都内に築40年の実家があります。好立地なのでリフォームをして活用したいのですが、贈与税を払いたくない……建物部分だけ生前贈与すればいい?
配信日: 2025.02.10


執筆者:稲場晃美(いなば てるみ)
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士
親の実家をリフォームするなら、まず専門家に相談するのがベスト
親名義の家のリフォーム費用を子が支払った場合は、金額にもよりますが贈与税がかかるケースも考えられます。税金がかかる、かからないについては自己判断せず、税理士等の専門家に確認することが大切です。
せっかくの好立地を生かして活用したいとのことなので、どのようにしたらいいか一緒に考えてみましょう。
親の思いに寄り添っていますか?
親世代は、高度経済成長の中で当時の金利を考えれば、家2軒分の住宅ローン等を支払っていたことが推察されます。家族のために一生懸命働いて守ってきた家を、今後どのように引き継いでほしいのか、親子仲良く“ケーキが食べられる”今のうちに話し合っておくことが重要です。
Aさんは、リフォーム費用を負担すると親に贈与税がかかることを心配されていますが、もしかしたら親は認知症になる前に売却して施設へ入る費用として検討されているかもしれません。
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相続より贈与のほうが税金は高い
建物の名義変更をしてリフォームする場合で注意しなければならないのが、不動産登記に必要な登録免許税や不動産取得税です。相続の場合の登録免許税は0.4%、不動産取得税は非課税に対して、贈与の場合の登録免許税は2%、不動産取得税は3~4%です。
また、相続まで待てば小規模宅地の特例などで土地を80%減で評価できたにもかかわらず、生前贈与を受けてしまうとその評価減のメリットを受けられなくなるケースもあります。
令和5年の相続税および贈与税の改正により、「生前加算贈与」によって、相続税の計算に含められる贈与の範囲が広がりました。ご家族のご年齢や贈与のタイミングによってケース・バイ・ケースなので、一概に生前贈与が危険ということではありませんが、目先の税金を考えるだけでなくトータルで事前に検討をする必要があります。
(出典:国税庁「令和5年相続税及び贈与税の改正のあらまし」)
賢くリフォームして健康寿命を延ばそう
住み慣れた家にずっと住み続けられるようにと、子世代から親世代へリフォーム費用の援助をするというのは実際よくある話です。例えば、浴室やキッチン等の水回りの改修費用等であればリフォーム費用の援助ということではなく、生活資金の援助として贈与しているケースも一般的のようです。
特に冬場のヒートショックによる死亡は、交通事故より多いとの統計も出ています。また、ひとりで生活している親世代のために浴室のリフォームをすることは、不要な事故を防ぐためにもおすすめしたいと考えます。
図表1
(出典:消費者庁 冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!より引用)
最後に
筆者は、親が住んでいた不動産を相続したので、賃貸住宅として利活用したいというご相談も実際に現場で受けています。不動産活用の一つとして、賃貸住宅として貸し出すということは一般的ではありますが、賃貸経営は決して楽をして稼げる「不労所得」というものではありません。
借り主である入居者に安心で快適な住環境を提供することにより、家賃という対価を得られる仕組みとなっています。冒頭のご相談のとおり、建物の生前贈与を受けてリフォームすれば確かに贈与税の支払い等の義務からは解放され、その一部分をご自身で賃貸住宅として利活用することは可能です。
一方で親は、年齢を重ねれば重ねるほど、自分の居場所がなくなることの恐怖感を抱いています。元気なうちに、どんな体の状態になったら誰かと暮らしたいと考えているのか、家を売って施設に入りたいと考えているのか、実家を今後どう取り扱ってほしいのかについて話し合うきっかけとして、「相続診断」をおすすめします。
「相続診断」することで、現状を見える化し、家族と課題を共有することができるからです。現状の課題の対策として不動産相続に強いFPと一緒に今後の計画を早めに立てておくことは、スムーズな不動産の承継や利活用を行うことにつながると考えます。
出典
国税庁 令和5年相続税及び贈与税の改正のあらまし
消費者庁 冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください! -自宅の浴槽内での不慮の溺水事故が増えています-(令和2年11月19日)
執筆者:稲場晃美
お金と不動産相続のコンシェルジュ
宅地建物取引士・AFP・住宅ローンアドバイザー・相続診断士