口座名義人が亡くなると、なぜ口座が「凍結」されるのですか? 葬儀費用を引き出すために何かいい方法はありますか?

配信日: 2025.02.08 更新日: 2025.07.02

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口座名義人が亡くなると、なぜ口座が「凍結」されるのですか? 葬儀費用を引き出すために何かいい方法はありますか?
口座名義人が亡くなると銀行の口座は凍結されます。つまり、その口座名義人の通帳やキャッシュカードを持っていても引き出せなくなります。なぜなら口座名義人が亡くなるとその預金は相続資産の一部となり、相続人が引き継ぐことになるからです。
 
では、なぜ銀行は口座名義人が亡くなったことがわかるのでしょうか。一方で葬儀費用などの緊急に必要になる資金はすぐにでも引き出さないと困りますね。引き出す方法はあるのでしょうか。
北山茂治

高度年金・将来設計コンサルタント

1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。

人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。

HP: https://www.kitayamafpsr.com

なぜ銀行は口座名義人が亡くなることがわかるのか

「死亡診断書が公布されたと同時に銀行口座が凍結する」「役所に死亡届を提出すると同時に銀行口座が凍結する」「ある銀行に死亡の連絡を入れたらすぐに他の銀行の口座も凍結する」などということを聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうことはありません。
 
ほとんどのケースでは、口座名義人の親族や相続人の連絡によって銀行が口座を凍結します。
 
レアケースとして、親族や相続人が銀行へ死亡の連絡をしていない場合でも凍結してしまうことがあります。新聞に訃報が掲載された場合や、銀行員がたまたま葬儀を見かけた場合がこれにあたります。ただ最近はこのような曖昧な情報で勝手に凍結するケースはほとんどありません。
 
銀行が口座名義人の口座を凍結する理由は、死亡した時点で相続財産を確定するためと相続に関連するトラブルを防止するためです。1人の相続人が勝手に預金を引き出すと、他の相続人とのトラブルに発展する恐れがあります。こうしたトラブルを未然に防ぐために金融機関は口座を凍結するのです
 

銀行口座が凍結されるとどのようなことが起こるのか

口座が凍結されると、その口座での一切の入金出金ができなくなります。キャッシュカードを持っていても、通帳を持っていても、暗証番号がわかっていても、登録印鑑を持っていても、銀行が凍結していれば口座から預金を引き出せません。
 
さらには、銀行とひもづいている公共料金などの引き落としや、クレジットカードの引き落としも当然できなくなります。
 

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凍結口座から預金を引き出す方法

凍結口座から預金を引き出す方法は2つあります。
 
1つは原則的な方法で、相続人全員による遺産相続手続きをすることです。遺産分割協議書の作成で、これには相続人全員の署名と実印が必要になります。遺言があればその遺言に指定された相続人であれば、お金を引き出せます。しかしこの方法は時間のかかる方法です
 
もう1つの方法は、遺産分割協議書が作成される前であっても使用できます。これは相続人全員の協力がなくても、取り急ぎの預金を払い戻してもらえる制度です。
 
「相続貯金の払戻制度」(平成30年7月の民法等の改正により制定)といいます。1つの銀行で150万が限度ですが、自分の法定相続分の1/3までは引き出せます。金額の上限はありますが、急ぎの葬儀費用には間に合うと思います。

<「相続貯金の払戻制度」に必要な書類>

● 被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本と戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
● 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
● 預金の払い戻しを希望される方の印鑑証明書

 

留意点

相続人は、基本的には被相続人のプラスの財産とマイナスの財産の両方を相続します。マイナスの財産がプラスの財産を上回っている場合は、相続放棄や限定承認をすることが多いのです。
 
しかし、「相続預貯金の払戻制度」により預貯金を引き出し使ってしまうとマイナスの資産も含めて、すべての遺産を相続する単純承認を選択されたとみなされて、相続放棄や限定承認はできなくなる場合がありますので注意してください。
 

凍結口座となる前にできること

相続が発生した後で、被相続人の銀行口座の名義変更や解約には、かなりの時間と労力がかかります。ですから、相続が発生しそうな場合は、口座名義人が生きている間に対策を打つのが妥当です。さしあたり必要だと思われる金額を、現金で本人の手元に置いておきましょう。
 
生命保険に入るのも1つの方法です。生命保険死亡保険金は、預金と異なり凍結することがないので死亡保険金受取人が確実にお金を受けとれます。生命保険では被保険者が亡くなった時点で、死亡保険金は死亡保険金受取人の固有の財産になります。検討してみましょう。
 
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント

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