでしょうか?
配信日: 2025.01.29
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今回は、どのような条件で「物納」が可能なのか見ていきましょう
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執筆者:田久保誠(たくぼ まこと)
田久保誠行政書士事務所代表
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、特定行政書士、認定経営革新等支援機関、宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士生活相談センター等の相談員として、相続などの相談業務や会社設立、許認可・補助金申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
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相続税の現状
国税庁の「令和5年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和5年分における死亡者数は157万6016人でした。
そのうち、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は15万5740人、課税割合は9.9%、相続税の課税価格の総額は21兆6335億円、申告税額の総額は3兆53億円でした。死亡者数は前年とほぼ同じでしたが、被相続人数は2.9%増、課税割合は0.3ポイント、税額は7.4%増となっています。
相続税の物納とは
まず、相続税の納付について解説します。
原則として、相続人が死亡した日の翌日から10ヶ月以内に金銭で一括納付します。そして相続税については、延納をしても金銭で納付することを困難とする事由がある場合には、納税者の申請によって、納付が困難とする金額を限度とし一定の相続財産による納付(物納)ができます。
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いつまでに申請しなければいけないの? どのような要件であれば物納が申請できるの?
物納をするためには、納期限または納付すべき日(物納申請期限)までに物納申請書に物納手続関係の書類を添付し提出しなくてはなりません。そして、物納申請書が提出された場合、物納申請期限から3ヶ月以内に許可または却下の結果が出ます。
物納は、次に挙げるすべての要件を満たしている場合に申請可能となります。
1.延納をしても金銭で納付することを困難とする事由があること。かつ、納付が困難とする金額が限度とすること
2.物納申請財産は、納付しなくてはならない相続税額の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、日本国内に所在する次に挙げる財産および順位となること
(第1順位)
不動産、国債証券、地方債証券、船舶、上場株式 など
不動産および上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
(第2順位)
非上場株式 など
非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
(第3順位)
動産
3.物納に充てることができる財産は、物納に不適格な財産に該当しないものであること、および物納劣後財産として該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと
4.物納しようとする相続税の納期限もしくは納付しなくてはならない日までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して税務署長に提出すること
「延納をしても金銭で納付することを困難とする事由がない」と判断されて、物納申請が却下されたときは、物納が却下された相続税額について延納の申請ができます。
物納財産の価額(収納価額)はどうなっているの?
物納財産を国が収納するときの価額は、原則、相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額になります。なお、小規模宅地等については、相続税の課税価格計算の特例の適用を受けた相続財産を物納する場合の収納価額は、特例適用後の価額です。
売却したほうがいい場合がある
上記のように、物納する場合の評価額は相続税評価額となってしまいますので、その不動産が低い価格でしか評価されないことが多いです。
そのような場合、不動産を売却して得た資金で納税するほうが有利になるケースもあります。どのように納税するのがいいかはケース・バイ・ケースなので、税理士等の専門家の意見を聞くことをお勧めします。
出典
国税庁 令和5年分 相続税の申告事績の概要
国税庁 No.4214 相続税の物納
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表